HTV2号機説明会

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月25日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)2号機を種子島宇宙センターにてプレス公開、あわせて説明会を開催した。私は種子島には行っていないのだが、東京事務所の中継で説明会のみに参加してきたので、内容をここで報告したい。

種子島での説明者は、虎野吉彦プロジェクトマネージャと佐々木宏ファンクションマネージャ。説明会の資料については、以下のWEBサイトからダウンロードできるので参照して欲しい。

HTV2号機説明会資料(PDF:3.5MB)

プレゼンはほぼこの資料に沿って行われたので省略して、質疑応答の部分のみ以下に掲載する。

ーーーーーー
種子島から

Q 西日本新聞
2号機の製造費用はいくらか
打ち上げも含めて

A 虎野
H-IIBの価格は知らない

HTV2号機は140億円

A 東京広報
ロケットについて
この前の機体公開でプロマネは
民間移管時の受注交渉に影響を及ぼすので
差し控えたいと回答していた

Q 実験機器について
どういう実験ができるのか詳しく

A 虎野
東京側から説明する

A 東京
実験装置について

ラックが2つ
資料13P

Q 与圧部の拡張
いままでの余白を有効活用したのか

A 虎野
初号機は真四角になっていて
真ん中の空間が少し空いていた
あそこにもモノを詰めるように
新たな治具みたいなものを作って
その分たくさん荷物を詰めるようにした

荷物は容量もあるので密度によっては
めいっぱい積んでも6トンにならない場合がある

ー筑波

Q 読売
2号機になって
技術的な改善点は

A 虎野
国産化の部分
LED照明と
ISSとの間の通信機

もう1つは
初号機の異常
その対応をとった

大きなものが3つあった

1.GPSの航法値の誤差がどんどん蓄積する
軌道制御に困った状態になった

初号機では定期的にリセットしていたが
2号機ではソフトウェアで処理をすることにした
初号機のように定期的にリセットしなくていい

2.スラスタの加熱
ISS直下500mから上昇するときに
スラスタの一部が高温化した

もともとISSよりも低い軌道を同じスピードで飛ぶのは至難の業
物理的には、普通は早くしないとどんどん落ちる
HTVは下にエンジンを吹きながら
プールで立ち泳ぎをしているようなもの

そこで温度が上がったが
スラスタ自身は高温に耐えられるが
センサーが高い温度に耐えられない
2号機ではもっと耐熱性が高い温度センサーに変えた

3.コンピュータのいくつかが運用中にフリーズ
これもGPSがらみだが
週や日が変わると時刻が変わる
週の番号、日の番号、時間の番号、分、秒、
うまく同期しないときは
まだ週替わりしていないと認識
処理が長くかかる

これもソフトのバグ
これを修正してフリーズしないようにした

ー東京

Q 朝日
実験ラック
JEMに入れるのか

A 東京
その通り

Q LEDのメーカーは

A 虎野
パナソニック電工

Q 今日NASAがディスカバリーの延期
2号機への影響はあるのか

A 12/18ころなら問題ない
予定通り打ち上げて運用できる

Q それ以降になるとシャトルが優先か

A 優先かどうか決めるのはNASA側になる

Q HTVとシャトルは同時に接続できないのか

A 佐々木
同時にランデブーはできないが
係留中については可能な見通し

シャトルが係留中にHTVはランデブーできない
HTVが係留中にシャトルがランデブーするのは
まだ確認中だが可能だろう

Q 時事通信
延期になると
打ち上げの時間はどう変わる

A 佐々木
3:03ころ
24分早くなる

Q 大塚
与圧部の補給能力が最大4.5トンから5.2トンに増えたのは
スペースが広くなったからか

A 虎野
初号機よりもたくさん積める治具を開発したので
そういう表現になった

Q 与圧部にもっと積めるようにしたのは、そういうニーズがあったからか

A ニーズもあった

Q 与圧部の荷物が重くなったときに、大きな開口部がある
曝露部にかかる負荷は大丈夫か。何か対策は

A 解析の結果問題ない
5.2トンを積み込んでも大丈夫

Q 再突入を地上から撮影する予定はないか

A 虎野
我々もやりたいとは思っているが
撮影には結構お金がかかる
船にしても飛行機にしても
距離が遠いこともあって相当のお金がかかるということで
とても我々の懐ではできそうもない

Q 見たいんですがw

A その代わりと言ってはなんだが
いまNASAやESAと調整している

落下中に極力データを遅れるような
通信装置を最終搭載(打ち上げ1週間前の予定)で
レイトアクセスということで
データ通信装置を搭載する方向で調整している

うまくいけば落下中に
電波でHTVの状況がある程度は送ってこられるだろう

送られるのは
温度や加速度などのデータ

Q ニッポン放送
搭載物資で何か特徴のあるものは
例えば食料など

A 特に変わったことはないが
初号機でなくて2号機に載せるモノは水
80kgくらい
ある意味試験的に載せる
23Pに詳しく

Q 産経
船内物資と船外物資のそれぞれの重量

A 11ページに
比率は書いてあるが

A 東京
与圧部 3.9トン
曝露部 1.4トン
合計 5.3トン

あとはレイトアクセスが少しある
それも込みで5.3トン

Q では全体で15.8トンか

A 虎野
荷物込みで16.0トン

残りの200kgは推進剤を多めに積む

Q カナダやESAの分の荷物はないのか

A 東京
ない

A 佐々木
リエントリの観測装置はNASAの装置

A 虎野
ESAのもあったような気がするが…
あとで回答する

A 東京
確認した
ESAのものは乗っていない

Q 今回の荷物で来年古川さんが使うものはあるのか

A 虎野
HTV側としてはこれがどこで使われるかは把握していない
東京側で

A 東京
こちらもHTVの担当しかいないが…

Q 与圧部の拡張で増えた重量は何百kgか

A 佐々木
スペース的には
ラックが40個分確保されている

Q 読売
2号機で試験やデモはないようだが
ISS到着まで同じ8日間かかるのはなぜか
デモがなければ短縮できるのでは

A 佐々木
8日間というのは
日本時間では同じに見えるが
前回は午前2時 今回は午後
実質的には7日間のランデブーと考えている

5日間でも可能だがドッキングできるタイミング
飛行士の作業のスケジュールも決まっている
2日間の余裕を持たせてNASAと合意した

打ち上げが遅れたときは
ここで1~2日を吸収する考え

Q 初号機のミッション期間が長くなったのは
曝露パレットの運用と与圧品の輸送廃棄を別に

今回は同時に
今回積んでいるものだから
与圧部と非与圧部を同時にできるのか
それとも前回は慎重を期してやったのか

A 虎野
後者 慎重にやった
本来は同時にできる

あとは飛行士のスケジュールもある

Q ATVの運用のスケジュールはどうなっているか

A 佐々木
2号機は2/15に打ち上げ
ドッキングが2/26の予定

Q HTVが離脱した次の日にドッキング?

A その通り

Q もし天候でHTVの打ち上げが何日も遅れた場合は
ATVの日程にも影響がでるのか

A 係留期間も調整できるが
最終的にはNASA/ESAと調整することになる

Q 日刊工業
初号機からの仕様変更による
コストの変動は

A 虎野
設計変更に基づくコスト変動
国産化については当初の既定路線
増減はない

2号機以降の部品はまとめ発注している
各号機のコストの増減にはほとんどきいていない

今回の改修の影響はほとんどない

Q スラスタの温度センサー
具体的にどう変わったのか

あと通信装置のメーカー名は

A 当初は熱電対型
せいぜい300℃くらいしかもたない
白金センサーに変えたので飛躍的に高温までもつ

通信装置は三菱電機

1/72 スペースクラフトシリーズ No.02 HTV (宇宙ステーション補給機)
クリエーター情報なし
青島文化教材社
1/72 スペースクラフトシリーズ No.03 HTV-R (ISS物資回収機)
クリエーター情報なし
青島文化教材社
1/200 スケール H-?B ロケット レジンキットモデル
クリエーター情報なし
ビー・シー・シー
宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1 (日本の宇宙産業 vol. 1)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
日経BP出版センター

はやぶさブリーフィング11月第2回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月29日、「はやぶさ」カプセルのキュレーション作業について、定例のブリーフィングを開催した。今月16日に、微粒子1,500個がイトカワ由来と判明したばかり。もっと期待できるB室の開封が今月中に実施されるか…という期待もあり、会見には大勢の記者が詰めかけたが、現時点では未開封だった。だが、B室に移行する前にA室をひっくり返して調べたところ、新たな微粒子が数百個見つかった。

出席者は、向井利典・JAXA技術参与と上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。以下に、いつものように取材メモを添付する。なお、ブリーフィングの通し番号に段々意味がなくなってきたので、ブログのタイトルは今回から~月~回目という形式に変更した。

ーーーーーここから
向井

11/16に大きな発表
岩石質1,500個
ほぼすべてがイトカワ起源

21日に停電が予定されていて
重要なサンプルが入った状態でクリーンルームを止める
慎重に行った

停電のあとに復旧作業
結果としては全て順調に復旧している

前回も話したが
これからの作業の優先度
B室の開封を優先する

B室を開けるためには
ひっくり返さないといけない

まだA室に残っているかもしれないので
シャーレで蓋をして
ひっくり返したところ
またたくさん微粒子が出てきた

今回は光学顕微鏡で見える程度のサイズ
ざっと見た感じ数百個くらい出てきた

クオリティからすると
9月末だったかに回収した60個
それと同レベルのもの

その粒子がどういうものか
判定するためには
走査型電子顕微鏡(SEM)にかけないと
それはこれから

前回1,500個を同定したときみたいに
ヘラで一挙にやるのはできないので
1個1個マニピュレータでやる作業になるので
時間は多少かかる

うまくいけば
先日発表した10ミクロン以下の微粒子の初期分析の前に
大きい方
今回数百以上、その前のが60個あるが
この中から初期分析に回すものが
可能性としてはあるのではと期待している

なので
B室の開封はまだ
これからになる

この3週間の状況はそんな感じ

ーーーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 読売
今回の微粒子 岩石質はどのくらいあるのか
初期分析の前に

A 向井
この前ヘラでこすったものは
まずSEMの中で見ながら操作できるマニピュレータが必要
すぐにはできない

1月に入る予定だが試験もあるのでだいぶ先

これだけたくさんあれば
かなりの確率でイトカワと言えるが
1個2個の場合は当たり外れがある

ただアルミとかそういうものは除けると思うが
それが全部イトカワ起源かどうか、それはどうか

なかには特殊な
この前の1,500個の中にも硫化鉄とか

しかし最初はもうちょっとオーソドックスなものから
初期分析しないと分からないのが正直なところ

初期分析にまわせる比率は
サイズ分布が違うので一概には分からないが
岩石質よりは人工物の方が多いと思うが

岩石も同じような比率だとすると
人工物が2で岩石質が1とか
正確ではないがそんな感じかなと

なので結構な数があるのではないかと期待したい

Q 光学顕微鏡で見つかった微粒子
1月までに電子顕微鏡にかけるのか

A 全部は終わらない
まずは電子顕微鏡にかけて初期分析に回すものを選ぶ
いくつ選べるかは

ある程度の数がたまれば初期分析を開始できる

B室を開けて中の状況を見た上で

B室から回収・採集はまた時間がかかるが
全体の様子を見て判断する

Q 毎日
大体のサイズはどのくらい
そもそもどこから出てきたものか

A 10ミクロン以上
サイズは大体何十ミクロンだと思う

どこからはA室

ぱっと見て見えなかったのにどこにいるんだということだが
光学顕微鏡だと傷と粒子の区別は難しい

我々も正直こんなにあったのかと不思議だったが
まだ残っている可能性がある

微粒子は大体静電気でくっつている
まだ全部出てきたとは思えない

Q NHK
シャーレの上でトントンは初めて?

A もともと開けて最初にやる作業は
自由落下法(トントン)というのが最初の手段であったが
最初見て何もなかったのでそれはやらずに
ずっと顕微鏡でやってきた

今回はどうせひっくり返さないといけなかったので
ついでにやってみらたこんなに出てきた

Q 朝日
今にして思えば、最初にやっておけばよかった?

A 上野
トントンはしてなかったが
作業の過程では
粒子は確認できなかったので
作業を進める間に落ちやすくなったのかも
耐電状態がいまとは違うと思う

Q 石英のシャーレに落としたのか?

A そう

Q 赤旗
トントンといのは
何をどうトントンしたのか
もう少し詳しく

A 向井
私がやったのではないので詳しくはないが
実際はキャッチャーハンドリングユニットがあって

シャーレで蓋をして
どこを叩くか決めて
側面を叩いたんだと思う

A 上野
やり方は極めて原始的

Q 共同
今まで見ていた側面でなくて
死角に一杯あったのか

A 向井
どうかな
あったのかもしれない
回転棟のそばは見にくい

Q 媒体不明
これまでの60個
電子顕微鏡で調べる予定は

A どちらを優先するか
一挙にはできないので
順番を決めてピックアップするしかない

Q 来月の早い時期に判明?

A そう期待したいが
1個1個ピックアップして電子顕微鏡に乗せるので

でも数百個全てはとてつもない時間がかかるので

初期分析にどのくらいまわせそうかという
情報は早く出てくると思うが

Q 微粒子の写真はないのか

A ない
いまピックアップする作業をしているので

ついでに説明
回収はどういうことかといと
石英の碁盤の目があってそこに番号
カタログのための
それができれば回収

我々がいまやっているのは採集
ナンバリングはこれから

Q 東京新聞
いままで逆さまにしたことは?

A 向井&上野
分からない

Q 手作業でひっくり返した?

A 向井
キャッチャー~ユニットに付いた状態で

Q 何かモノでたたいた?

A そう

Q 朝日
トントンはいつやったか

A だいぶ前

Q この前の発表の後?

A そう

Q 11月中旬と言っていいか

A そうかもしれない

Q 指で叩いたのでなくて
器具で側面を叩いたのか

A そう

Q 何で叩いたのか

A 何かの工具だと思う

Q 日経
今回の数百個
初期分析に回すときは石英のガラス管で?

A そう考えている
何らかの固定は必要だと思うが
従来のやり方でやろうとしている

Q 媒体不明
科学的に分析する上で大きい微粒子の利点は

A 専門家ではないので
この前の記者会見では中村さんだったかが説明していた

A 上野
結晶構造の解析
スライスは5ミクロンでも頑張ればできるが
10ミクロンあると作業は楽に進められる

初期分析に必要な作業や手順は
より迅速にできるだろう

Q ヘラについている微粒子の作業は当面止めるか

A 向井
同時にやっている
この前発表したヘラ
電子顕微鏡の中で使えるヘラは1月に入ってくる
だが難しい

Q 聞いている限りでは
そっちはもういいのかと

A 大きいのが出れば
でもせっかく同定したものなので
初期分析に回すと考えている

A 上野
今後B室を開けてどうなっているかにかなり依存する
A室からかなり出てきたとはいえ

初期分析だけじゃなくて
今後プロポーザルを出してもらって分析してもらうときは

小さい粒子でもできる研究はなるべく小さい粒子で
大きい粒子は大きい粒子でないと実験できないものに
多分そういう形になる

A 向井
スターダストでも
大きい方の10~20個は置いている

大きいがゆえにいろいろ入っている可能性がある
誰が何をやるかまだ決めかねている

Q NHK
初期分析の開始時期は

A なんとも言いようがない
10月以降は間違いがないがw

B室を開けての状況にもよるが

ヘラに付いた状態の微粒子はだいぶ先
それよりは早いだろう

これからSEMにかけるので

今後のブリーフィングもどうするか

いろんな作業を平行しているので
なかなか発表となると良く見たりしないといけないので

もし隔週開催なら次回か次々回くらいには
いつと言いたい

Q 年内には厳しいのか

A SEMは年内に見るが
初期分析はいくらなんでも

Q 読売
新たに見つかった数百個
10ミクロン~数十ミクロンでいいか

A 正確なサイズは測っていない
数10ミクロンなのか100ミクロンなのか
曖昧な状態

Q じゃあ数十から数百…

A 数百もあったら目で見える
大半は10ミクロンのオーダー

Q 割合は個人的な印象か
それとも見た上で1/3は岩石質と言えるのか

A それは前者
サイズ分布によって割合は違う
テフロンでこそげたものの比率は大体そのくらいだった
それと同じくらいはあるんじゃないか

いま確認中

Q いまA室から出てきた数百個を電子顕微鏡にかけるのを
優先させるということで良いか

A 優先はどういう意味で

Q 1,500個の続きに対して

A それは間違いない

A 上野
それにあわせてB室の開封も進める

A 向井
どっちもドーム2の中にあるので
平行にできない部分もあるが

Q 時事
2回目のタッチダウン
地面に着いたことの確認はできているのか

A 上野
テレメトリ上はタッチダウンしている
実際にやったかどうかは誰も確認できない

Q 日経サイエンス
トントンとやって
サブミクロンオーダーが無数に落ちている可能性は

A 向井
確認していないので分からない
光学では確認できない

Q シャーレの上はどうやって調べるのか
ヘラも使うのか

A 最終的にはそうかもしれない
まだそこまで考えていない

Q ニッポン放送
今回の数百個
形で地球のものと分かったもの
ぱっとみて分かったことは

A 私は見てないので伝聞になるが
人工物か岩石質か見た瞬間に分かるものもあるし
そうでないものもある

岩石質らしいものはそういう形や光沢
そう判断できるものもある

やる人の目も肥えているので

Q 同じ方法で確認するのか

A 番号づけをまずやらないと管理できなくなる

Q 読売
今後の予定
B室の開封はいつくらい

A さあ
予定としては今週末か来週か

開封にはまずワイヤリングを切らないといけない
切れば粉が出る

粉が入らないように
慎重にしないといけない

Q 媒体不明
はやぶさは流行語大賞の候補
研究者としての思いは何かあるか

A 正直言って
私は最初からからんでないので

多大な関心を持っているのは嬉しいが
本音はもうちょっと静かにして欲しい

大学が仕事にならない
小さい研究室でいちいち取材は大変

研究者に迷惑はかけないようにしないと

研究者は論文を書かないといけないので
マスコミの発表とのバランスは
理解して欲しい

以上
ーーーーー

来月のブリーフィングは、13日(月)と27日(月)に開催される予定。今度こそB室が開封されているか、注目が集まるだろう。

おかえりなさい、はやぶさ [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン
NHK-DVD 小惑星探査機“はやぶさ”の軌跡
クリエーター情報なし
日本コロムビア

「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」帰還バージョンを観てきた

コスモプラネタリウム渋谷で上映が始まった「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH- 帰還バージョン」を観てきた。記事はマイコミジャーナルに掲載する予定だが、とりあえずさくっと感想だけ書いておきたい。

ポスター

ちなみに2009年バージョンについては、こちらに記事を掲載しているので、参考にして欲しい。

小惑星探査機「はやぶさ」のドキュメンタリー映画が完成
~全編CGの43分間、人間は1人も出てこないヒューマンドラマ
(Robot Watch)

2009年バージョンとの違いについては、ネタバレになってしまうので詳細についてはここでは触れないが、基本的に本編はほぼそのままで、エンディングの部分(再突入シーン)が全面的に描き直されている。上映時間は、その分、2分ほど長くなっている。

とは言え1カ所だけ紹介。ちゃんとひっくり返ったぞ!

私はもともと、帰還バージョンの話を聞いたときに、最後の方で出てくる「現在地球に向けて航行中である」というテロップを外すだけでもいいと思っていたので、小規模な修正であったことは評価できる。そのくらい、2009年バージョンは作品としてすでに完成されていた。それに、制作当時は想像するしかなかった再突入シーンの演出も、驚くほど実際の映像に近かった。

マニアからは、「クロス運転が何で入っていないんだ」という声もでるかもしれないが、それは上坂監督がこの映画で本当に描きたいと思っていた本質部分ではないのだ。監督の「命は思いを繋げていくことが本質だと思う。はやぶさはもういないが、その意志はみんなの心の中に生きている。はやぶさがやりとげたことを、これからも心のどこかにしまっておいてくれれば嬉しい」という舞台挨拶を聞いて、改めてそう感じた。

コスモプラネタリウム渋谷は、渋谷駅の西口からでも見える 最上階の丸いドームが目印

プラネタリウムは文化総合センター大和田の12Fにある 当日の12時半で完売になったそうだ

12Fにある券売機でチケットを購入する。回も指定できる 上映は1日4回(平日)/5回(土日)。時間が異なるので注意

ぜひ、17mドームの映像で帰還バージョンを楽しんでもらいたい。DVD/BD版の発売については未定だが、前向きに検討中とのこと。こちらも期待して待ちたい。

おかえりなさい、はやぶさ [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン
NHK-DVD 小惑星探査機“はやぶさ”の軌跡
クリエーター情報なし
日本コロムビア

あかつき記者向けブリーフィング

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月18日、金星探査機「あかつき」の運用状況について、記者向けの説明会を開催した。金星周回軌道への投入計画なども詳細が明らかになった。

登壇者は、プロジェクトマネージャの中村正人教授と、システムエンジニアリング担当の廣瀬史子氏(ともにJAXA/ISAS)。以下に配布資料と、若干の補足を掲載する。


運用状況の概要。説明は不要だろう。


飛行計画と実績の比較。ロケットの投入精度が高かったために、探査機側の初期軌道修正が不要になった。


探査機の分離画像。中央上にが見えるが、これは「黒い点を打ったら印刷でこうなってしまった」とのこと。どうせオリジナルの画像も公開されているのだが、良く見ると白い点が写っている。何かが一緒に分離されて飛んでいったらしいが、散々調べても特に探査機から外れたものは見つからず、「特段支障はない」という結論になったようだ。


打ち上げ後の初期軌道修正が不要になったおかげで試験撮影ができた。


あかつきには世界で初めてセラミック製のスラスタが搭載された。従来の金属製スラスタでは特殊なコーティングが必要で、そのために海外に運んでいたが、セラミックスラスタではその工程は不要。ちなみにセラミックは京セラ製だ。


航行中の運用。金星周回軌道への投入精度を高めるために、7月は探査機の姿勢を固定して外力の大きさを精密に計測した。8月は再生測距方式のトランスポンダの精度を検証。これは新規開発して搭載したもので、従来は地上からの電波をそのまま送り返していたが、再生測距方式ではノイズを除去してから送り返す。これによって測距の精度が向上するそうで、現在評価を行っているところだ。9~10月については以降のスライドで説明。


2つのカメラ(UVIとIR1)で同じ方向(射手座)を撮影することで、アライメントを確認した。


さらに4つのカメラ(UVI/IR1/IR2/LIR)で地球を撮影してアライメントを確認。ちなみに10月まで実施しなかったのは、IR2の冷凍機を起動する電力が不足していたからだ。太陽に近くなったことで、電力事情が改善された。


ハイゲインアンテナを地球に向けていると、地球を追い越したときに、今までと太陽が当たる面が逆になる。カメラ面に太陽光が当たると困るので、向きを逆にするのだ。普通に180℃回転せずに、途中がややこしくなっているのは、安全のために一旦カメラ面を日陰側(地球側)に待避しているからだ。


ヤマ場となる周回軌道投入。軌道制御エンジン(OME)による噴射で減速して、4日周期の周回軌道に投入する。詳しくは以下の質疑応答を参照。


近金点高度が300kmとあるが、最新の計画では550kmになっている。

以下は質疑応答。

Q 時事通信
軌道投入計画の確認
周回軌道の近金点と遠金点は

A 広瀬
近金点は550kmが目標
遠金点は
周期4日の場合が18~20万km
周期2日の場合は10~12万km
周期30時間の場合は8万km

Q 1回目の噴射で軌道に入ったかどうか
分かるのは通信再開後か

A 軌道制御誤差
ドップラーで確認できるか
いま詳細解析をしている

通信が再開した瞬間には分からない
はっきり分かるのは10数時間後程度になる

A 中村
日本だけでなくて
NASAの局も動員するので
3角測量なので

NASAのデータが入ってきて
日本のデータも揃えて
こういう軌道に入っているよと
確定するのが21時としている

Q NHK 室山
最初の観測
見て分かる最初の情報はいつになるのか

A 中村
まだ議論しているところ
まず軌道に入れるのが重要
そのためにエンジンの向きが制限される
カメラは金星に向けないと撮影できない

その姿勢に持って行くかどうか

30時間の軌道に落ち着いてもう大丈夫だと
これで衛星の姿勢を変えても大丈夫だと
我々技術陣が確信したところで金星に向ける

それまでにたまたま金星にカメラが向くチャンスがあれば
撮ることはあるかもしれない

Q 大体いつくらいになりそうか

A 12/13に入るので
学会発表が16日なので
それまでには撮って欲しいw

Q 赤旗
地球までの交信にかかる時間

A 広瀬
6,300万km
片道215秒程度かかる

Q 読売
VOIは3回実施するのか

A 中村
そう

Q 初の日陰でどんなことが予想されるのか

A 太陽電池からの出力が途絶える
バッテリ運用
電力系が初めてそういう状況に入る
いままで陰に入ったことがない

衛星の温度がどんどん下がるので
バッテリで各機能を維持しながら
ヒーターで温めながら運用する

Q 東京新聞
OMEの噴射コマンドはどういう形で送っておくのか
3回の軌道修正のあとにファーストショット
科学観測の開始はいつからと言えるのか

A 広瀬
コマンドは前日に送っておく
タイマーで衛星が実行する

A 中村
サイエンスの観測はファーストショットから始まる

Q カメラの調整はいらないのか

A 調整といっても画像のゆがみは取れないので…

サイエンスデータとして配るのは
補正データを始めるのは数ヶ月先になる
それはやってみないと分からない

Q 産経
周回軌道に投入したというのは21時頃か

A 中村
投入はエンジンを吹いている間なので
8:50~9:01の間だろう

Q 日本の探査機が惑星の周回軌道に投入されるのは
成功すればこれが初めてか

A 惑星という意味ではそう
他の天体では月と小惑星に投入

Q 周回軌道の投入が山場という理由は

A まず全て自動シーケンスで行わないといけない
こっちから何かしようと思っても
電波で215秒
片道3分以上かかるので
何か衛星に異常があったことが分かって電波を送っても
それはかなり手遅れ状態に近い

衛星自身が判断しながら
実行していくのが技術的なチャレンジ

Q 軌道投入のウィンドウはこの11分間か

A ジャストオンタイム
この時間にあわせて軌道制御してきたし
この時間にきちんと12分間吹いてくれないとダメ

しかし実際には噴射が5~10%くらい足りなくても
4日周期じゃなくてもっと遠い周期の軌道に入る可能性はある

その場合は修正マヌーバで4日周期に戻す
それを決定するのが21時まで

Q ワンチャンスなのか

A この時間にエンジンを吹かないと
双曲線軌道でイカロス君とともに通り過ぎる

Q 日経サイエンス
月と地球の写真
2枚で位置が逆に見えるが

A 中村
多分反転している
あとで確認したい

Q 読売
軌道投入の作業が始まるのは8:49か

A 中村
作業そのものは3日前から始めている
温度を上げるとか

その最終仕上げとしてエンジンを吹くのが8:49と

Q 噴射したという確認は
すぐに分かるのか

A そう

Q 720秒間 吹いたかどうか分かるのはいつか
通信再開後すぐに分かるのか

A 衛星全体のデータを取らないといけないので
数時間後になる

Q 日陰に入ったとき
通信そのものは維持されるのか

A 通信は維持される

Q 読売
のぞみのことが頭にあるので
どれくらい噴射すれば
周回軌道に入れたと判断できるのか

A 中村
衛星の姿勢が正しく向いていて正しく吹いていれば
かなりの確度で入っているだろうと思う

ただしのぞみの悪夢がある

のぞみの場合
酸化剤が供給されなくて所定の推力がでなかった

2液ともバルブが開いてちゃんと供給されていることが
確認されないと本当に入ったとは言えない
やはり確認に12時間程度欲しい

確信は段々と強くなると思うが

僕たちの顔を見てなんとなく
ニヤニヤしていたら入っているんだと
思ってもらえればw

Q 地球軌道を横切ったのはいつ

A 記憶では9/1だったと思う

Q 東京新聞
最低どれくらい吹けば金星の重力につかまるのか

A 広瀬
720秒を目標としているが
560秒以上吹ければ大丈夫だと推定している

Q その場合の周期は

A 50日の周期
遠金点は110万km程度になる

Q 日経サイエンス
近金点550kmが正しいとすると
当初は300kmだったのが550kmに変更されたのか
それとも正確に検討したら550kmになったのか

A 中村
300kmに入れれば大気のドラッグがないだろう

大気に触れるとどんどん高度が下がる
300kmを目標にしておけば大丈夫だろうというのが
最初の計画

現在は550kmに入れようと
幅があるので悪くても300kmで留まるだろうと考えている

Q 金星到着前に観測が始まっていると

A 黄道光の撮影をやっている
そこの上野先生が責任者

A 上野
金星到着前に
1~0.7AUの間で
惑星間のチリがどんなふうにあるか光学的に観測

IR2を1.6μのフィルターで観測した
かなり幅広い領域で撮影
データを解析中

Q 解析結果はまだ先か

A 結果はまだ先だが
絵自体はそろそろ出来上がる

Q 探査機の回転
どこがカメラ面か

A 中村
1番の画で左側
5番目になると右側面

太陽電池パドルはクルクル回るので
向きは気にしないで

Q 赤旗
550kmと300km
近い方が詳細にみれると思うが
あとで300kmに変更する可能性はあるか

A 中村
ない
この探査機は主に遠いところでの観測がメイン
近いときは雷の観測

近い方がクローズアップが撮れるのもあるが
近いと早く移動するのでぶれてしまう
ほどほどがいい

Q 読売
観測は何年

A 中村
2年もつようにバッテリを設計している
実際にはもっと持つと思う

Q 大気の厚さは

A どこまで行ってもどんどん薄くなるので言うのは難しい
地球の大気プラス50kmくらい

上はどこというのはなかなか難しい
ISSの高度にも空気はある

Q 現時点ではどのくらいの距離
イカロスの場所は

A 広瀬
地球からあかつきは4,300万km
金星からあかつきは540万km

イカロスはもうちょっと手前だと思う

Q 媒体不明
のぞみのことも踏まえて
意気込みを

A 中村
今度こそは投入するぞとみんな意気込んでいる
リベンジです

はやぶさ、そうまでして君は~生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
川口 淳一郎
宝島社
NHK-DVD 小惑星探査機“はやぶさ”の軌跡
クリエーター情報なし
日本コロムビア
おかえりなさい、はやぶさ [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン

はやぶさ記者会見 微粒子1,500個はイトカワ由来と判明!

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月16日、小惑星探査機「はやぶさ」に関し、急遽記者会見を開催した(連絡があったのは当日10時で開始が13時から)。同日朝、文科省でも会見があったようで、内容については10時より前の時点で新聞各紙が報じていたが、サンプルキャッチャーの中で見つかっていた微粒子1,500個がイトカワ由来であると判明したとのこと。私も急ぎ取材に向かった。

記事はすでにマイコミジャーナルに掲載したが、いつものように取材メモをそのまま掲載する。

【レポート】「はやぶさ」カプセルから発見された微粒子1,500個がイトカワ由来と判明!

出席者は、
JAXA 月・惑星探査プログラムグループ はやぶさプロマネ 川口淳一郎
JAXA 月・惑星探査プログラムグループ 研究開発室 教授 藤村彰夫
JAXA 技術参与 向井利典
JAXA 宇宙科学研究所 ミッション機器系グループ 副グループ長 上野宗孝
茨城大学 理学部 地球環境科学コース 教授 野口高明
東北大学大学院 理学研究科 地学専攻 准教授 中村智樹
の各氏。

なお、川口プロマネは米国出張のために、冒頭の15分のみ出席。その足で成田空港へ向かった。

ーーーーーーーーーここから
川口プロマネ

(プレスリリース読み上げ)

大臣の会見では
地球圏外の天体からの初のサンプルリターンと述べていたが
多少補足する

地球圏外というだけだと
スターダストがビルド2という彗星からダストの回収に成功している
2番目

文字通り小惑星からだと初めて
コンタミのない

スターダストだと
エアロジェルで高速に
高熱を伴って回収している

はやぶさの場合は
熱的・機械的なコンタミがない回収

こういうサンプルリターンははやぶさが初めてではないか

振り返って
プロジェクトが始まって15年
飛行を初めて7年
を考えると
当初は
夢のようなゴールを目指して飛行させてきたわけだが
今回1,500個
イトカワ由来と判断するに至った

夢のさらに1つ上を行くような信じられない気持ち

後半の4年半の飛行は大変 艱難辛苦だったが
プロジェクトのメンバーに献身的な努力
その結果こういう今日の発表に

プロジェクトみんなで喜びたい

プロジェクトを育んできた宇宙研時代から40年以上
の宇宙開発の下積みがあってこそこういう結果にたどり着けた

先輩諸氏とも一緒に喜び合いたい
感謝の言葉を述べたい

私にとっては大変感激的な日だった
ちょうど1年前にはイオンエンジンが止まって再開したと
ここで会見したが
それから考えるとこの1年間は
大きな変化があり
大きな成果に恵まれた

本当に良かったと思う

ーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 宇宙作家クラブ 今村
はやぶさにどんな声をかけたいか

A 打ち上がってから
いろんな意味で育て上げた

帰還できたのは
協働して持って帰ったと思っている

はやぶさはロケット燃料がなくて
必ず大気で燃え尽きないと行けないと
予測されながら
我々としては
カプセル・試料の回収を最優先に運用してきた

はやぶさにとってベストなのは試料を回収することだと
プロジェクト一同取り組んできた
はやぶさ自身もこの成果をきっとよろこんでいるだろうと

Q ロイター
科学的にはどういう
人類にはどういう意味が

A それはそれから説明

Q ライター 喜多
祝電が来ているので披露したい
「サンプルの確認おめでとう。これを次の成果に活かして欲しいと思います。
糸川秀夫」
お返事をお願いします

A イトカワ先生の努力に感謝して
これからもイノベーションにつとめたい

Q ライター 林
この内容
いつ聞いたのか
どう思ったか

この結末を予測していたか

A 10月上旬から
SEMに直接かけられるヘラで回収を初めた
そのあと研究者と

私は専門部会には出ていないが

向井先生が出ている
サンプル分配委員会
2回ほど
情報を共有してきた

先週
詳しく専門家で吟味する会があった
それに先だって状況は聞いていた

私は「本当か」と
実は私が一番プレスリリースを出すのに慎重だった
誰も追いかけるわけではないし
サンプルは逃げないし
初期分析が終わってからでもいいと散々言っていた

でもそれとは違う方法で確認できると見通しを聞いたときに
本当に信じられない

私は1粒でいいと思っていたが
中村先生から1,500粒と聞いて
そんなにたくさんいらないのにと思った
正直そう思った

本当に信じられない

いつから確信と

私は弾丸が発射してないと訂正して発表
大変苦しかった

そういうこともあったので
最後の最後まで確認したいと思っていたが
心の底ではあっていて欲しいと
帰りの飛行が始まってから
1粒でいいからあって欲しい
「あるはずだ」に近いかもしれないが
あると信じていたから
帰りの運用がプロジェクトのみんなから支えられた

信じていたのは昔から

ーーーーーーーーーーここで川口プロマネは退席
JAXA 藤村

イトカワ起源と判断する根拠3つ

(添付資料1)

(資料読み上げ)

鉱物種の表
見つかった鉱物はカンラン石、輝石、、、、
普通コンドライトに存在する鉱物

一番たくさんあるカンラン石も一致
順序も一致
存在割合があっている

右のグラフ
カンラン石と輝石の鉄・マグネシウムの比率
分析した粒子の平均値が赤丸
はやぶさがリモートセンシングで推定した
イトカワ表層の組成の範囲が楕円

この楕円の中に赤丸が入っている

カンラン石や輝石とかがたくさん入った石
マントルの深いところにある
それが左下の楕円だが、それとは随分違うところにいる

こういった理由から地球外物質で、イトカワ由来であると判断した

(添付資料2)

ヘラの写真と電子顕微鏡で拡大した写真

電子顕微鏡で確認

人工物と岩石質のものがあって
この岩石質が地球外物質と判断している

(添付資料3)

ヘラのかきだし
東北大の中村先生がやった

電子顕微鏡での分析は
中村先生、野口先生、九州大学の○先生の3名がやっている

(添付資料4)

電子顕微鏡の写真

ーーーーー
質疑応答

Q ライター大塚

添付資料1のグラフ
鉄とマグネシウムの比率
具体的な数字(%)を知りたい

A 中村
学会発表前なので数字については
控えさせていただきたい

Q 日経
電子顕微鏡で当てたのは
蛍光X線で良かったか

A 中村
当てたのは電子線
出てくるのは特性X線

X線を当てたときに出てくるX線が蛍光X線

元素特有のエネルギーを持つX線を
検出器で調べればどんな元素が入っているのか
分かる

A 向井
電子顕微鏡でのデータ
定量性は非常に難しい
比率は大体わかるが

A 藤村
定量性はEPAという装置がある
これは初期分析で使う
1粒にどのくらい元素が

Q 赤旗
イトカワ由来と分かったほかに
なにか新たな発見などはあったか

A 藤村
小惑星と隕石の関係が明らかになる

今まで因果関係はこうだろうと
推定していたものが
決定的な証拠を得ることができた
それが大きな科学的な成果の1つ

もう1つは
隕石は地球に突っ込んで
酸素と水で反応
高熱で表面が溶ける
ショックを受ける

そういうものがないものを
人類が初めて手に入れた

隕石学で分かっていたことをこれから凌駕して
科学的には新しい学問
隕石には変成を受けてなくなってしまっているものが
見つかる可能性が非常に高い

詳細はこれから調べること

これによって
隕石学のいままでの基盤の上にワンステップ立ち上がった
新しい学問がこれから進歩していく

そのための資料を幸いにも手に入れられたことが
それがうれしいことだと思っている

A 野口
大気と反応しているものではないということのほかに

今回とったもの
小惑星の表面に本当にあるもの

いままでの隕石は
大気の風圧に耐えてきた固い部分
小惑星のやや内部にあったものになってしまう

今回は小惑星の本当に表面にある物質

太陽からくる放射線との反応とか
いろいろなことが表面の粒子に記録されている

我々のような隕石の研究者が持っているデータと
天文の研究者が持っている分光の観測データなどを
直接比べられるようなデータが取れるようになる

A 中村
最初はイトカワ本体の特性を把握するのに集中したいが
そのあと個人的に期待しているのは

回収したサンプルは小惑星の表層の物質なので
ほかの天体の物質がチリとしてつもっている可能性が非常に高い
S型小惑星以外の彗星とか他のタイプの小惑星とか
粒子が多いとそういう物質も見つかってくるのではと期待している

Q ITmedia
初期分析でないと断定できないと言っていたが
その前になぜ判明したのか

今後のスケジュールはどうなるか
B室などは

A 藤村
もともと同位体のような
完璧に1粒が分かるまで発表できないと思っていたが

今回は非常にたくさんの粒子で
鉱物の成分と種類と量比 元素の成分比
かなり証拠
なおかつ地球のものと思われる岩石が見つかっていない

地球外物質だと言って間違いない
そうするとイトカワ

分かっていて話さないのは良くないので
分かり次第お知らせするのが正しい対応

確実性であれば初期分析を待ったが
分かった段階でできるだけ早くみなさんにお知らせした方がいいと

A 向井
1粒や2粒なら結論を出すのが難しいが
1500個もあって調べて存在比も
統計的な処理の結果で確信が得られた

統計処理なので違うものも見つかるかもしれないが

1,500個とたくさん見つかったのが重要なポイント

ところがほとんどが10ミクロン以下
写真のは大きめだが

光学顕微鏡で1つ1つ判断は難しい
特殊な技術(電子顕微鏡を見ながら操作できるマニピュレータ)が必要で
それができるのは来年1月

初めてのことは大体うまくいかない
初期分析はもう少し先になるかなと

いまB室を開ける準備をしている

B室を開けた結果で
全体の量が見積もれる

それから
大きい方で初期分析にかけられるものを検討する

Q ロイター
日本の宇宙科学にとって
他国との競争にどういう影響
評価は

A 向井
宇宙科学の目的は

人間、我々の地球
あるいは生命の起源

天文学では
地球型惑星がどのようにできたのか
生命がどのようにして発生したのか

その根源的な疑問に向かって進む
アプローチとして

物質がどのようにできたのか
まず始原的な物質を調べるのは重要

これまでそういうアプローチでやってきたのは
アポロやスターダストやジェネシス
いずれもアメリカ

小惑星からのサンプルリターンはどこもやってない
世界初

サンプルの回収技術

日本の隕石学は活発
非常に重要な位置を占めている

宇宙科学にはいろんな分野があるので
それぞれで重要なポイントはあるが

物質科学の面では
ほかの国は真似ができない

日本が、というか
はやぶさのサンプル自身は
JAXAのものでも日本のものでもなく
人類共通のもの

今後世界中の科学者に分配して分析してもらう
国際AO(公募)で

非常に貴重な試料を得たと思っている

A 藤村
世界中の科学者に配布することを想定
最初はどういうものかのカタログを作って
公募をかけて世界中で研究してもらう

それによって
始原天体・太陽系の物質科学が格段に進歩するだろうと思っている

その材料を提供できることは非常に嬉しい

Q 日本テレビ
海外からの反応はどうか

A 向井
まだ発表したばかりで聞いていない

NASAはベリーエキサイティングと

Q ロイター
テーブルの上に出ている袋は何か

A 藤村
コンテナとキャッチャ
(説明…)

Q 朝日
1,500個見つかった
もし弾丸が発射されていればもっと多かった?
当初考えていた研究はこの量でもできるか?

A 向井
これからB室もあるし
もっと大きなものもすでに見つかっている

全部で何百mgもあればというのが最初の目標

1500個でも数μgのオーダー
でもいまの微量分析の技術はすごい

A 中村
サンプル量を必要とするごく一部の解析はいまの量では難しいが
野口さんと私で初期分析の岩石鉱物チームを担当しているが
我々の分析は全部できる

イトカワの物質科学的な特性は現在のサンプル量でも十分把握できる

Q ライター林
量があれば何ができるのか
違いは

A 中村
微粒子にどういう元素が含まれているのか

イトカワの微粒子には
太陽系にあるほとんど全ての元素が入っているはず

ある元素は非常に多い
ある元素は非常に少ない

多く入っている元素はサンプル量が少なくても原子は多い
しかし少なくしか入っていない元素は
サンプル量が少ないと本当に原子が少なくなる

測定器には計測限界がある
それを下回ってしまう

量が少ない元素を検出するためには
ある程度の重さが必要になる

必要な量は分析による
どんな元素を知りたいのか

我々の初期分析チームでは
もうちょっと大きければ測定できる元素の数が増える

Q 赤旗
ガスの分析はどうなった

A 向井
ガスはあったが今日の時点で公表は控えたい

Q ライター喜多
実際に作業して
このカプセルがこうだったらやりやすいとか
次の計画にフィードバックは

A 藤村
もっと大きかったらとか
もっと綺麗だったらとか
もっと小さかったらとか
いろいろ思った

もっと扱いやすかったらとか

こういうのは
次のミッションに的確に繋ぐ必要がある

こういうものを技術的に検討する場で発言して
フィードバックをかけていこうと

Q 媒体不明(赤旗?)
回収でもハラハラドキドキ
現場の気持ちの移り変わりは

A 藤村
一番最初に開けたとき
非常に綺麗だったので「おおきれい!」と
その次にみんなさーっと汗が引いて真っ青に
「で、どうしようと」
こんなにお金をかけたのに
こんなに準備したのに
みんなでリハーサルしたのに

その次は目に見えなくてもと
ちゃんと準備していたので
マニピュレータで

あるときはやはり見つからないとか
あるときはここにありそうだとか

やはり波瀾万丈
はやぶささんはハラハラドキドキで
最後にはうまくいくもの

開けたときはみんな「ん?」だったが
最後に非常に嬉しい結論に

でもまだこれはヘラで1かきしたもの

そっとやってこれだけ見つかった
まだたくさんあると思っている

まだB室も
まだこれからだと思っている

A 中村
ヘラを手で操作したが
回転棟の右側半分をやさしくなでるように
ヘラを持つ手は震えていなかった
結構冷静だった

決められた範囲をやさしくスイープ
微粒子がくっついていることを願ってやっていた

そのあと野口さんと電子顕微鏡で粒子を確認しだして
添付資料2の写真
拡大写真に写っているかんらん石が
一番最初に見つけた岩石質の粒子

これを見たときはまぁ
かんらん石だけだと地球のものか宇宙のものか断言できないので
宇宙のものである可能性もあるなという程度だったが
とりあえず嬉しかった

あとは分析が進むに従って
地球にあまりない傾向が見つかり始めた
そのときから段々確信を深めた

A 野口
数が増えたのが良かった
1個だけだとどうだと すごく小さいので

どこまでいったら統計的に言っていいかと

ハラハラドキドキのあとには
いい結果が出そうだと
気分が良くなってきた

ーーーーーーーーーー
囲み

Q 先週のブリーフィング(11/9)でもう分かっていた?

A 向井
こういう情報は来ていたw
でもあまりにも重大なことなので
本当に専門家の意見を聞いて本当に大丈夫かと

宇宙研の中の有識者、所長も含めて
これは発表できるかどうか評価

先週のブリーフィングの翌日にそれをやった
なのでブリーフィングのときにはまだ確定できない状態だった

Q 鉄とマグネシウムの比率も分かっていた?

A 最後の結果はまだだが
おおよその結果は出ていた

でもこれだけで決めたのではない
どういう鉱物種の組み合わせ
それぞれの割合

特に硫化鉄なんかはいくつか種類があるが
~の中にしかない硫化鉄

第三者的に私も含めて

可能性が高いなぁとは思っていたが

その前の10/25のブリーフィングで
記者から鋭い質問があった
岩石質はどうして分かったと
マグネシウムはあったのかと
鉄はどうかと
大体の元素組成はわかっているのかと

その時点で可能性は高くなっていたが
まだそれだけで大丈夫かなと

Q B室への期待はさらに高まった?

A 上野
その通り
A室ですら入っていた

Q A室になぜイトカワの微粒子が?
B室から漏れた?

A 上野
その可能性もあるし
表面に浮いているようなものがあるかどうか

調べるのはこれから

Q B室の予定は

A 向井
今月中に開くかどうか

これまでの作業もそうだが
リハーサルやっているにも関わらず
新しい作業をすると必ず予想外のことが

連休もあるし

藤村さんがここにいるから今日は作業ストップだし

NHK-DVD 小惑星探査機“はやぶさ”の軌跡
クリエーター情報なし
日本コロムビア
おかえりなさい、はやぶさ [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン

はやぶさウィークリーブリーフィング第11回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月9日、はやぶさカプセルのキュレーション作業について、定例のブリーフィングを開催した。説明者は、向井利典・JAXA技術参与と、上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。

以下はいつものように取材メモ。

ーーーーーーーーーここから
向井

前回も説明したが
新しいヘラを使って採取した微粒子について
電子顕微鏡で観察して
粒子の同定とマッピングを継続している

前回は800個だったが
この2週間で増えて1500個になった

こういった微粒子の初期分析には
大半がミクロンオーダーなので
光学顕微鏡では見えないので
取り扱いに特殊な技術が必要

ナノテクのメーカーや専門家など英知を結集して
準備しているところ

今後どう作業していくか
分析に時間がかかっているが
いくつかオプションがある

現在は
B室の開封とサンプル採集を優先することにして
現在その準備をしている

まだそういう状況が現時点での状況

ーーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 読売
1500個というのは地球のものは除いた数字か

A 向井
明らかに人工的なアルミとかではないもの
地球外かどうかはまだなんともいえない

Q これは最初のヘラについていたものか

A 最初のヘラのまだ片面だけ

Q 毎日
B室 今後の段取りは
1500個の扱いはどうなるのか

A 向井
1500個の扱いは
ヘラに付いた状態なので
次の分析にはまず動かさないといけない

ピックアップの準備をやっている
光学顕微鏡では見えないので
電子顕微鏡を見ながら操作できるマニピュレータを準備している

いずれは初期分析に回るがいつかは現時点ではなんとも

A室をしらみつぶしに調べてからB室に行くのも考えられるが
いまの状況だと何年かかるかわからないので
現在はB室の準備をしている

段取りを決めて

開けるといっても
B室が下にあって蓋がある

ひっくり返さないといけない

A室の中にまだ残っていたらどうなるんだとか
いろいろあるのでその準備をしている

B室の開封
ネジを取ればいいというものではなくて

いままでリハーサルはしてきたが
そこは慎重にやりたい

手順は一応検討したものがある

Q 時期の目処は?

A 今月いっぱいには開くと思う

いままでの作業と並行作業になる
人も限られるので完全にパラレルにはならないが

今月20日か21日に点検のために停電がある
いま中にサンプルがあるので止まるのは困る
環境の整備
シャットダウンの仕方とか
再立ち上げの方法とかも
鋭意検討している

その前後の時間
あと連休もある
時間的に

できるだけ早く
間違いなくやりたい

Q 読売
確認だが片面が終わって1500個なのか
もう片面がまるまる残っていると

A まだひっくり返さないといけない

Q B室が今月中ということだが

A そういう予定だ

Q B室を開けてから
もう1回A室をヘラでやることは

A 向井
(かかってきた電話に出る)

A 上野
ヘラはA室は中断してB室に行く

Q 今の段階でA室を中断するのは
B室の方が有望だという理由か

A 向井
それよりもいまはヘラで分析
どう取り扱うか確定しないと
目処がないと
たくさんヘラで捕まえても
処置の仕方に困ることになる

その目処がついてから
次のステップに行きたい

たくさん粒子があることは分かったが
初期分析にどう回すか
目処がないと
次の作業に移るのは危険だという判断

B室はまだ開けてないし
たくさんあるかもしれないしないかもしれない

それよりも全体を見渡した方が

最後またA室に戻ることもあり得る

Q B室を開けて
ヘラを使うかどうかはわからない

A ヘラの作業はは慎重にしないといけない

A 上野
ヘラの作業自身は
回収作業がそれなりに大変なのが分かってきている
数も多いので

今後どういう方法がいいか並行して考えながら

初期分析に入る時点で
全体の様子が分からないと目処が立てられない

あまり極端にスケジュールが遅れるのも望ましくない
B室への準備に向かっているところ

Q 媒体不明
A室のヘラの観察も今後も平行して続ける
作業が倍になるが人員の関係からどうか

A 向井
人員は限られる

どんどこどんどこやって間違いがないように
次どうするかは一回開けて見てから考えたい
また裏面も続けるかどうかも

いまはB室を優先
A室にばかり集中するのは

Q NHK
ヘラから回収したあとの作業
小さい粒子の取り扱いが大変で
取り扱えない可能性も出てきた?

A 向井
現状では取り扱えない
マニピュレータもない

Q 新たな設備を追加すれば
できるようになるのか

A その準備をしているところ

電子顕微鏡を見ながら操作できるマニピュレータの技術を
持っているメーカーがいるのでそこと相談しながら
いま作っている

できるとは思うが初めてのことなので

Q B室を開けるまでの手順は

A 最初にやるのは

ひっくりかえしたときに
A室からこぼれないように蓋をして

残りがないように

ネジをロックしているワイヤーがあって…

A 上野
当初から何度かA室を扱って

最初は自由落下でまず調べていて
その後作業していてひっくり返してどうなるか

もともとの蓋を閉めるのでは扱いにくいので
確認できる方法で作業しないといけない

ネジがゆるまないようにワイヤー止めがあるが
それを順番通りにほどかないといけない

A 向井
B室の構造はA室に比べると複雑
それを順番に取っていく

ネジを外すのはこすれる部分が出る
そういうものが影響を出さないように

どんどん人工のものを落としかねない

自由落下はしていなかったような…
最初A室をあけても何もなかったので

A 上野
細かいパウダーのようなものなら落ちてこない
かなり大きなものでないと転がり落ちないだろう

A 向井
一見して大きなものがなかったので
最初は自由落下しなかったような

従来の方法で採取したシャーレもあるので
ちゃんと順番に保管していかないと

サンプルをなくさないように
慎重にやっている

Q 東京新聞
ヘラについた粒子のピックアップについて
ピックアップのあとどうやって保管するのか

A 上野
現在検討中

大きなものは中空の石英の中に封入する予定だったが
小さいものでそれをやると見つからなくなる

配布を前提にするなら何らかの固定が必要
そのあとの分析にあわせて方法を考えないと

一種類の方法で全部をやるのは無理かも
いま検討中

Q ピックアップするには
容器もできないとということか

A 専用の受け皿が必要になる

分析の担当とも相談をしていて
将来の分析に困らないように
材質も含め検討中

Q 赤旗
A室 のこったものに蓋
そこにかなりの部分が残るのか

A 向井
いつかは分析する

A 上野
B室のあとにA室に戻ることはあり得るが
そのまま現状保管することになる

Q そのことで分析上のデメリットは?

A ベストな方法に達しているかどうか分からない
窒素雰囲気の環境に置いておいた方がいいだろうということで

Q 共同通信
B室 開けて見ないとわからないが
最大でどのくらいのものが見つかりそうか
もっとも楽観的なもので見通しは

A 向井
誰も知らないから難しい

期待としては
長時間いたし

でも時間が長いからたくさんあるとは限らない
上がり方とか

弾は出なかったし
表面のレゴリスのサイズ分布にもよる

0.1mmくらいあればいいなとは思うが

Q 最初にCTで1mm以上がなかった
それ以下ということか

A そういう意味ではない
コンタミは2~3mmのものはあった
あの素性はまだ分かっていない

あれがどこから来たかにもよる
いかにもねぇという気はするが即断は避けたい

Q 読売
B室は開けて光学で見るところまでは行く

A 上野
光学顕微鏡で見ることができるサイズは
最初のマニピュレータで取り出す作業を行う

Q ヘラを使うかどうかが検討次第と

A 向井
もともとの予定では
目で見てたくさんありそうなら
自由落下でコンコンと回収
逆さにして落ちてくるものを拾う

あとマニピュレータとか

大きさに応じて
どこかにフローチャートが出ていなかったかな

こういう状況だったこういうフローチャートがある

Q 初期分析
開始の時期の目安は

A 今日の時点ではなんともいえないが
できれば1月になんとかできないものかと

マニピュレータで1つ1つピックアップしたものが60個くらいある
そのうちの何個かは明らかに人工的だが
そういうものもあるので

あまり先延ばしにするのはどうかと思うが
B室を開けてみての判断になる

ーーーー相模原

Q 青木
1500個で大体取り終わった感じか

A 向井
1回目のヘラで1500個
あちこちこすったわけではない

最初のヘラに付いていた粒子
岩石質と思われるものが1,500個

Q 最大の大きさは

A 大半がミクロンオーダー
10ミクロンはいってない

Q B室の状況が公開されるのは来年になってからか

A A室では試行錯誤しながらだったので
A室よりは早くできると思う

Q やり方は同じような手順か

A 開ける手順が全然違う
上下関係が違うし

Q 採取の仕方も変わるか

A ヘラで取るのは最後の手段
中を見ての判断

はやぶさ、そうまでして君は~生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
川口 淳一郎
宝島社
小惑星「はやぶさ」の秘密
的川 泰宣
大和書房

【宣伝】書籍「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業 Vol.2」が発売

私も執筆に加わった書籍「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業 Vol.2」がまもなく発売される。発売日は11月8日(月)の予定で、Amazon.co.jpではすでに予約を受け付けている。

宇宙をつかう くらしが変わる (日本の宇宙産業)
宇宙航空研究開発機構産業連携センター
日経BPコンサルティング

(目次)

・宇宙利用ビジネス最前線

・特集1 「きぼう」が育む日本の新ビジネス

・特集2 ビジネスを革新する地球観測衛星

・特集3 ニュービジネスを創生したGPS衛星

・特別インタビュー 人気漫画『宇宙兄弟』の作者 小山宙哉氏

・特集4 超小型の人工衛星が新たな市場を切り開く

・特集5 地上に舞い降りた宇宙技術

・直言・提言

・主な宇宙利用・機器関連企業一覧

・特別付録 ドキュメント はやぶさ

「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1」に続く第2弾。Vol.1では主にロケットや衛星などのハードウェア技術に注目したが、今度のVol.2では「宇宙利用」というものにフォーカスした。国際宇宙ステーション(ISS)での実験成果やリモートセンシングの応用分野などはもちろん、今後の市場拡大が期待される超小型衛星なども取り上げた。

正直、宇宙利用というテーマは、Vol.1の衛星・ロケットに比べればどうしても見た目は地味だ。「きぼう」での実験にしても、これまでにどんな成果が得られているのかということは、メディアもあまり興味がないのか、詳しく伝えられることは少ない。しかし、画期的な抗インフルエンザ新薬の開発が進んでいるなど、大きな成果も出始めている。

今回、私は担当ページの取材のために、34件ものインタビューを行い、現場の研究者や技術者に話を聞いた。彼らの熱意も誌面から伝わればと思う。

本書の特徴の1つは巻末の「宇宙利用・機器関連企業一覧」だと思うが、これはVol.1の5ページを再掲した上で、Vol.2に関連した企業の分を2ページ追加した。これから宇宙業界への就職を考えている学生などには参考になるだろう。また特別付録「ドキュメント はやぶさ」の最後には、はやぶさ関連企業の一覧も掲載した。こちらも注目だろう。

価格は1,000円。ぜひ手にとってもらえれば幸いだ。

宇宙をつかう くらしが変わる (日本の宇宙産業)
宇宙航空研究開発機構産業連携センター
日経BPコンサルティング

Vol.1もあわせてどうぞ。

宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
日経BP出版センター

はやぶさウィークリーブリーフィング第10回(速報版)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月25日、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。

さあ、ついにこのブリーフィングも10回目だ。すでに回数に意味はなくなってきているので、タイトルにわざわざ入れなくても良いのだが、区別のために一応残しておく。ちなみに来月は、9(火)と29(月)に開催される予定となっている。

今回の出席者は向井利典・JAXA技術参与。いつものように取材メモをそのまま添付する。

ーーーーーーここから
向井

前回電子顕微鏡で直接観察した
現在は採取した微粒子の同定・マッピングを継続

先週
岩石質と判断された微粒子 数百個 800程度

電子顕微鏡でしか見えない微粒子なので
初期分析のための取り扱い
これまで話したように
ナノテク関連の技術者
専門家の英知を結集して検討している
その準備をしている

ーーーーーー
質疑応答

Q 朝日
800個は前よりずいぶん増えたが

A 一部の写真の中にはマークしてないものもあったが
チェックして数はどんどん増える

ルーチン化してきたので
1日100個くらい増える

Q ヘラでなでては電子顕微鏡
何回くらい終わったのか

A 今までやったのは1個だけ
同じ場所を何度かこすっている
何度こすったかは憶えてないが
ヘラは1個

現在 ヘラ 最初なので
ついているものの素性を調べてから次に
いまはついているものを丹念に調べている

以前1週間と言ったが
いまの感じだととても1週間では終わらない
網羅的に調べるには相当時間がかかる

ヘラのついた状態だと分解能を良くできない
いくらルーチン化しても3週間はかかる

Q 3週間というのは1つのヘラという意味か

A その通り
とてつもない時間がかかるので
次にどうするのかは検討中
再度ヘラを使うのか
おおよその素性が分かればB室にいくか
別の場所にいくか

Q A室は何割くらい終わったか

A 2割くらい
前回話したように
回転棟の半分をやっただけ
まだ横のカベもある
3割は終わってない

Q なでた場所は前回の1回から増えてない

A 新たになでることはやっていない

Q 共同通信
以前の話では10月にもB室
遅れそうか

A A室の別の場所をこする作業をするのか
それとも
岩石室以外に
マニピュレータで採取したものは
もう少し大きい
それを電子顕微鏡で見てからB室に行くか

それは判断がいる
NASA側の研究者も含めて次ぎどうするか相談しているが
少なくとも10月中ということはなくなった

Q いつくらいに

A いつまでにということはない
競争相手もいないので

ただ関心も高いので何年も先に引きずるわけにもいかない
いつとは言えないが
今のままのペースだとA室だけで何年もかかる
それはできない

こするという作業は壊している可能性もある
こする場所とこすらない場所を残す
後で調べるために
全ての場所をこすることは考えていない

Q 媒体不明
初期分析は当初は8月とか9月
現時点でも12月以降
このスケジュールはそのままか

A 12月以前ということはないので
12月以降で間違いないw

Q 12月以降というと
12月にも始まるという印象を受けるが

A いまのままではなんとも言えないが
難しいかなという感じ

Q 毎日
粒子の素性
どんな作業をやっているのか

A 電子顕微鏡の写真を見せたが
粒子らしきものが見える
傷なのかどうか紛らわしいものも

1つ1つ成分分析をしている

Q 外さないで?

A 電子顕微鏡でしか見えない粒子なので外せない
初期分析のためには移動しないといけないので
その準備

見ながら操作できるマニピュレータが必要

Q 面白い知見は?

A いろんな岩石があった
人工的なものも混じっている アルミの粉とか
マニピュレータで取ったものはまだ調べてない

Q A室をもう1回か
それともB室か
その判断ポイントは

A それも含めていま検討中

Q NHK
1つめのヘラ
微粒子は800より増えるか

A まだ全体を見ていない
まだ半分も見ていない

Q 素性は
蛍光X線を見るとか?

A そう
帯電の問題とかあるので
電子ビームのエネルギーを低くしている
何ミクロンくらいのものしか見れてない
それでもそのくらいの数

Q 読売
前回 ざっとみたら微粒子が100個くらい
それが800個に増えたのは
解像度を上げたのか

A 同定したのが100個
全部見たわけでない

Q 見ていない部分があって
それで増えているということか

A そう
見たけどアルミだとか
見てないものとか

写真にはマークのついてないものもあった

Q 成分分析
火山灰に比べてどうとか
そこまで見ているのか

A 見ているのもあるかもしれないが
全部ではない

Q 宇宙のものかどうかはともかく
事前に用意したサンプルと比べて
可能性は判断できるのか

A 答えにくい質問
人工的なものもあるし
地球のものもあるし
たまたま調べたのは地球のごく一部
初期分析しないと結論は出せない

Q 読売
マニピュレータ
電子顕微鏡で見る
いまのヘラが終わった後で電子顕微鏡でみて
それからB室にいくかどうか判断するのか

A その予定
いままでマニピュレータで60個くらい
全部見る必要はないと思う
電子顕微鏡で見るということは電子ビームをあてるということ
変質する可能性がある
素性が同じようなら次に行くかということも含めて
現在検討中

先のことはまだ
いま半分も終わってない

一通り見て

心配しているのは
ヘラでこすって人工的なものを出してないか
その確認の上で進まないと
今後に影響がでないように

Q 60個の中に岩石質のものはいくつあるか

A 分からない
でも目が慣れてきた

最初のものにはアルミが多かった
怪しいと思って調べたらやはりアルミ

見るとなると慎重にならないと

Q 媒体不明
岩石質が

A 岩石質が800
アルミやテフロンは除いている

Q どういう物質が含まれているのか

A 定性的な状態なので
具体的な話をすると間違えるといけないので
今日は言えない

元素は何種類かある

Q もっと詳しく
マグネシウムがこれだけとか

A 使っているビームが弱い
鉄があっても見にくい
いまの段階ではあるともないとも言えない

マグネシウムは一部検出されているとか
そういうのはある
しかし定量性はないので
こういうものがあったとは言えない

Q 読売
定量的なものはいいが
なにがあったか

A 定量性がないので言えない

ーーーーーー
囲み(向井氏)

12月に初期分析にまわすのは厳しいと
個人的には思っている

定量性は難しい
初期分析で分かるもの

岩石質というのは
シリコンがあるから分かる

微粒子の数
次回は800よりも増える
操作も慣れてきたので
1日あたりの数が増えてきて

むしろ素性が重要だろう
それはなかなか確認できない

初期分析しないと素性が分からない
いまのペースでいくと

B室を開けるか
A室を続けるか
侃々諤々の議論

B室を開けたときに
A室の微粒子が入る可能性はあるだろう
多少隙間があるので
逆にいま見ている微粒子はB室からきたものかもしれない
A室B室というのは今は意味がない

1/32 スペースクラフトシリーズ No.SP 小惑星探査機 はやぶさ 特別メッキ版 【Amazon.co.jp限定販売】
クリエーター情報なし
青島文化教材社

はやぶさウィークリーブリーフィング第9回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月6日(水)、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。もともとの予定では、来週12日に開催する予定だったのだが、これがまず7日に日程変更(説明者の都合だったらしい)。ところが6日、読売新聞が掲載した記事で大騒ぎとなったために、急遽、同日の夕方に再変更したものだ。

ちなみに、ドタバタの原因となった読売の記事はこちら。

——————————————-
「はやぶさ」に微粒子、地球外物質の可能性

 6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の試料容器から、地球外物質の可能性がある微粒子数十個が見つかったことが、5日わかった。

 宇宙航空研究開発機構が電子顕微鏡で調べたところ、大きさ0・001ミリ・メートル前後の粒子の中に、これまでに容器内から見つかっている地球のちりやアルミ粉などとは、成分の特徴が異なるものがあったという。

 はやぶさは小惑星イトカワに着陸した際、試料採取装置がうまく作動しなかった。これまで0・01ミリ・メートル程度まで見える光学顕微鏡で分析してきたが、試料容器内に地球外物質とみられるものは発見できなかった。そこで、特殊なヘラを使って微粒子を集め、電子顕微鏡で粒子の形状と成分などを確かめる作業を続けていた。
——————————————-

私はこの日、別件で相模原キャンパスにいたのだが、お知らせに気が付かず、町田まで帰りかけたところで、急遽戻って来た。なので、主会場(JAXA東京事務所)の様子は分からないのだが、マイコミの小林記者によると、テレビ局が5社もカメラを出してきていて、記者席も満員御礼だったとか。

会見の出席者は、上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。以下に、会見の取材メモをそのまま添付する。発言をそのまま書き起こしているので、文章にするとちょっと読みにくいのだが、書き直すのも面倒なので我慢していただきたい。

ーーーーーーーーーー
前回お話したときに
電子顕微鏡で観察すると伝えていた

それが予定通り行うことができて
一部
今日はできるだけ正確にお伝えしたい

現在まで行ったことは
先週後半から電子顕微鏡での観察
新しいヘラを使って
サンプルキャッチャーA室の側面を
サンプルの回収を行って
ヘラのまま電子顕微鏡に持って行って観察をしている状態

その作業が現在進行中

先週末から今週頭にかけて行った状況で
1回のヘラの作業である程度
まとまった粒子が
光学顕微鏡では見えないサイズの粒子がヘラに付着している
ことが確認されている

前回のときに
ヘラがどんなものかということで
質問が出ていたので
後ほど画像が提供されると思うが
これがまさにサンプルキャッチャーの中を
ぬぐい取るような形で側面からサンプルを回収するために作った
新しいテフロンのヘラ

このままでは扱えない状態
左の端に部品がついていて
ロッドの部分につけて
それを中に突っ込んで側面をこすり取る

下についているのが見えにくいがスケールが

全体の大きさとしては
ヘラの先の長さが6mm 幅が3mm強
サンプルキャッチャー内でこれを使って作業を行っている

現在電子顕微鏡のデータには解析をしているところ
一部電子顕微鏡の画像が間に合うなら出したいと思っていたが
個々問い合わせいただいた方に画像を提供できるように
頑張ると伝えたところもあるかもしれないが
今日ギリギリ間に合わない状況

画像については次回の定例会までだと
ちょっと長すぎるので一両日中には画像を準備して
適用できるように考えている

今日の試験ではまだ出せる状況まで行かなかった
明日明後日には皆さんに提供できる
説明とともに準備しているところ

(10/8追記)電子顕微鏡の画像が公開された

オリジナルの画像

JAXAによる説明

作業自身は淡々と続いているというのが現在の状況

大筋ではこういうところ

ーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
電子顕微鏡で見てどんなことが言えるのか

A 電子顕微鏡のいいところは
光学顕微鏡では見えなかったサイズのものまで確認できること

光学顕微鏡だと10ミクロンくらいまでしか見えないが
電子顕微鏡だと1ミクロン以下のものまで確認できているので
そういう意味では非常に数がいままでに比べると
ヘラの上にたくさん付着していることが確認できている

数の上ではだいたい今回採取した範囲で概ね100個くらいの粒子が見えている
正確な数は現在確認中だが
おおまかにいうと100個くらいが1つのヘラの上で確認できている

Q それを見てどうだった
イトカワのものかどうか

A 現在、形状は確認できているが
小さい粒子になると形状はほとんど粒状のものになってしまうので
形状だけでどういうものかを断定するような情報までは得られていない

最終的には可能な限りの粒子を初期分析の結果を見て判断せざるを得ない
という風に我々は考えている

Q 媒体不明
ヘラですくったのはヘラ1個分?

A ヘラ1個分の作業がいま終わりつつあるところ

Q ヘラは新しいものを使ってどんどんすくっていくのか

A 1個とってそれを電子顕微鏡で
結構時間がかかる
ヘラは小さいが一度に見える範囲はさらに狭い
順番になめていくのに結構時間がかかる
それを現在なめている状態

Q それで何回くらいなめるのか
A室をフォローするのに

A ぬぐいとった範囲は全体の
大ざっぱに言うと1/10くらい

そういう意味では10回くらいで
はける部分とはけない部分はあるが
10回くらいで終わるだろうと

できれば将来よい方法が見つかるかもしれないので
全部の部分をこの方法で採取することはしない
ある程度の範囲をこれでやって
どこかはそのままの状態で将来に備えて保持する

そう言う意味では10回は多分やらない

Q 電子顕微鏡で見ると形状がほとんど粒状
電子線を当てると元素のおおまかな組成が見えるし
そこが初期分析にまわすかどうか線引きになる

元素の組成で見て初期分析にまわすに値すると判断できるのは
今回の100のうちのどのくらいか

A そこまできちんとはけてないのが現状
確かに大まかには
正確に計ることはできないが
ここについているものが
ここの中から出てきたアルミの粉とか人工的なものかどうかという
荒っぽい分解はこれからできると思う

ただ現時点ではなんとも言えないし
多分見えてくるものも元素構成だけのレベルでいうと
地上のものじゃないというのはなかなか難しいだろうなと思う
それだけでは

地上でわりとありふれたもので
ほとんどの宇宙のダストも構成されているはず

明らかにこれは混入物じゃないかどうか
例えば金属片とかじゃないよということくらいは分かると思うが
そこから先に踏み込めるかというとなかなかそれは難しい

そこに入っている成分は分かるが
それがどういう結晶構造になっているかが分からない
これだけでは

同位体比もこれだけでは全く分からない
それが初期分析で分かるまではなんとも
判断できる形にはならない

Q 初期分析にどのくらいまわすか
まだ今の段階では言いにくいという話
明らかに金属片だと分かるようなものか
明らかに地球だとか
分析する価値がないもの
ヘラ1回で1/10
全体はやらないと

700個とか800個は初期分析で回すことになるのか

A 現時点では分析にまわさないと分からない
分からない粒子は回さざるを得ない

ただ1つ問題なのは
今回見ている粒子
ほとんどが光学顕微鏡では見えないサイズ
分析自身はこのサイズでもできることになっているが
実際にはヘラの上から
どうやって分離して初期分析のチームに渡すか

これからの課題として残っている

光学顕微鏡で見えないものをどうやって受け渡すか

Q 日経新聞
電子顕微鏡 1マイクロとかを確認した
イトカワの粒子の存在価値
1マイクロ以下とかのサイズになっても
イトカワ由来のものが発見されると
太陽系の起源の解明に役立つ?

A 多分数ミクロンくらいあれば
同位体比の計測まではできるはず

そうするとまず地球由来かどうかそこで確認したい

どこまでいけるか分からないが
それらの粒子ができた環境温度などの記録が残っているような
同位体比が見えれば非常に面白いと思う

どこまでできるかはこれからの作業

Q NHK
これまで光学顕微鏡で見つかっていた数十粒
それとは特徴が多少異なるものが電子顕微鏡で見つかったという話が出ているが
どう特徴が異なるのか

A 特徴が異なるということは我々からは言っていない
いままでは光学顕微鏡で見ただけの判断で
顕微鏡で見た場合でも
我々の置かれた状況を正直に言うと
顕微鏡写真の外観だけで判断するのは非常に難しい
現実的には

これが本当に地球由来なのか地球外由来なのか
画像だけで判断するのが難しいというのが
今回ヘラにのった電子顕微鏡でいま観測を続けていて感じていること

今までも明らかに地球由来じゃないか
大半がそうじゃないかと思われるような見方もあったが
どうも見た目だけで判断するのは非常に難しいなというのが
正直な我々の感想

そう言う意味では
これからきちんとした分析を早く結果が出てくるのを期待する

Q 外観で難しいのであれば
何らかの他の情報があって
今までの微粒子とちょっと違うような気がすると
言っていると思うがそれは何か

A 明らかに金属片みたいなものは
なんとなく見た目で分かる

そういう見た目で明確に違うよというのが
もはや判断できない世界に入ってきているので
そうなると地球由来も地球外由来とも
これだけでは判別つかない領域のものを扱っている

Q 日経サイエンス
初期分析にかかるのは従来通り12月か

A 現在A室のヘラを使った作業をやっている
全部はやらない予定だが
大体やってみて
先週末から初めて
1回ヘラをやって
顕微鏡で走査するのに1週間近いサイクルがかかる

4~5回やると今から1月くらいこの作業をやらないと
目処が立たない

それが終わるとうまくいけば
今月末からB室に行きたいと思っている

B室がある程度様子が見えた時点で
初期分析は当初から15%くらいと言っていたので
全体の15%はこれくらいと推定して
それができた時点で初期分析にまわす

Q スプリング8で見ようというのは12月以降?

A それぞれ初期分析のチームが
共同研究のような形で確保されているので
スプリング8の稼働時間を確認してない

全部をスプリング8でするというわけではなくて
いろんな解析の形が用意されている
その1つがスプリング8を使った分析ということ

Q 毎日新聞
100粒みつかったうち
明らかに金属片とか地球由来のほこりとかはどのくらい

A 全部がスキャンできているわけではない
100というのも端からみた感じで100くらいだねと見えてきた
全体が分かるのはもう1日くらいかかる
そのうちのいくつかというのは難しい
もう数日欲しいところ

Q 共同通信
100個が見えているという話だが

A 分解能が悪い画像で
あらっぽく見るとそのくらいが見えるということ
1個1個数えたわけではない

Q 今回の1ヘラ分を全部見たのか

A 大きくは見ている

Q 100というのは今回の1ヘラ分のことか

A その通り

Q 写真は撮っている?

A 撮ってはいるが解析中
いま処理中まさに

Q 明後日の名古屋に間に合わせるつもり?

A 間に合わせたい
それにあわせて皆さんに提供したい

Q 写真には解析が必要なのか

A いろいろ調整しないと見やすい状態にならない

Q 100見えたというと見えているわけだから
そのまま出していただければこちらとしてもありがたい

A 調整段階で大まかに見たもので
あと1~2日あれば皆さんにお見せできると思うが
今日は間に合わない

Q 100粒というのは数えられるような状況の画があるということ?

A あまりきちんと見えていないが
部分的には見えているものがある

Q ニッポン放送
今回の状況は地球外物質のものが見つかる可能性として
可能性がこれまでよりも高まったのか
正直言って喜んでいい話なのか
喜ぶのはまだ早いという話なのか

A それは難しい
我々としては可能性をどうこういう根拠がまだ得られていない
まだ何とも言えない
小さい粒子が非常にたくさんあることが見えてきた
そういう意味でチャンスは若干広がったという気はする

Q 産経新聞
現在までにみつかった微粒子は全部で何個?

A 今まで光学顕微鏡を使って
マニピュレータの針で採取したのが大体60弱くらいあった
それに加えて
前回のヘラにも微粒子が載っているだろうが
光学顕微鏡で見える範囲のものは拾って
もし電子顕微鏡で見えるのがあれば見えるだろうが

確認された量としては前回の60弱に加えて
今回のまだ正確な数が言える状態じゃないが
100くらい増えた

Q 160個くらいか

A 確認されたものとしてはそのくらい

Q 大きさは1~10マイクロか

A 今回も光学顕微鏡で見える粒子が数個あった
それは先に拾っている
その後電子顕微鏡に持って行った

Q 160個の分布としては

A 小さいものの方がもちろん数としては大きい

1ミクロン以下のものがかなりたくさん含まれている

Q 大きいものは10ミクロン

A そのくらい

Q すでに初期分析にまわす候補の微粒子はあったか?

A まだじつはどれをとはまだ決めていないそこまで

Q 媒体不明
15%を初期分析に回すというのは
A室が終わった段階でその中から15%まわすのか

A 全体で15%というのが最初の約束だった
B室の数の予想が付いたときに15%の数量はこのくらいと決めて
厳密に15である必要はないが

Q サンプルの回収はA室B室が全部終わってから初期分析?

A 全部を終わらせる必要はない
B室で入っている量が推定できた時点で初期分析にまわせる地点

Q ヘラで全体の1/10をやってざっと100個
これは予想にくらべてどうなのか
多いのか少ないのか

A どのくらいA室に入っているか予想が付かないところがあった
びっくりする量ではないとは思うが
どういう状況下わからない状況でスタートしているので
こんなものかなという感想

もしかしたらB室はもうちょっと入っていればいいと期待はしている

Q 媒体未定
100個+60弱 これについては地球のものと断定できないものも
含まれているのか

A 感想としては
現在のところ明確にはじけるものはそう多くないという気がしている

可能性があるものはなるべく初期分析にまわす

Q 一定の割合で初期分析に回す候補は含まれる?

A 必ずあるだろう

Q NHK
同位体比がわかれば温度が分かるのはなぜ
スプリング8以外ではどんな計測装置があるのか

A 予定しているものは幅広い範囲に及んでいる
1つには全体の個々の粒子の構造が分からない
粒子をスライスして透過型の電子顕微鏡で見てやると
それぞれの粒子の中でどんな結晶が作られているか

構造が見えるとどんな環境で作られたかというのが
結晶構造からある程度見えてくる

太陽系の星雲がどのくらいの温度でできたか
一部の同位体以上が起きると予想されている
例えば酸素の同位体異常が見えると
どんな温度環境でチリが少ないかを予想できる

一部の分析は破壊的な分析になる
一部をスライスして蒸発させてガス成分を調べることも計画

そしてスプリング8を使った同位体分析というのも計画には含まれている

Q ニュートンプレス
B室に入るのはすると1カ月くらい?

A そう

Q そこでも光学顕微鏡+電子顕微鏡の観察を行う?

A まず一番最初は大きな粒子がないか
光学観察から入る
もし大きな粒子がたくさんあればマニピュレータで
回収を始めると思う

それがもしなかったら、A室みたいに多くないとなると
ヘラによる作業に早めに移るかもしれない

もしB室の方がA室とちょっと様子が違ってものがあると
いう場合には可能な限りは披露という形をとる

Q 電子顕微鏡での走査
当初から予定されていたもの?

A 電子顕微鏡にヘラを持って行くというのは
オリジナルでは予定していなかった

当初は拾えるものを拾って作業を進めていく予定だったが
比較的小さな粒子を扱わないといけないとなったので
今回ようなことになっている

Q どれを初期分析にまわすか
かさとやりかたとか決めていくんだろうが
多様な分析をやるにはどういうサンプルがどのくらい
取れたかによってどういう順番で何をやっていこうかと

分析チームの方で段取ることになっている

その後の話し合いは
内容的にはB室を見てあらましが分かってからか

A その時点で全体の戦略をそこで集まってもらって議論する予定
B室の様子が分かる前にはなかなか議論はしにくいが

Q 課題といっていたが
マニピュレータで取って石英の入れ物に入れて分析にまわす
これはある程度の大きさを年頭に置いたもの

今回ヘラから移すのもはばかられるような小さなものなので
ヘラにのせたまま電子顕微鏡
これを運ぶとなるとパッケージするのかという議論もあると思うが
そのあたりはどちらが決めるのか

初期分析チームが優先か?

A お互い希望は聞くが最終的にはこちらが最終判断
電子顕微鏡が走査できるような方法がないか検討中

いずれにしても非常に小さいものをガラスに封入すると
それを受け取った人はどこにあるのか絶対に分からない

この方法では実際に受け渡しができない
何かに固定した状態で渡さざるを得ない
そうしないと失われてしまう

Q 媒体不明
電子顕微鏡で見るときは窒素雰囲気か

A 若干圧力を下げた状態で測定している

Q 粒をヘラでとるときは

A 汚染が起こった場合
確認できるように
我々は限られた材料しか扱わない
確認するとすぐにわかるはず

Q 初期分析
ある程度見込みのあるものが欲しい
なんだか良く分からないものをもらっても困る
しかし明らかに除外できるものが予想外に多い

初期分析を引き受ける先生の希望とJAXAに温度差があるのでは
何を線引きに初期分析にまわすかどうか

A 難しいが
ある程度の数はどうせ渡せると思う
それからどういう形で優先度をつけて
分析してもらうかというのは
そちらでも判断がつく部分があるだろう

ある程度の数はそれぞれに行くのでは

Q フジテレビ
スプリング8にまわして
どのくらいで結果が出るのか

A スプリング8の運転時間が
どれくらいの時間アサインされているのか私も確認していないが
もし何か分かるものがあれば比較的それほど時間はかからないのでは

年単位かかることは絶対にない
何カ月のオーダーである程度目処がでるのではと期待している

ーーーーーーーーーーー
囲みでの上野氏の発言(byマイコミ小林記者←いつもありがとう)

地球外なのかどうかは今のところ判別つかないというのが正直なところ。最初の時、金属片っぽいのが大きいのがあったので、それが先入観になっていたのはある。今は、それが金属片以外のものに関しては、どっちかの判断は付かない状況。初期分析に回す前に、組成比較とかできないので、なおさら。

火山灰とか、砂漠の元素とかはJAXAで比較してから初期分析に出したいが、全部にやろうと思うと膨大な時間がかかるので、初期分析に出すタイミングが遅くなるので、そこまではするかどうかは怪しい。

電子顕微鏡のスペクトラムについては今データをまとめているところ。中の粒子がどう並んでいるかはスライスしてみないとわからない。断定できない粒子が増えたというところ。ただし、大きいものとかも分析はしていない。

量が増えたということで、地球外物質の可能性が増えたといえる。それ以外の理由で、そういうことはない。ここまで来ると、組成は地球の内外で大して変わらない。構造とかを調べてみないとなんともいえない。

12月から初期分析をスタートした場合でも、少しでも早く結果を公表したいとは思っているが、なんともいえないのが正直なところ。100個のうち、明らかに地球のもの、という判断にももうちょっと時間がかかる。今週中とかは無理だと思う。

ーーーーーーーーーーー以上

前述の読売の記事、「すわイトカワの微粒子を発見か?」と思ってしまいそうな書き方だが、良く注意して読んでみると、「地球外物質の『可能性がある』微粒子」と書いてあるように、まだ何も断定はできていない。

地球のものと断定できない限りは、地球外物質の可能性があるのは当たり前。また電子顕微鏡を使えば、これまで光学顕微鏡で見えていなかった粒子が多数見つかるのも当たり前だ。サイズも1桁違うんだから、特徴だって違うだろう。この記事は、当たり前のことを書いているにすぎない。結局は、初期分析にまわさない限り、何も断定はできないのだ。これは今まで何度も説明されていること。

それにしても、と思うのだ。書き方でうまく逃げてはいるが、メディアには何よりも、分かりやすく伝える使命があるはずだ(しかも「成分の特徴が異なるものがあった」という部分は完全に誤報だ)。そういう書き方をしておいて、「アンタが勝手に誤解したんでしょ」という態度はどうなのよ。読売新聞、というか、これを書いた記者には深く反省してもらいたい。

はやぶさウィークリーブリーフィング第8回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月27日、「はやぶさ」カプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。私は某所でやっていたインタビューが長引いてしまい、出席することができなかったのだが、マイコミジャーナルの小林記者が取材していたので、今回もそのままメモをもらって掲載する。

出席者は向井利典・JAXA技術参与。

ーーーーーーーここから

大きな変化はない。継続してマニピュレータで試料の回収をしている。

前回準備中と言っていた新たに作ったヘラを使って回収を試みた。
光学顕微鏡とかマニピュレータでは回収が難しいミクロンサイズの試料を直接電子顕微鏡で観察するために作ったもの。

今は、その前に光学顕微鏡で状況のチェックをしているところ。

それから継続して、極微粒子をどう扱うかを専門家、ナノテク関連のエンジニアなども交えて検討している。

だいたいこんな感じ。新しいところでいえば、試料を新しいヘラで回収を行ったということかな。

ーーーーーーー
質疑応答

Q 媒体不明
新しいヘラを使って電子顕微鏡で見てる?

A 見てない。電子顕微鏡の前に光学顕微鏡を使って、形などを確認。場合によっては(光学顕微鏡で見れる程度の)大きなものとかもあるのが確認されている。

Q 今やっている方法はうまく行っている

A かなりの数を回収できている。光学顕微鏡で確認しただけだが、大きなものもあった。

Q その中でこれはと思うものは

A それは言いたいが、なかなかね

Q 毎日新聞
ヘラの作業はすべて終わった?

A まだごく一部。前に見せたが、キャッチャの円筒形のアルミの台の半分をすくった程度。

Q 回転台の奥のほうなどは

A まだまだ。ヘラですくうのも難しいかも。

Q ヘラは何個くらい用意しているのか

A 数は知らないが沢山作っている。ヘラに何が付いているか、今の技術で見えない微粒子があったら大変なので、ヘラは保存するようにしている。

Q 東京新聞
今後の予定。B室には

A なんとも言えない。A室をヘラですくって試してみたくらいなので、次にいくためには、ヘラですくったのを電子顕微鏡で見て、状況を判断してから。一回やるのに一週間程度はかかるので、ルーチンになれば早くなるかもしれないが、10月の半ばくらいになると思う。想定外のことが起きれば、より遅くなる。

Q 共同通信
ヘラごと初期分析に回る可能性は

A それはない。電子顕微鏡で見た場合、微粒子が存在したら、それを扱うためには電子顕微鏡で見ながら行わないといけない。

Q 今の段階でイトカワ由来と断定するのは難しい?

A 断定はできないけど、初期分析に回す価値のあるものについては、ピックアップして回す。初期分析に回すためには大気汚染を避けないといけない。特殊な石英の台などにおいて持っていくしかない。電子顕微鏡の中で、そうしたやり方を決めないといけない。そこら辺のやり方も検討している。

Q ヘラ全体を顕微鏡で見て、これは、というものをピックアップして初期分析に回す?

A 直接観測する意味は、これまで回収したものの大半がどうも人工的っぽいということで、これを一個一個ピックアップするのは時間の無駄ということで、対処法として考えられたもの。

Q 媒体不明
ヘラを何回すくえばB室に到達する?

A 何回かは難しい。同じ場所でも複数こすってる。そのこすり方が良いかどうかは分からないが、ヘラの両面でもこすっている。何回か行っているということは、同じ場所に重なっている場合もある。それらを電子顕微鏡で見て、次のアクションを決めようと。まだごく一部しかとっていない状況なので、何週間かはかかる

Q 何をもってB室に移るのか

A グッドクエスチョン。難しい問題だが、一応、ヘラですくえる範囲をなめたら、B室かな。それでA室すべてをカバーできたとは思わない。その後、分解作業も待っているので、そこで何か見つかるかもしれない。

Q 媒体不明
A室で使用したヘラの電子顕微鏡へ投入するタイミングは。次回あたりに、そうした話は出るのか

A そうなると思う。そうならないと、10月中旬にB室にいけないだろう。私だけの判断ではできないが、今週中にはやるんじゃないかと。光学顕微鏡で一通り見て電子顕微鏡に行くんじゃないかな。

毎日新聞
Q これまで回収できた粒の数

A 今日時点の正確な数字は把握していないが50数個。経緯を振り返ると、最初にマニピュレータで2個、その後、ヘラで20数個。これはマニピュレータで移動できるものはすべて移動した。その後も、マニピュレータで一個一個移動させているのが、30個程度。で、合計50個程度。次は数百個にならないとニュースにならないかもしれない。

ーーーーーーーーーー
以降、囲みでの話し

Q ヘラの種類は

A 2種類。5mm×1cm。円筒部をこすれるものと、平坦部をこするもの。

Q ヘラのイメージは

A 次回までに何か用意するよう伝えておきます。

Q 初期分析の段取りは

A どこかになかったかな。大きさとか数によって変わってくる。結局トータルの量で、例えば有機分析なんかは、有機溶媒に浸して溶けてきたものをクロマトグラフで分析。数が少ないと、蒸発させてガス化させてしまうので、粒子を駄目にしてしまう。中性子を使った分析も放射化してしまうので、次に使えない。

Q 次回までに、電子顕微鏡で見た後に、初期分析に回したという話はでるのか

A それはない。B室に沢山あれば、話は別だが。

Q 五月雨式ではなく、A、Bと見て、ある程度数が揃って初期分析に回す?

A もともと15%と言っていたのは、その数を国際的に公表して、公募を行う予定。スターダストの例を見ても、何回かの募集がある。初期分析は、こういった面白そうなものがあるということを示すためのカタログ作り。もしかしたら、それで終わってしまうかもしれないけど。

Q 15%の根拠

A NASAとのMOU(覚書)の中に入っていたような気がする。NASAには別に10%を回すんだったかな。あの頃は宇宙科学研究所とNASAの間だったかな。宇宙科学研究所は国立の研究所だった。JAXAになると多少簡単になるかな。

Q MOUで15%ということは、地球上物質でも15%に含まれるのか?

A できるだけ、そうしたものは省きたい。初期分析でイトカワ起源のものがなかったら、公募で募集しても応募がこないでしょう。相模原の電子顕微鏡は恐らく、世界的に見てもクリーン。コンタミ防止の手法とか色々やってる。聞いた話で、スターダストで電子顕微鏡にかけると、表面が汚染されていて、次の作業に支障が出たらしい。スターダストもまだかなりの作業が残っている。そういうこともあって、我々も新調して、今回と同じような条件とかもっと厳しい条件などで検査して、有機分析する方に回してみて、問題ないという回答も得ているので、明らかに地球起源の人工のものを、除くためには、電子顕微鏡で見て作業しないと。

Q 今のところ、ヘラで取り尽くせている?

A どうだろう。見たところ、表面はつるつるしているが、光学顕微鏡で見ると凸凹していて、傷が沢山ある。マニピュレータだと、それを動かしに行って、動くようなら粒子で動かなければ傷だと判断していた。

Q 次回にはB室に移るタイミングが分かってる

A なんとも言えないが、私としても目処をつけて欲しいなというのはある。

Q シャーレの上の粒子でいらないものを選別するのか

A いらないかどうかは分からない。ただ、回収するときに削れた金属の粉なども沢山あると思う。電子顕微鏡で見ると、主要元素は分かる。以前話しているが、一部試してみたこともある。アルミは除外すると思うが、逆に初期分析に回すものは、一個一個ピックアップしてアルミではないことを確認していないといけないよね。

Q ヘラそのものを電子顕微鏡で見てる

A 見てる。だからといって、地球外かどうかの断定は難しい

Q 必ずしも地球のものとは言えないものが見つかったといえるのか

A 誘導尋問だな(笑)。宇宙で捕らえたといって、どこでかとなったら、イトカワ以外にはないわけで。そういった意味ではかなり神経質にやっている。

Q 初期分析に回る候補は

A 地球のものかもしれないし、地球外のものかもしれない。そこの断定は非常に難しい。初期分析してみるまで分からないわけだし。

Q 金属の粉かどうかの判定は

A 電子顕微鏡で見てみないと分からない。

Q 回収した微粒子を電子顕微鏡で見るのを優先することはできないのか

A 何を優先させるか。電子顕微鏡で作業をしていると、回収はできない。パラレルに出来ない。

Q 初期分析にすべて回すのか

A 数十ミクロンのサイズのものもあるが、それは回さない。それを回すと、国際公募に回すのがなくなる。NASAも元々何gという想定だったが、10μmのもので、1ngという重量。今の状況だと、15%とかの比率は無視して、実行部隊で決めて良いという話になっていて、はやぶさのジョイントサイエンスチーム内で、色々な人が混ざって話すことになる。

Q 次回、電子顕微鏡では見るけど、初期分析に回るということはない?

A ない。初期分析は12月を予定している。B室も見てみないことにはなんともいえない。全部は見なくても良いけど、おおよその量の把握ができないと、次の話にいけない。

小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡
的川 泰宣
PHP研究所

小惑星探査機 はやぶさの大冒険
山根 一眞
マガジンハウス
1 7 8 9 10 11 19