あかつき記者向けブリーフィング

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月18日、金星探査機「あかつき」の運用状況について、記者向けの説明会を開催した。金星周回軌道への投入計画なども詳細が明らかになった。

登壇者は、プロジェクトマネージャの中村正人教授と、システムエンジニアリング担当の廣瀬史子氏(ともにJAXA/ISAS)。以下に配布資料と、若干の補足を掲載する。


運用状況の概要。説明は不要だろう。


飛行計画と実績の比較。ロケットの投入精度が高かったために、探査機側の初期軌道修正が不要になった。


探査機の分離画像。中央上にが見えるが、これは「黒い点を打ったら印刷でこうなってしまった」とのこと。どうせオリジナルの画像も公開されているのだが、良く見ると白い点が写っている。何かが一緒に分離されて飛んでいったらしいが、散々調べても特に探査機から外れたものは見つからず、「特段支障はない」という結論になったようだ。


打ち上げ後の初期軌道修正が不要になったおかげで試験撮影ができた。


あかつきには世界で初めてセラミック製のスラスタが搭載された。従来の金属製スラスタでは特殊なコーティングが必要で、そのために海外に運んでいたが、セラミックスラスタではその工程は不要。ちなみにセラミックは京セラ製だ。


航行中の運用。金星周回軌道への投入精度を高めるために、7月は探査機の姿勢を固定して外力の大きさを精密に計測した。8月は再生測距方式のトランスポンダの精度を検証。これは新規開発して搭載したもので、従来は地上からの電波をそのまま送り返していたが、再生測距方式ではノイズを除去してから送り返す。これによって測距の精度が向上するそうで、現在評価を行っているところだ。9~10月については以降のスライドで説明。


2つのカメラ(UVIとIR1)で同じ方向(射手座)を撮影することで、アライメントを確認した。


さらに4つのカメラ(UVI/IR1/IR2/LIR)で地球を撮影してアライメントを確認。ちなみに10月まで実施しなかったのは、IR2の冷凍機を起動する電力が不足していたからだ。太陽に近くなったことで、電力事情が改善された。


ハイゲインアンテナを地球に向けていると、地球を追い越したときに、今までと太陽が当たる面が逆になる。カメラ面に太陽光が当たると困るので、向きを逆にするのだ。普通に180℃回転せずに、途中がややこしくなっているのは、安全のために一旦カメラ面を日陰側(地球側)に待避しているからだ。


ヤマ場となる周回軌道投入。軌道制御エンジン(OME)による噴射で減速して、4日周期の周回軌道に投入する。詳しくは以下の質疑応答を参照。


近金点高度が300kmとあるが、最新の計画では550kmになっている。

以下は質疑応答。

Q 時事通信
軌道投入計画の確認
周回軌道の近金点と遠金点は

A 広瀬
近金点は550kmが目標
遠金点は
周期4日の場合が18~20万km
周期2日の場合は10~12万km
周期30時間の場合は8万km

Q 1回目の噴射で軌道に入ったかどうか
分かるのは通信再開後か

A 軌道制御誤差
ドップラーで確認できるか
いま詳細解析をしている

通信が再開した瞬間には分からない
はっきり分かるのは10数時間後程度になる

A 中村
日本だけでなくて
NASAの局も動員するので
3角測量なので

NASAのデータが入ってきて
日本のデータも揃えて
こういう軌道に入っているよと
確定するのが21時としている

Q NHK 室山
最初の観測
見て分かる最初の情報はいつになるのか

A 中村
まだ議論しているところ
まず軌道に入れるのが重要
そのためにエンジンの向きが制限される
カメラは金星に向けないと撮影できない

その姿勢に持って行くかどうか

30時間の軌道に落ち着いてもう大丈夫だと
これで衛星の姿勢を変えても大丈夫だと
我々技術陣が確信したところで金星に向ける

それまでにたまたま金星にカメラが向くチャンスがあれば
撮ることはあるかもしれない

Q 大体いつくらいになりそうか

A 12/13に入るので
学会発表が16日なので
それまでには撮って欲しいw

Q 赤旗
地球までの交信にかかる時間

A 広瀬
6,300万km
片道215秒程度かかる

Q 読売
VOIは3回実施するのか

A 中村
そう

Q 初の日陰でどんなことが予想されるのか

A 太陽電池からの出力が途絶える
バッテリ運用
電力系が初めてそういう状況に入る
いままで陰に入ったことがない

衛星の温度がどんどん下がるので
バッテリで各機能を維持しながら
ヒーターで温めながら運用する

Q 東京新聞
OMEの噴射コマンドはどういう形で送っておくのか
3回の軌道修正のあとにファーストショット
科学観測の開始はいつからと言えるのか

A 広瀬
コマンドは前日に送っておく
タイマーで衛星が実行する

A 中村
サイエンスの観測はファーストショットから始まる

Q カメラの調整はいらないのか

A 調整といっても画像のゆがみは取れないので…

サイエンスデータとして配るのは
補正データを始めるのは数ヶ月先になる
それはやってみないと分からない

Q 産経
周回軌道に投入したというのは21時頃か

A 中村
投入はエンジンを吹いている間なので
8:50~9:01の間だろう

Q 日本の探査機が惑星の周回軌道に投入されるのは
成功すればこれが初めてか

A 惑星という意味ではそう
他の天体では月と小惑星に投入

Q 周回軌道の投入が山場という理由は

A まず全て自動シーケンスで行わないといけない
こっちから何かしようと思っても
電波で215秒
片道3分以上かかるので
何か衛星に異常があったことが分かって電波を送っても
それはかなり手遅れ状態に近い

衛星自身が判断しながら
実行していくのが技術的なチャレンジ

Q 軌道投入のウィンドウはこの11分間か

A ジャストオンタイム
この時間にあわせて軌道制御してきたし
この時間にきちんと12分間吹いてくれないとダメ

しかし実際には噴射が5~10%くらい足りなくても
4日周期じゃなくてもっと遠い周期の軌道に入る可能性はある

その場合は修正マヌーバで4日周期に戻す
それを決定するのが21時まで

Q ワンチャンスなのか

A この時間にエンジンを吹かないと
双曲線軌道でイカロス君とともに通り過ぎる

Q 日経サイエンス
月と地球の写真
2枚で位置が逆に見えるが

A 中村
多分反転している
あとで確認したい

Q 読売
軌道投入の作業が始まるのは8:49か

A 中村
作業そのものは3日前から始めている
温度を上げるとか

その最終仕上げとしてエンジンを吹くのが8:49と

Q 噴射したという確認は
すぐに分かるのか

A そう

Q 720秒間 吹いたかどうか分かるのはいつか
通信再開後すぐに分かるのか

A 衛星全体のデータを取らないといけないので
数時間後になる

Q 日陰に入ったとき
通信そのものは維持されるのか

A 通信は維持される

Q 読売
のぞみのことが頭にあるので
どれくらい噴射すれば
周回軌道に入れたと判断できるのか

A 中村
衛星の姿勢が正しく向いていて正しく吹いていれば
かなりの確度で入っているだろうと思う

ただしのぞみの悪夢がある

のぞみの場合
酸化剤が供給されなくて所定の推力がでなかった

2液ともバルブが開いてちゃんと供給されていることが
確認されないと本当に入ったとは言えない
やはり確認に12時間程度欲しい

確信は段々と強くなると思うが

僕たちの顔を見てなんとなく
ニヤニヤしていたら入っているんだと
思ってもらえればw

Q 地球軌道を横切ったのはいつ

A 記憶では9/1だったと思う

Q 東京新聞
最低どれくらい吹けば金星の重力につかまるのか

A 広瀬
720秒を目標としているが
560秒以上吹ければ大丈夫だと推定している

Q その場合の周期は

A 50日の周期
遠金点は110万km程度になる

Q 日経サイエンス
近金点550kmが正しいとすると
当初は300kmだったのが550kmに変更されたのか
それとも正確に検討したら550kmになったのか

A 中村
300kmに入れれば大気のドラッグがないだろう

大気に触れるとどんどん高度が下がる
300kmを目標にしておけば大丈夫だろうというのが
最初の計画

現在は550kmに入れようと
幅があるので悪くても300kmで留まるだろうと考えている

Q 金星到着前に観測が始まっていると

A 黄道光の撮影をやっている
そこの上野先生が責任者

A 上野
金星到着前に
1~0.7AUの間で
惑星間のチリがどんなふうにあるか光学的に観測

IR2を1.6μのフィルターで観測した
かなり幅広い領域で撮影
データを解析中

Q 解析結果はまだ先か

A 結果はまだ先だが
絵自体はそろそろ出来上がる

Q 探査機の回転
どこがカメラ面か

A 中村
1番の画で左側
5番目になると右側面

太陽電池パドルはクルクル回るので
向きは気にしないで

Q 赤旗
550kmと300km
近い方が詳細にみれると思うが
あとで300kmに変更する可能性はあるか

A 中村
ない
この探査機は主に遠いところでの観測がメイン
近いときは雷の観測

近い方がクローズアップが撮れるのもあるが
近いと早く移動するのでぶれてしまう
ほどほどがいい

Q 読売
観測は何年

A 中村
2年もつようにバッテリを設計している
実際にはもっと持つと思う

Q 大気の厚さは

A どこまで行ってもどんどん薄くなるので言うのは難しい
地球の大気プラス50kmくらい

上はどこというのはなかなか難しい
ISSの高度にも空気はある

Q 現時点ではどのくらいの距離
イカロスの場所は

A 広瀬
地球からあかつきは4,300万km
金星からあかつきは540万km

イカロスはもうちょっと手前だと思う

Q 媒体不明
のぞみのことも踏まえて
意気込みを

A 中村
今度こそは投入するぞとみんな意気込んでいる
リベンジです

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