はやぶさブリーフィング12月第1回
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月13日、「はやぶさ」カプセルのキュレーション作業について、定例のブリーフィングを開催した。上野氏は「あかつき」の方に専念しているということで、出席者は向井利典・JAXA技術参与のみ。期待されているB室をついに開封したそうだ。
いつものように取材メモを添付する。
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向井
前回11/29
B室を開ける準備をしているところで
A室をひっくり返してたくさんの微粒子を採取
光学顕微鏡で見える大きさ
ということを報告した
その後
その素性を調べようとしているところ
初期分析に回せるものがあるかどうか
これまでのところ
20個程度の分析を行った
その結果
半数強は岩石質であろうと同定できたところ
今日公開の写真
B室の開封作業を行った
いまのところ目視検査をしたところ
開封されたB室(C:JAXA)
ルーム2というクリーンチャンバーで作業している
開けた状況の写真
見た限りではA室と同じという印象w
少なくとも肉眼で見た限りざっくざくという感じではなかった
だが見る人が見るとB室の方がなにかありそうだと
それほどドラスティックな状況ではないが
当面はA室でこの前採取された微粒子の
電子顕微鏡による観察を優先させているが
いずれにしてもB室のサンプルの状況を調査する必要がある
初期分析をいつからやるか、どのようにやるかについては
このなかの情報をもう少し掴む必要がある
現在の状況としては以上
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質疑応答
Q 読売
半分強が岩石
電子顕微鏡で見たのか
A 向井
その通り
Q 電子顕微鏡で見て
イトカワのものと言える状況か
A 断定は今日のところは避けたい
輝石とかカンラン石とかの割合
出せる状況にない
比較的大きい
数10ミクロン
ヘラについていたのは数ミクロン
大きさとして10倍
可能性は高いと思っているが
断定は避けたい
Q B室は
最初にひっくり返して叩くのか
A まだ決めてない
まだ調査しないといけないので
まだ目視しただけ
まずは光学顕微鏡で見ようとしているところ
B室の構造はA室に比べて複雑
隅々まではなかなか見れない
A室も傷と粒子の区別が難しかった
まずそういうことから始める
シャーレで蓋をして
反転してというのは早い機会にやると思う
Q 時事通信
写真は開封した直後のものか
A そう
Q 何日に開けたのか
A 先週の7日だと
びっくりするような結果ではなかったので
お知らせは出してないが
Q 共同
A室の20個
岩石質以外はアルミ?
A アルミもあった
ほとんどアルミかもしれない
私はその情報は持っていない
Q 目視でぱっと見たところ
何mm以上のものがないということになるか
A 私の視力だと1mmだが
もっと小さいものも判別できると思う
難しいのは傷があるから
そこにあるかもしれないが
0.1mmのものは肉眼で見えるが
粒子か傷か分からない可能性もある
Q 日経サイエンス
容器の傷はどういうことでできたのか
A 切削傷
旋盤で切ったときの
鏡面仕上げをしていないので
普通の加工で面取りをしている
傷は無数にある
Q 表面にコーティングはないのか
A テフロンのコーティングがある
全部がそうだったか…
回転棟はテフロン加工だが
他の面はアルミの蒸着だったか…
Q 毎日
20個というのはペースとして遅いが
数百個を全部調べていくのか
それともいくつかを優先して調べるのか
A この中で初期分析に回せるものを見極めるのが先決
とりあえずは数10個を判断する
このペースでいくと…
年内に30~40個は候補が見つかると期待している
Q 年明けには初期分析を開始?
A B室の状況も見ないと
数10個見ると全体の比が分かる
期待としては年内に
いつごろやるという目処を付けたい
Q 朝日
前回ひっくり返して数百個
細かい数字は
A まだできていない
ただ2~300個ではなくて
多い方の数百個
アルミの粉みたいのも多いが
比が変わらなければ半分くらいは岩石のはず
Q B室について
まだ決めてないがまず光学顕微鏡で見て
それからひっくり返す方向か
A その方向で考えている
Q 日経
B室を開けて目視でわかる大きなものはなかった
A室のとき 1mm近いものが…
A それはコンテナのフランジのところ
キャッチャーではない
Q あれは分析は?
A まだやっていない
分析もなにもしてないが
あまり本物らしくはない
Q なぜ後回しに?
A あまり本物らしくないからw
初期分析の考え方
いまのような状況だと
全てを見てから初期分析するととんでもなく遅れる
初期分析を何ラウンドかに分けることも考えている
中には0.1mm以上のものもありそうだが
そういったものは非常に貴重なので
いきなり調べるのではなくて
まずは普通のサイズのものをやる方向で
大きいからすぐに分析するかというと
分析すること自身が汚染になる
たくさんあれば別だが
Q 100ミクロンでも分析はできるのか
A 10ミクロンでも数ミクロンでも分析はできる
もちろん大きい方がいいが
Q 想定した大きなものがなかったのは残念?
A 量としては確かに少ない
1mmで大体1mg
0.1mmで大体1μg
10μmで大体1ng
くらい
ただはやぶさは工学実験で
今回のlessons learned(学んだ教訓)を次に活かせればいい
Q 東京新聞
初期分析のメド
はやければ1月中にもできるのか
A 10個ではまだちょっと少ない
もう少し増えないと
今のペースで増やして行ければ可能性は高い
次のブリーフィングのときには何か
メドについては言いたい
Q A室よりはありそうという根拠は
A 私は分からない
見た限り一緒
断定はできないところ
Q NHK
調べた粒の大きさは全て数10ミクロンか
A 数10ミクロンで間違いないが
小さいのは30ミクロンで大きいのは100ミクロン
平均では5~60ミクロンくらいか
Q 岩石質だった10数個
もっと調べて確定的なことが言えるのか
A 調べるのに時間がかかる
数10ミクロンになると
たくさんの粒子が集まったような構造が多い
丹念に調べると大変
それ自体を初期分析にお願いするのが筋
その方が精度も酔い
Q この10数個はすでに初期分析の候補に
なっていると考えていいか
A 今のところはそう考えている
できるだけ典型的なものを初期分析に
Q 年末に向けての作業は
A室とB室のどちらを優先するのか
A 両方
Q 平行して作業できるのか
A 数百個のシャーレから電子顕微鏡のホルダに移す作業と
B室の中の作業は平行できない
同じ部屋なので
だが移した後で電子顕微鏡で見る作業は平行してできる
Q いくつくらいになったら初期分析が始まるのか
A 難しい
岩石質のものがある程度あれば
そういうものの数次第だがどうだろう
まだ決めてないので
私としては30個もあればいろいろできると思う
Q ニッポン放送
B室はA室よりも複雑
それはなぜ
機能的な違いがあるのか
A 機能的な違いはない
構造上複雑にならざるを得なかった
この部分はA室になかったが
A室とB室の仕切り板をA室側で固定している
Q 20個の分析
1個の分析にどのくらい時間がかかるのか
A 分析そのものは20個でも1日
シャーレからホルダに移す作業
静電マニピュレータで移動
その作業が1個あたり1時間かかる
しかもなるべく人工的なものも除いている
Q 24時間で1日?
A いやいや1日数時間
ほかの作業もやっているので
移すだけで数日
電子顕微鏡で見た後に
また確認しないといけない
今週はその作業をやっていた
Q 時事通信
初期分析にまわすのに粒子を固定
方法は解決したのか
A それはどういう分析をするかによる
分析によって決まる
これから決めるが問題ないと思う
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Typo?
貴重なメモをありがとうございます。非常に参考になります。さて、「レッスンズラウンド」とあるのは「Lessons learned (得られた教訓)」でしょうか?
ご指摘ありがとうございます
そうですね。修正しました。