VIA続報、VB8003とNano版のPico

この記事の続報。

VIA Technologiesは、初のTrinityマザーボード「VB8003」の国内発売を10月末に予定している。価格はやはり3万円を超えそうとのことだが、ディスクリートGPUを搭載していたりと、コストのかかる製品だけに、このあたりは仕方のないところ。ただ、IONマザーが1万円台で買える今となっては、マニア向けになってしまうのは避けようもない状況。
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HTVに関するJAXA記者会見(その2)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月25日、HTVに関する記者向けのブリーフィングを開催した。出席者は、佐々木宏・HTVファンクションマネージャ。今回の会見はあっさり終わったので内容は少ないが、前回同様、取材メモをそのまま掲載する。

以下、佐々木氏の発言。

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9/18にISSに結合
それ以降の1週間の作業について報告

9/19に宇宙飛行士が入室
それ以降は順次船内荷物の運び出し
曝露実験装置の取り外し、きぼうへの取り付け
などの作業が行われている

9/18の作業について

午前4:51にISSのロボットアームでHTVを把持
7:26にハーモニーのCBMに取り付け
10:49に電力・通信ラインを接続
結合モードへ入った

9/19~ 船内物資の輸送

9/19午前3:23 与圧部のハッチオープン、入室
宇宙飛行士が日の丸を準備していてくれた(知らなかった)
奥の方に付けてくれた

その日は、与圧部の空気の循環、照明、各種機能のチェック
問題ないことを確認して終了した

9/19午後以降の2日間は宇宙飛行士の休日なので物資の輸送はなし

9/21 ブリーフィング
9/22から順次バッグをISSの所定の位置に移動を開始
現在、スターボード(右側)とAft(後方)の部分の輸送

9/23~24 船外物資の輸送

9/23夕方から作業を開始
曝露パレットを引き出してJEMRMSにハンドオーバー
船外実験プラットフォームに取り付けた

9/24晩 曝露パレットからHREPとSMILESを外して
船外実験プラットフォームに取り付け

今後の予定
曝露実験装置はこれで終わった
あとは船内の残りを順次ISSに移送する

宇宙飛行士の作業の時間割による

今の予定では10月末に全てを運び出して
さらに不必要な廃棄品を与圧部に乗せて
ISSを離脱する

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質疑応答

ー東京

Q Robot Watch
先週以降の作業も順調に見えるが
なにか小さなトラブルはあったのか

A 機器としては全くトラブルはない
温度のテレメトリ
地上で変換するときに
データのフォーマットがずれていて
最初違う温度が示されてびっくりしたとか
ハードウェアと違うところではあった
すぐに対処した
そのくらい

ー筑波

Q 朝日新聞
HTVが接近の時 スラスタの温度
離脱の時には問題は

A 温度の上昇については今データの解析を行っているところ
下からゆっくり接近するときに下向きのスラスタを多く吹く
離脱の時は自然に降りるので、下向きのスラスタは吹かない
それほど問題はないと考えている

しかしある程度吹くと温度が上昇するのは分かっているので、
リエントリやマヌーバのときに問題ないかは
念のためチェックしているところ

高い頻度で吹くと温度が上がる
そこまではならないだろうという見込みだが
念のためチェックしている

—————-

以上。

引き続き、「超」がつくほど順調なようだ。ちなみに、私がいつも「小さなトラブル」について聞くのは、トラブルの大きさを知ることで、順調さがより正確に分かると思うからだ。こんな小さなトラブルしか出てこないということは、極めて順調に進んでいることを意味する。

今後は、リエントリの前後に記者会見が開催される予定。記事をまとめるのは、多分その後になるかなぁ。

HTVに関するJAXA記者会見

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月18日、HTVのISSへの結合成功を受けて、記者会見を開催した。出席者は虎野吉彦・HTVプロジェクトマネージャ。今回は、ちょっと記事にする時間がないので、読みにくいとは思うが、取材メモをそのまま掲載したい。


ISSへ結合されるHTV技術実証機(提供:NASA)

以下、虎野プロマネの発言。

———————–
事実をまず淡々と述べたい

主なところは
ISSの真後ろ5km(AI点)
最終的に接近する出発点だが
AI点を出発したのが0:31

HTVは真っ直ぐ近づくのではなくて、真下に付ける方法をとる
これはATVやプログレスと違うやり方。安全性を重視したやり方だ

真下500mを通過して300m点に到着し、停止したのが1:48

そこでHTVの点検を行った後
30mまで到達するわけだが
300m→30mの間で一度軌道上のデモンストレーション

ISSクルーの指示で300mに戻る(リトリート)
このデモも無事済んだ

30m点に到達したのが3:44

この状態でHTV・ISSの状況を確認して
出発したのが4:05

キャプチャ点 ISS直下10mに到着したのが4:27

ISSと一緒に7.7km/sで飛びながら相対停止

それからロボットアームでHTVをキャプチャしたのが4:51

ロボットアームでISSに結合作業
作業開始が6:41

機械的・電気的な接合・電源の切替・通信ケーブルの結合
全てが終わったのが10:49

ハッチをあけて乗り込むのは
明日の3:20~30あたりを予定している

我々にとって初めての作業で、HTV自身も初めての開発品

しかし予想以上にうまく作業が進んで満足している
小さいトラブルはいくつかあったが
障害になるものではまったくなかった

全く問題なく作業が完了したと報告していい

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質疑応答

Q 読売新聞
明日の予定の確認
3:20は日本時間か

A 日本時間だ

Q 誰が乗り込むのか

A 私は知らない

余談だが、今日は作業があまりにもうまくいったので
宇宙飛行士は今日中に入ろうとした
しかし時間がかかることが分かったので明日にした

Q 早く作業が進んだのは
要因はなにか

A 2つある
HTVとISSに取り付けたPROXなどのハードウェアやソフトウェアが
我々の意図通りの設計だったこと

もう1つは
HTVを運用している筑波のコントロールルーム
彼らの訓練の成果
どう対処するか散々訓練してきた

この2つのおかげだと思う

Q 時事通信
以前から自信はあるといっていたが
実際にキャプチャを見ていてどんな心境
その瞬間はどのように迎えたか

A 運用途中の心境は
一言いいたいのは
私は部下達を信用している
日ごろの努力は見ている
少々のことがあっても乗り切れると信じていた
特に動揺せず平常心で見ていられた

心境
キャプチャされることが最初の大難関と思っていた
ハッキリ言うと安堵した
キャプチャさえしてもらえればあとはクルーの責任w
ちょっと不謹慎ですがw

結合のときに2度目の安堵

まだ5時前 定時内は飲めないが
終わってから酒を飲みたい

ー東京

Q 読売新聞
HTVは有人技術の取得という目的
達成されたと思っているか
今回の成功にどのような意義

A ご希望に添える答えかどうかわからないが
HTVは与圧部があるということで有人対応仕様
これはJEMと同じ設計
そういう意味ではすでにJEMで実績があり
それをサイズダウンして踏襲した

有人仕様というのは1気圧のキャビンがあることだけではなく
さらに重要なのは、3重系を持っていること 少なくとも2重系
このことにより有人施設への接近を許される
有人宇宙機になってもよいということだと思っている

ただ残念ながら人間を長時間いかせるための装置・技術はない
それがないと有人宇宙機にはならない

まだ道半ばだが
今日の成功で安全設計や高信頼性設計の目処は立った

Q ニッポン放送
若田さんが将来は生鮮食料品を運びたいと言っていた
HTVは冷凍や冷蔵設備がつくと可能なのか
目処は

A HTVはトラック
トラックの設計者は生鮮食料品を運ぶためには
早く正確に持って行くことが使命

生鮮のまま維持するのはそれを開発する側の責任
本部の中の有人技術部が頑張って開発している

我々は早く確実に運ぶことに全力を尽くす

Q 2015年までの7機の内にはできるのか?

A できると思う

Q 共同通信
ISSのほかの参加国から何か反応は

A 白木理事や長谷川プログラムマネージャには
NASAやESAから”祝メール”が届いたと聞いている
私には日本人からもたくさん

Q Robot Watch
全体として極めて順調だったように見えるが
細かいエラーやトラブルは何かあったのか

A 大きく言って3つ
(1)SIGIという米国製のGPS受信機
GPSの衛星のデータを受信するのだが
ほっとくと、受信する衛星の数がどんどん減っていくのが分かった
ソフトのバグであった
いちいちリセットしながら使った

(2)ISSとHTVの間のPROXリンク 電波リンクが確保できたとき
テレメータが降りてくるが
こちらからのコマンドを最初受け付けてくれなかった
暗号化のキーをこちらと実際のが違った
キーをあわせて大丈夫だった
事前の手順の設定がよろしくなかった
大した問題ではない

(3)真下500mから10mへじりじり這い上っていくとき
一部のスラスタをパルス状にたくさん長く吹く必要があるが
スラスタのバルブの温度が許容値ギリギリになってきた
主系から一時冗長系に切り替えて
冗長系を使っている間に主系の温度を下げて
主系に戻して近づいた

Q 産経新聞
今後の係留中の課題、注意点は

A 宇宙飛行士の安全を気にする必要がある
1つの例は火災
検知する機能はついている
消す装置もついているので心配はしていない

クルーは経験を積んでいるので
心配はしていない

荷物の出し入れ
地上ではうまく積み込めたので
宇宙でも大丈夫だと思うが
出し入れの時に注意して
手を挟んだりしないで欲しい

Q デブリの心配は

A デブリバンパーを付けているので
ある大きさ以下ならぶつかっても大丈夫
ある大きさ以上ならISSが回避マヌーバをうつ

Q 朝日新聞
3点のトラブルについて
暗号化キーはいいとして
SIGIとスラスタなど
今後の運用機で設計の変更はあるのか

A SIGIはうまく乗り切れる運用方法が発見されているので
このまま使いたい
ほかのものに変えるとなると結構な開発期間とお金を要する
運用で簡単に乗り切れるのでこのまま行きたい

スラスタは
今回は初号機なのでいろんな試験をしながら近づいた
スラスタを酷使した
次回からは試験なしに極力早く行くので
今回のような厳しいスラスタの使い方はしない
今回のような温度の上昇はないだろう

Q 300m→10mの間のデモ
デモをやめたと聞いていたが
やっぱりやったのか

A やった
スラスタの温度が上がったので
当初の長いデモはやらなかったが
デモはやって問題ないことを確認した

Q 日刊工業
来年の運用機の開発に向けて改良点はなにかあるのか

A 今日現在まで分かっているところ
ソフトを少しいじる程度

ハードウェアの変更は必要ない

思ったより推進剤や電力を使わなかった
2号機以降は推進剤の搭載が少なくてすむかも
バッテリに至ってはさらに少なくなりそう

荷物をもしかしたら計画よりも多く搭載できるかもと
皮算用している

ーヒューストン

Q 朝日新聞
リエントリについての自信は

A 11日の打上げ以降
HTVの飛行管制の結果を見ると
予想通りに動いている
問題なく予定海域に落とせると自信を持っている

Q 2015年までに7機
シャトルが延命したときに、飛行計画への影響は

A もともと荷物が大量に運ばなければいけなくなって
HTVはもちろん残りの6機を必ず飛ばさなければいけない
プラスアルファでまだ運びたいのでシャトルを延命すると
私自身は理解している

ー筑波

Q 主な改良点
推進剤も電力も消費が少なかった
定量的にどのくらいか

A こういう言い方ではどうか
我々は最悪のケースを考えて燃料やバッテリを用意したが
あろうことか全てノミナルでいってしまったので
感覚的には半分以上余ってしまった

ただこのあともリエントリがある
何か起こったときに残しておけば良かったとなるかもしれない

リエントリのあとにまた聞いてもらえれば総括できると思う

ー東京

Q 共同通信
燃料の消費が少なかった要因は
軌道投入精度が良かったためか

燃料が余って
離脱後に飛行試験をするようなことはないのか

A 燃料が余ったのは
H-IIBロケットがほぼノミナルの軌道に入れてくれたこと
非常に燃料が助かった

もう1つは
トラブルが起きるとアボートという状態に入って接近を再開する
大きなアボートを3回はできるように燃料を積んだが1回も使わなかった

余った燃料をどうするかについて
試験をすることも考えられるが
まだISSは混んでいる
プログレスやソユーズが来る
近くでやるとジャマになる

考えてみたいが
計画通りのほうがいいかと思っている

ー筑波

Q 毎日新聞
燃料が半分余った
荷物を余分に載せられるとすると
どのくらいか

A 不謹慎にもそういったが
あと容量の問題もある

詳細な解析をこの後、半年から1年くらいやる
その結果が出ないと決められない
しかし容量の問題があるので
1トン増やすのは無理だと思う

———————–

以上。

東京での取材だったのだが、モニター越しでも分かる虎野プロマネの満面の笑みが印象的だった。本当におめでとうと言いたい。

H-IIBロケット・種子島情報

いよいよH-IIBロケット試験機の打上げがあと10日に迫った。今回は何と言っても”初モノ”のロケットである。初モノだけに、いろいろと苦労もありそうだが(延期が怖い…)、記念すべき初号機だ。万難を排して、ぜひ見に行って欲しい。

参考URL
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/column/2009/02/18/1607.html
http://journal.mycom.co.jp/articles/2005/03/25/jaxa/index.html

種子島では初めての深夜打上げということで、いつもと少し異なる点もある。

まず見学場所について。JAXAは「宇宙ヶ丘公園」「前之峯グランド」「長谷展望公園」の3カ所でカウントダウン放送やライブ中継などを行っているが、今回は深夜ということもあり、町中にある前之峯グランドでは実施しないそうだ。まぁ島外から来てわざわざ条件の悪い前之峯グランドで見る人もいないと思うので、気にする必要もないだろう。

また宇宙センター内にある宇宙科学技術館だが、JAXA種子島広報によると、打上げ前日の9/10も、15:30まで開館する予定だという。打上げ日は9/11だが、実質的には9/10深夜。いつもは打上げ当日にはセンター内に立ち入りできないので、少し得した気分だ。無料の施設案内ツアーも、2便までは運行されるそうなので、予定が決まった人は、早めに予約するといいだろう。

施設案内ツアー
http://www.jaxa.jp/visit/tanegashima/tour_j.html

深夜打上げということで、見逃して欲しくないのが機体移動。いつもだと機体移動は深夜になるのだが、今回は打上げが深夜ということで、機体移動は逆に昼間になる(9/10 11:00~の予定)。写真撮影には絶好のチャンスと言えるだろう。立ち入り規制前なので、打上げ時よりも近くで見ることもできる。

前述の記事を書いたあとで、交通事情も少し変わってしまった。

まず島内の路線バスは、種子島交通が撤退。大和バスは南種子までしか運行していないので、宇宙センターに直接行くことができなくなってしまった。バスを使うつもりだった人は注意して欲しい。

大和観光バス時刻表
http://www.city.nishinoomote.lg.jp/kanko07/koutu/buss2/time-s.html

また飛行機は、あろうことか大阪-種子島の直行便が8月末で廃止されてしまった。私は鹿児島から船を使うことが多いのであまり影響はないが、関西方面からの人には不便になりそうだ。ただその代わり、大阪-屋久島路線が新たに就航したので、屋久島経由で種子島に行くアクロバティックなルートもアリかも(※)。

※JAC2453(大阪伊丹→屋久島)が14:45着で、トッピー86便(屋久島→種子島)が16:20発。空港と港は10kmほど離れているが、飛行機が遅れなければ間に合いそう(しかし悪天候で船便が欠航にでもなったら目も当てられない)。

LNGエンジン燃焼試験の設備公開

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月24日、報道向けに「LNG実機型エンジン」の試験設備を公開した。IHI相生事業所にあるもので、報道向けに公開されたのはこれが初めて。この設備を使って、GXロケットの2段目に搭載されるLNGエンジンの燃焼試験が行われている。


説明者は、長尾隆治サブマネージャ(左)と鳥井義弘主任開発員(右)

JAXAはLNG(液化天然ガス)を燃料にしたエンジンの開発を進めている。H-IIAロケットの1段・2段に使われている水素推進系(液体水素+液体酸素)のエンジンに比べると、LNG推進系には以下のような特徴があるとされる。

・蒸発しにくいので、長期間保存が必要な軌道間輸送に向いている
・燃料代が安いので打ち上げコストが下がる
・爆発の危険性が低いのでより安全になる
・高密度なので燃料タンクが小さくなる
・推力が大きいのでロケットの1段やブースタに適用できる
・ただし比推力は劣る(固体よりは上)

しかし、開発は難渋を極めた。当初は「ガス押し式」を採用する予定だったが、複合材の極低温推進薬タンクの開発に失敗、途中で「ブースト・ポンプアブレータ方式」に変更され、スケジュールも遅れた。


「ブースト・ポンプアブレータ方式」のLNGエンジン

今野彰プロジェクトマネージャは、昨年2月5日に開催された宇宙開発委員会の推進部会・GXロケット評価小委員会(第1回)において、「確かに極低温での推進剤でエンジンを開発するというのは、水素、酸素である程度経験しているので、その経験が生かせるのではないかという認識でした。それと、もう一つはシンプルなガス押し式を採用するということで、エンジンとしては比較的容易に開発が可能ではないかという推定をしておりました。ただ、推進系として見た場合、非常に性能を考えた上で、複合材の極低温タンクという開発をやらなければいけないということがございまして、そこでその開発がなかなか技術的に困難だということで、全体的になかなか開発が進まないという状況になってきたという認識でございます」と発言している。

このように苦労を重ねたLNGエンジンであるが、ここにきて順調な仕上がりを見せてきている。今回の実機型エンジンでは、当初、12回の燃焼試験を予定していたが、順調なために2回分を省略。そして、より多くのデータを取るために最後の1回を追加して、合計で11回のテストとなった。すでに9回まで終了しており、9/1に11回目が実施される予定だ。


これが燃焼試験の設備。大きなタンクは、左がLNGで右が液体酸素


エンジン本体はその反対側にある


実機と同じ設計だが、ノズルは付かない


WEBで公開されている動画は、向こうのカメラから撮影したもの


人と並ぶと大きさがわかる


底にはフタがしてあった。燃焼試験時にはここにディフューザが繋がれる


試験の管制室も公開された

今後、ノズルを付けての真空燃焼試験(角田で実施)をクリアする必要はあるものの、技術的には大きなヤマは越えたと言っていいだろう。しかし、あくまで技術的には、だ。GXロケットは、開発予算の超過、完成の遅れ、需要見通しの甘さなど問題が山積みで、開発にGOサインが出るのかどうか、先行きは不透明。これからはむしろ政治的なヤマを越える必要があるだろう。

(8/26追記)
松浦さんの記事がRobot Watchに掲載された。詳しくはそちらを参照して欲しい。
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090826_310897.html

「ジョイデス・レゾリューション」と「ちきゅう」

米国の掘削船「ジョイデス・レゾリューション」が横浜に寄港するらしい。一般公開もされるそうなので、これは行きたい。

詳細
http://www.kahaku.go.jp/event/all.php?date=20090905

ジョイデス・レゾリューションで思い出したのだが、以前、「ちきゅう」の一般公開を取材したときに、某編集部が掲載を忘れてしまい、記事がお蔵入りになったことがあった。もったいないので、ついでにここで掲載してしまおう(記事の内容は取材当時のものなので注意)。

【レポート】地球深部探査船「ちきゅう」が横浜に寄港、内部を一般公開(2005/9/10)

マントルまで穴を掘り抜くことができるという地球深部探査船「ちきゅう」。概要についてはすでに先日のレポートでお伝えした通りだが、そのちきゅうが10日~12日の3日間、横浜と横須賀において一般公開された。事前にWEBサイトにて参加者の募集が行われたが、各日3,000名の定員にわずか数日で達したそうで、一般からの関心も高いようだ。首都圏以外では、翌週には名古屋港でも公開イベントが開催される予定。


前方の櫓はちきゅうのもの。何か工場でもあるような感じに見える。筆者は着岸場所を正確に知らないまま行ったのだが、どこにあるのか遠くからでも一発で分かった


地球深部探査船「ちきゅう」。全長210m、幅38m、総トン数は約57,087tで、最大12ノットでの航海が可能。ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動して推力を得ている

筆者が取材したのは初日の10日で、この日、ちきゅうは横浜の大黒埠頭に着岸していた。ちきゅうは掘削船であり、その空に高く突き出た櫓(「デリック」と呼ばれる)が外見上の特徴であるが、海面からの高さは120mにもなるという巨大なもので、かなり離れた位置からでも停泊場所が分かるほど。ちなみにこの場所への接岸となったのも、あまりにも高さがありすぎてベイブリッジなどの橋をくぐれないから、というのが理由なのだそうだ。


参加者は事前登録した人だけではあるが、タラップには乗船待ちの列


船内の通路は比較的狭い。案内がなければ確実に迷いそう

“地球深部探査船”という名称からも分かるように、ちきゅうは地球の内部を調べるための船だ。海底からドリルを使って調査用の穴を掘り、柱状に細長い地質試料(「コア」と呼ばれる)を採集する。船内には、コアを分析するための研究区画があり、その総床面積は約2,300平方m、最新の機器が揃えられており、研究所をそのまま海上に浮かべたようなものだ。この船は、こういったコア試料を採集し、それを分析することが全て、と言うこともできる。


別の調査船によるものだが、過去に採集されたコア試料。一番下は南海トラフの海底下1,000m程度で採られたものだ


これはコアの地磁気特性を測定するための設備。正確に測定するため、磁気シールドで部屋の地磁気は1/100に減衰されている


微生物を研究するための設備。嫌気環境でのサンプリングや、凍結保存のための装置もある


物性を調べるための装置もいろいろある。CTスキャナでは、内部構造を非破壊で分析することができる

研究のための設備が一方の柱とすると、もう一方の柱は掘るための設備ということになる。ちきゅうは世界で初めて、科学研究用に「ライザー掘削システム」を導入、これによって海底から7,000m以上という掘削能力を実現した(従来の科学掘削船では2,000m程度が限界)。これは、海底のプレート(地殻)を突き抜け、マントルにまで達する深さだ。巨大地震の発生源であるプレートの境界を直接調べることもでき、実際に2007年度からは熊野灘沖の南海トラフを調査する予定だ。同船を運用する地球深部探査センターの平朝彦センター長は、「大幅に知識が増えることになるだろう」と期待する。


平朝彦・地球深部探査センター長。地質学の研究者であり、自身の経験から、南海トラフはものすごく掘るのが難しい、と語る


市山和男・ちきゅう船長。過去、LNG船・大型客船等に船長・副船長として乗船。洋上では、様々な判断が求められることになる

ここで改めて、ちきゅうの研究テーマについて述べておこう。1つは、プレート境界で起きる巨大地震のメカニズムを解明すること。海溝型地震は、大陸プレートの下に海洋プレートが潜り込み、その歪みが開放されることで起きる。ちきゅうの能力をもってすれば、その震源付近のプレート境界まで掘り進み、観測装置を設置することが可能だ。平センター長によれば、この観測装置は「メカニズムの解明」「地震の予知」「緊急地震通報」に役立つことが期待されるとのことで、地震の予測が可能かどうかの議論に「決着をつけたい」と意気込む。

生命科学では、原始地球で生命が誕生した謎の解明も期待される。「生命の誕生には水と鉱物と熱エネルギーが必要と考えられているが、人工的に遺伝子を合成することは今のところ成功していない。そういった環境がある海底の熱水鉱床には原始的な生命がいることが分かっているが、その周辺は現在の生態系に囲まれていて影響も受けている。もっと深い地下2~3kmには、表層の生命はいない。ひょっとすると原始生命だけが生きている場所、あるいは原始生命が誕生している場所もあるかもしれない」(同氏)。

また、これまで人類はマントルを直接採取し、調べたことはない。ちきゅうの7,000mという掘削能力は、地震の発生する領域であるということと、マントルに達することができるということの、2つの理由からスペックが決められたという。これまで間接的な手法で観測、仮説を立ててきたことを、直接検証できる手段を得たということは、科学的に非常に意義のあることだ。もちろん、新発見も大いに期待できるだろう。


船上から見たデリック。ここでドリルパイプを継ぎ足しながら、海底へ打ち込んでいく。長さ38mのドリルパイプを立てかけておくためのラックもある

深く掘るための仕組みについてだが、ただドリルパイプを長く・たくさん用意すればいいというものではない。普通に海底を掘り進んでいっても、せっかく掘った穴の内壁が海水によって崩れてくるという問題があるからだ。ライザー掘削システムとは、船と海底の間をライザーパイプという太く丈夫なパイプで結び、内部を海水から隔離、シールドマシンのように、泥水の循環で穴を掘り進むものだ。しかも地中にはケーシングパイプというものが挿入され、掘削孔の内壁が崩れるのを防ぐ。先ほど「研究用では初めて」と書いたが、石油掘削では使われていた技術である。


船体後部に並べられているライザーパイプ(外径1.2m)。ちきゅうでは、2,500m分のパイプを搭載している。これは繰り返し利用するそうだ


ドリルパイプは10,000m分なので、水深2,500mの地点では、海底下7,500mを掘れるという計算になる。パイプごと回して穴を掘り進む


先端にはドリルビットが付けられる。いくつかタイプがあり、右側のものでは中央の穴からコアが採集できる。摩耗したら取り替えなければならないが、4,000mでは引き上げるだけでも6時間くらいかかるそうだ


噴出防止装置(BOP)。高圧のガスや石油を掘り抜いてしまっても、これで噴出を止めることができる。荒天時などは、海底にこの部分まで残して、ちきゅうは安全な海域へと待避する

パイプで海底と結ばれるので、船は海上でその位置を保持する必要がある。それには自動船位保持システム(DPS)が導入されており、GPSで位置を確認しつつ、6基のアジマススラスタにより、風・波・潮力による影響をキャンセルする。アジマススラスタはそれぞれ、推進方向を360度自由に変えることができるようになっている。


ブリッジ。最新鋭の船らしく、高度に電子化されている


自動船位保持システム(DPS)。ジョイスティックで微調整も可能


埋め込まれたデルのPC。「SKY-FIX PC」と書いてあった


カーナビのような装置も。ルートを設定しての自動航行も可能だ


こんな巨大な船なのに、子供でも簡単に持てるような小さなハンドルで操舵できる


ちなみに左右がL/RでなくてP/Sなのは、「Port(港)」「Starboard」の略。必ず左舷を接岸していた時代からの名残だ

ちきゅうは今後、約2年間の試験運用期間を経た後で、2007年9月からはIODP(統合国際深海掘削計画)のプラットフォームとして、国際的な枠組みの中で運用されていく予定。主に南海トラフでの調査が行われるとのことで、地震研究の進展について、特に国民の注目を集めそうだ。


横浜ベイブリッジの高さは主塔でも170m程度で、海面上120m出ている櫓を持つちきゅうはとても下を通れない


恒例のグッズ販売も。余談だが、すでに「かいよう」Tシャツを持っている筆者は、今回「ちきゅう」Tシャツを購入

【レポート】人類未到の地球深部へ – マントルまで掘れる最新鋭探査船「ちきゅう」とは?
http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2005/06/28/jamstec/

【レポート】スマトラ沖で何が起きたのか – 海洋研究開発機構・調査結果速報
http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2005/04/18/jamstec/

地球深部探査センター
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/cdex/

海洋研究開発機構(JAMSTEC)
http://www.jamstec.go.jp/

ロボット連載が開始

マイコミジャーナルでロボットの連載を開始した。

【連載】近藤科学の最新ロボット「KHR-3HV」を試す
http://journal.mycom.co.jp/series/robot_khr3/menu.html

とりあえず、KHR-3HVは自腹で買ってしまったので、元を取るまではしばらくは続けてみたい。エンタープライズチャンネルでの掲載になるので、自律化に興味を持つ人も多いだろう。ちょうど近藤科学では自律競技も開催しているので、ネタとしていずれ参加してみたい。

ところで、なぜホビーチャンネルでなくてエンタープライズチャンネルなのかと思うだろうが、それはまぁホビーチャンネルのトップページで、記事の偏りを見てもらえれば分かるだろう。あそこはもはやアニメ&ゲームチャンネルだ。

チャンネル紹介のページには、「趣味や遊びに関連した情報を幅広く扱うチャンネルです。ネット文化やサブカルチャーに敏感な若者から、趣味にこだわりのあるお父さん世代にまで、ゲーム、アニメ、玩具、模型、鉄道、ロボットなどの分野についてユニークな記事を展開。製品リリース情報はもちろん、イベントレポート、小売店店頭での聞き込み、制作者インタビュー、その他独自の取材記事などを通じて、その道の「通」にも納得していただける濃密な情報をお届けします。」とあるんだけどなぁ。

最近では、宇宙関係は「エンタープライズ→サイエンス」に、ロボット関係は「エンタープライズ→エレクトロニクス」に、ホビーの一部は「ライフ→趣味と学び」に、どんどん分散してしまっており、読者にとっては、ちょっと分かりにくいかもしれない。これはまぁ、全体をコントロールすべき立場の人間が、それをやっていないということだろう。せめてImpress Watchのように、関連する記事はほかのチャンネルからリンクを張るなどの仕組みがあればいいのだが。

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