月探査に関する懇談会

一昨日取材した標記懇談会の記事を書いた。

「月探査に関する懇談会」の第1回会合が開催
~二足歩行ロボットも焦点の1つに
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090806_307536.html

川口先生も傍聴しているのが見えた。そりゃ気になるだろう。

記事にも書いたが、今回は”顔合わせ”程度の内容となっており、特に議論らしい議論はなかった。それは次回からになるだろう。

今後の議論を見て、おいおい書いていきたいと思っているが、私が注目している点の1つに、「2足歩行ロボットか否か」ということがある。パブリックコメントも出したのだが、これについて、私はどうしても意義が認められない。

「技術的なチャレンジ」という見方もあるかもしれないが、それは今後に繋がるものでなければならない。月面で2足歩行を実現して、それが今後の宇宙開発でどう役に立つのか。それが全く見えてこない。

ロボット業界にお金を落として、今後の少子高齢化社会のためのヒューマノイドロボット実現に繋がる、という声もあるかもしれないが、それは地上のロボットプロジェクトでやればいい話だ。場所が宇宙である必要は全く無い。

また、ある委員からは「人間と共通の道具を使える」ことがメリットの1つとしてあげられていたが、それは自動車や道路、建築物や家電製品など、膨大なインフラがすでにある地上での話だ。ゼロから作り上げる月面では、最初からロボットが使えるインターフェイスを用意すればいいだけなので、これは失礼ながら、見当違いと言わざるを得ない。

ロボットは、アシモに代表されるように、確かに地上においては、日本の得意分野である。宇宙基本計画にも「我が国の得意とするロボット技術をいかして」との文言が入っているが、広瀬委員は「NASAはすごいことを着実にやっているが、日本はそうでもない」と、これを真っ向から否定してみせた。日本にも「はやぶさ」の自律技術など、すぐれたものもあるが、何度も火星にローバーを降ろしたりしているNASAと比べれば、経験不足と言わざるを得ない。

あとは、「シンボル的なもの」としての意味があるかもしれないが、これも中途半端だ。「人間は出せないから、とりあえずヒューマノイドで」などというのでは、志が低すぎる。宇宙基本計画では、「2020年」という無人探査の目標は掲げられたが、有人探査については具体的な表記は見送られた。折井委員や山根委員からは、「何年に人を送るんだという明確な目標を立てて欲しい」との意見も出た。

日本の宇宙開発は、非常に厳しい予算状況にある。現場の研究者から話を聞くと、「お金がなくて…」という嘆きしか聞こえてこない。お金が余っているのであれば、別に2足歩行ロボットでも何でも送ればいいのだが、国も財政難の折、間違った配分をする余裕はないのだ。的川委員の「月探査をやることで、ほかの惑星探査に無理がでないようにお願いしたい」との注文も無理からぬことだ。

宇宙基本計画の文面では、2足歩行ロボット「等」とあるので、こだわらなくても良いのでは、と思われるかもしれないが、改めてよく読んで欲しい。当初案で「2足歩行ロボット等による高度な無人探査の実現を目指す」となっていたものが、パブリックコメントを受けて、「2足歩行ロボット等、高度なロボットによる無人探査の実現を目指す」と微修正されたのだが、そもそもこの文章で「2足歩行ロボット等」という部分はなくても構わないはずだ。

2足歩行ロボットは「高度なロボット」であり、「高度なロボットによる無人探査の実現を目指す」だけでも意味は通じる。それなのにわざわざ残ったということに、何らかの意図を感じざるを得ない。

私が傍聴した感じでは、否定的な委員の方が多かった。賛成していたのは、井上委員(東大名誉教授)、葉山委員(トヨタ)、そして毛利委員くらいか。まぁトヨタにしてみれば、大きなお金が落ちてくるわけだから、賛成するのも「そりゃそうか」という感じだが、ロボットが公共事業化するような事態だけは勘弁して欲しいものだ。

相模原キャンパス一般公開レポート

ここのところあまりにも忙しく、ブログを放っておいたら、1カ月も経ってしまった。

さて、この前の週末に、JAXA相模原キャンパスの一般公開を取材してきた。

JAXA相模原キャンパス一般公開レポート~「はやぶさ2」は衝突機を追加した2機構成に
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090730_305910.html

ちなみに過去記事はこちら。途中で媒体が変わってしまっているので、ここにまとめておきたい。

JAXA相模原キャンパス一般公開レポート~はやぶさ後継機、次期固体ロケットなどに注目
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/08/22/1262.html

宇宙研一般公開 – 見えてきた「はやぶさ」後継機、早ければ2010年にも打上げ
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/07/25/isas/index.html

宇宙研一般公開 – まだまだ続く「はやぶさ」の話題、後継機に関する新情報も
http://journal.mycom.co.jp/articles/2006/08/02/isas/index.html

宇宙研・一般公開、今年は「はやぶさ」の小惑星到達に注目
http://journal.mycom.co.jp/articles/2005/08/08/isas/index.html

しかし、全部タイトルに「はやぶさ」が入ってるな…。

LNG実機型エンジン燃焼試験の動画

LNG(液化天然ガス)実機型エンジンの燃焼試験がIHI相生事業所にて実施されたが、2回目試験の動画がJAXAの以下のサイトで公開された。

輸送プログラム:エンジン燃焼試験
http://rocket.sfo.jaxa.jp/engine.html

予定では、以下のように計12回の試験を行うことになっている。1回目は6月22日(月)、2回目は6月24日(水)にそれぞれ実施された。

試験秒時(予定) 備考
1 3 初期作動確認試験
2 60 初期作動確認試験
3 150 初期作動確認試験
4 500 技術データ取得試験
5 2 技術データ取得試験
6 3 技術データ取得試験
7 60 技術データ取得試験
8 500 技術データ取得試験
9 600 技術データ取得試験
10 100 技術データ取得試験
11 100 技術データ取得試験
12 100 技術データ取得試験

また最後あたりでプレス向けの公開もあると思っているのだが、どうだろうか。見たい。

「かぐや」月に帰る

ありがとう。そしてお疲れ様。

月周回衛星「かぐや(SELENE)」が本日午前3時25分、予定通り月面に制御落下された(放っておくとどこに落下するか分からないので、燃料が尽きる前に、落としたい場所に落とすのが制御落下。今回は地球から観測できるように、表側でかつ夜の領域が選ばれた)。

「かぐや」の科学観測については、これからも成果がどんどん出てくると思うが、何にしても、低高度からのハイビジョン動画には感動した。この意義は計り知れないと思う。カメラの搭載に尽力した的川さんには本当に感謝したい。

今頃、相模原では記者会見が行われているはずだ。仕事にハマってしまい、行けなかったのが残念。

(追記)こんなイベントも開催されるようだ。
Fly me to the Moon in AKIBA
http://www.sayonara-kaguya.jp/

ZOTAC IONITXレビュー

ZOTACのMini-ITXマザーボード「IONITX」のレビューが掲載された。

【レビュー】IONマザーボードの第1弾! 「ZOTAC IONITX」を速攻チェック
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/05/22/ionitx/index.html

詳しくは記事を見て欲しいが、パフォーマンスのバランスはかなりいい。Vistaもストレスなく動くし、消費電力の測定結果も良好だった。個人的には、PCIかPCI Expressが1スロットくらいは欲しかったが、USBポートが多いので周辺機器は外付けタイプを選べばいい話だろう。

このマシンをエンコード用にする人はいないと思うので、最後にテストしたCUDAの話はオマケだ。しかし、思ったよりも効果があったので、たまに使う程度であればビデオ編集も可能だろう。より快適に使うために、デュアルコア版を選ぶのも悪くない。

○Amazon.co.jp

アスク マザーボードZotac ION N230 single core IONITX-B-E

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アスク マザーボードZotac ION N330 dual core IONITX-A-U

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私自身は、とりあえずは買ってみたものの、すでに常時3台マシンが動いている状態なので、これ以上は必要ない。またベンチマークテスト専用機になりそうな…。

宇宙基本計画(案)のパブリックコメント〆切

本日が〆切だったので、急いで「宇宙基本計画(案)」の全文を読んだ。しかし全51ページは長い。ほとんど一日がかりになってしまった。

「宇宙基本計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/pc/090428/090428pc.html

「パブリックコメントなんぞ送ったところで、どうせ何も変わらないだろう」とは私も思う。しかしそれでも、送らないよりは送った方がよっぽどいい。数があれば無視しにくいだろうし、何らかの影響を与えられる可能性もある。それに、パブリックコメントを送らないということは、今後の宇宙開発について「私はそれでいいと思います」と暗に認めたようなものだ。後で批判したければ、積極的に意見を出そう。

長々と書いたので全文の掲載は控えるが、要点は以下の通り。

○気象衛星は高機能化・多機能化よりも、高信頼性を重視すべき。国民の生命にも関わるものであり、軌道上に「衛星がない」という事態は絶対に避けなければならない。運用は静止軌道上に2機が必要となるが、現行のひまわり6号/7号の体制で10年間もたせる計画は無理がある。本来ならば、きちんを予算を付けて、5年ごとに2機打上げたい。単機能化し、後継機の開発は急ぐべきだ。

○「はやぶさ」などの探査機は、シリーズ化して繰り返し探査を行うことでこそ知見が深まる。「はやぶさ」の後継機として検討されている「はやぶさ2」については、2010年度から開発を始めないと間に合わない。「研究開発を行う」ではなく、「開発を行う」と明記して欲しい。

○他国の都合に振り回されないように、日本も独自の有人輸送手段を持つべきだ。少なくとも、そのための研究開発は進めて欲しい。

○GXロケットについては、計画を一旦中止すべきと考える。すでに予算は大幅に超過し、実用化も遅れに遅れている。例え実用化されたとしても、高くて性能の悪いロケットなど、誰も使いたくない。LNG推進系は一旦研究開発に戻し、改めて実用化を検討すべきだろう。ただし、複数の打上げロケットを持つことは必要。場合によっては、次期固体ロケットの後継機での大型化も検討すべきだ。

○宇宙観光は大きな可能性を秘めている。現時点では非常に高額なため、旅行者は一部富裕層に限られているが、これが数百万円クラスにまで下がれば、大きな産業になることが予想される。民間で宇宙機を開発しているのは、多くが米国のベンチャーだが、日本に技術がないわけではない。資金面・法制面などで、民間の取り組みを支援すべき。

ほかには、二足歩行ロボット、宇宙太陽光発電、測位衛星システム、高度情報通信衛星システムなどにも少しケチを付けた。

ZOTACのIONマザーボード

久しぶりにMini-ITXマザーボードを買ってしまった。ブツは、IONプラットフォームを初めて採用したZOTACの「IONITX」。いやぁ、いいわ、これ。

どーんとファンレス

USBは多いし、eSATAまである

シングルコアAtomのバージョンなので、パフォーマンスについては以前のレビューと同等だと思うが、NVIDIAから借りたリファレンス機はHDDやメモリなどの条件が比較機と異なっていたので、再計測する意味はあるだろう。

週末から作業して、来週にもレビューを掲載できるようにしたい。

VIAのTrinityマザーボード

ビッグサイトで開幕した「組込みシステム開発技術展(ESEC)」の取材に行ってきた。右肩上がりのときは、主催者側が「過去最大規模で開催!」などとアピールしているものだが、今回、そういった謳い文句は一切ナシ。実際、NECエレが単独でブースを持っていなかったり、ルネサスやフリースケールに至っては出展すらしていなかったりで、顔ぶれは少し寂しい。

詳しくは記事に書くとして、VIAのブースに「Trinity」プラットフォームの新型Mini-ITXマザーボードが出ていたのが面白かった。Trinityとは、CPU、チップセット、GPUの3つを自社製品で揃えたプラットフォームのことだ。このMini-ITXマザーボードには、S3のGPU(おそらくChrome 400の組込み向けである4300E)がオンボードで搭載されている。

正直なところ、AtomによるMini-ITXマザーボードの価格破壊により、少なくともコンシューマ市場においては、VIAが盛り返すのは厳しいと思う(そもそもVIAがこの市場を重視していないような気もするが)。さらにIONプラットフォームのMini-ITXマザーボード「IONITX」も、ZOTACからまもなく発売される。

まだ正式発表前なので、この新型マザーボードがリテール向けに出るかどうか不明だが(多分秋葉原には流れるだろう)、決して悪い製品ではないので、ZOTACと同程度の値段(シングルコアAtomで約2万円)で出てくれれば、と期待したい。いずれIONITXとの比較もしてみたいところだ。

※5/14追記 記事が掲載された
【レポート】ESEC 2009 – VIAがGPUオンボードのMini-ITXマザーボードを公開
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/05/14/esec01/index.html

宇宙基本計画(案)に対するパブリックコメント

松浦さんのブログに、標記の件についての呼びかけが掲載されている。

呼びかけ:宇宙基本計画にパブリックコメントを送ろう(松浦晋也のL/D)
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2009/05/post-76db.html

恥ずかしながら、私はまだ「宇宙基本計画(案)」を読んでいない。日々の仕事に追われ、まとまった時間がなかなか取れないためだが、官僚の書いた文章というのは、ざっと読んでしまっては真意が分からない場合が多い。重箱の隅をつつくように、細かく見ていく必要があるのだ。

以前、ある省庁とメールをやりとりしたとき、「検討していきたいと考えております」などという文言が入っていたことがあった。常識的に考えれば、「じゃあ検討するんだろう」と受け止めがちだが、この文章で重要なのは、「考えております」の部分だ。文面通り受け止めれば、「考えます」と言っているに過ぎない。

このケースでは、「検討する」とは一言も言っていない。これでは、検討した結果として「実行する」ことなど、まず期待できない。官僚による文章は、一般社会のように、常識を元に、行間を読んではいけない。文面が全てなのだ。一般論として、そういった特徴があるという点には注意して欲しい。

連休に入れば少しは時間が取れるようになると思うので、私もパブリックコメントを送ろうと思う。「国民の意見は聞きましたよ」というアリバイ作りに過ぎないのでは、という疑念もあると思うが、今後の国の宇宙開発に関する方針を決める重要な計画である。少しでも多くの人に意見を出してもらえればと思う。

それにしても、いつも思うのだが、なんでこうパブリックコメントというのは、募集期間が短いんだろう。こんな重要なことなのに、たった3週間かよ。しかもトップページにも出てないし。

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