今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議 第6回会合

4月13日、「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の第6回会合が開催された。以下に、泉政務官による記者ブリーフィングの内容を掲載する。

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泉政務官

今日は3:15から有識者会議の第6回会合を行った
その次は4:30から月探査懇談会のメンバーに入ってもらって
前原大臣とともに月探査に関する円卓会議(合同会議)を開催した
大島副大臣以外は全員参加した

資料
徐々に有識者会議としてまとめつつあるということでご理解いただきたい

資料6-1-1で全体
資料6-1-2以降でそれぞれの詳細

有識者会議としてはグリーンイノベーション戦略
そしてそれをパッケージ化していくという戦略
この2つをしっかりと実施しながら
さらに先端的、挑戦的なイノベーションエンジンということで、
いくつかの政策をあげている

これまで何度か話をしてきたことだが
基本的には、これまでは研究開発ということで
衛星を打ち上げても
例えば複数を系統的に結びつけたり統合したり
データを総合的に活用したり集約したり
そういうことは行われてこなかった
それを販売するとかそういったことにも
あまり考えられてこなかった

衛星はいろいろと上がってはいるが
それを体系的に位置付けて
データの利用やそういったことについて
より取り組んでいこうというのが
グリーンイノベーション戦略の主旨

資料6-1-3
日本全体を5mの分解能で一日に一度撮像できる
これはあくまで事例

現在の基本計画でも3時間に一度 8機体制ということがあるが
要はそういった様々な観測衛星・監視衛星
複数運用しながら
データアーカイブ解析センターを設置することで
その利用を高める

1時間以内にユーザーに即時配信
例えばグーグルの写真はいつ撮られたモノかわからないが
リアルタイムに更新されることによる価値があるのではないかと

資料6-1-3の下
アメリカもデブリ対策にかなり乗り出しつつある
日本としてはデブリ除去について目を向けていくべき

資料6-1-2
要はパッケージ戦略
衛星もそうだが
それを打ち上げて中の部品等々、あるいはシステム
ここに救急車の絵が描いてあるが
交通事故が起きたらクルマから事故信号が出て
自動的に救急車が出動できるようなものがある
それをセットに売り込むことで
他国の防災とか様々な政策全体の底上げを図れる
喜んでもらえることになる
必ずしも救急車そのものは新しいインフラではないが
それに付加価値を付けることでセットで売り出せる
そういうことでパッケージ化を考えていこうと

そのほかいろいろ書いてあるが
質問があれば答えたい

イノベーションエンジンのところは
それほど詳細には触れられなかった
小型衛星打ち上げシステムの開発とか
探査も
宇宙基本計画では月探査に重きがおかれていたが
月にロボットをどう走らせるかよりも
有識者会議としては
探査というものを大きく捉えて
優先順位を高いところから真に必要な探査を行うというスタンス

新輸送システムの開発
無重力環境の利用
基本計画にも触れられているが
頭出しをしていきたい

資料6-2 新成長戦略時代の宇宙開発新体制
現状
いままでも言われてきたのはトータルバランス戦略
宇宙機器産業市場は
国費が2,000億円以上投入され続けているにもかかわらず
産業規模が減ってきている状況
これをなんとか改善しないといけないという
問題意識が有識者会議の中では強い

以前から話している民需をどう広げていくか

そのための新しい宇宙開発体制が右の図
これはもう見ての通り

一方で今日の政務三役を含めた議論では
これは将来的な1つの姿と考えている
現在でもできることはそれなりにある
戦略本部がある
そのなかでしっかり議論すれば
当面の問題は様々解決できる

有識者会議としては理想的な姿として
宇宙庁、経営会議、専門調査会
その元に様々な利用コミュニティが
意見交換できるような体制を描いている

有識者会議の今後について
スケジュールに狂いはない
次回は4/20
この資料からさらに修正が加えられたモノがでてくる

4/20の段階でどんなやりとりがあるか
今日はまだ議論していない
まだ確定していない

これから有識者の先生方と調整して
どういう報告になるのか詰めていきたい

16:30からは円卓会議を行った
初めての顔合わせだっと思う

両方とも大臣の下の会議だが
政権交代以前からの月探査の懇談会
我々も興味深く聞いた

非公表扱いになっているので
誰が何を言ったかお伝えしにくいが
とはいえ思い切って少し話をしてみると
……怒られますかね?(事務方の顔色を窺う)

私も感じていたことで皆さんもうんうんと頷いていたが
懇談会のみなさんも、自分たちが積極的に
自ら基本計画の中に月をやってくれと入れて
自分たちが主人公になって月政策を推し進めていくという
位置付けではそもそもなくて、
基本計画に位置付けられていることで懇談会ができて
その懇談会に集まった皆さんなので、
ともすれば彼らが月政策を推進している主体ではないかという
見られ方をするかもしれないが
それではなくて我々は懇談会のみなさんに意見を伺うという立場
月の意義についていま議論をしてもらっている最中

そういった意味では
なぜ月が基本計画に入ったのかについては
我々がまさに政治の側として
過去の政策の決定過程の検証を行っていくことが本来大事なこと
現在の懇談会の方々に何か問題点があるというような性質のものではない

もう1つは彼らも基本的にはそういったもとに議論をしてきて
いま報告書を上げてくるという段階になりつつある
その中でその報告書をどのように扱うかは
政治の側に委ねられてくる

いずれにせよ、どちらも専門家同士でもあるので
いろんな側面から改めて月探査の必要性についての議論があった

もう1つあった話は
月探査を何か他のミッションと比較をしたという議論ではない
懇談会そのものは

懇談会はあくまで月探査の懇談会をするようにと課題を設定されて議論してきた
月がいいのか金星がいいのか木星がいいのかというのは
懇談会の中での議論としてはありえない

改めて様々な他のミッションと比較してどうなのかということについては
まさに政治の側が戦略として決めて行かなくてはいけないという認識を持った

ーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
資料6-2 新しい宇宙開発体制について
理想的な形と言ったが
宇宙庁というのは現在の戦略本部に取って代わるものか

民主党の政策集のなかに
JAXAの企画部門と各省の宇宙部門を内閣府のもとに一元化
日本版NASAというのが入っていた
今回の宇宙庁はそれを具体化したものか
民主党のインデックスとの整合性は

A 泉政務官
有識者会議の皆さんは
民主党のインデックスにどう書かれていたかを見て
こういった案を出してくれたとは思っていない
民主党のインデックスはインデックスとして

様々な専門家から話を聞いた中でのインデックスでもあるので
方向性が一致している

民主党とすりあわせをしたわけではない

ただ、それはあくまで有識者会議のみなさんの話
いま政府として宇宙庁を具体的に採用して
取り組んでいるわけではない
今の段階では

宇宙庁が発足すれば
戦略本部とは別ということは多分ない

Q 東京新聞
イノベーションエンジンのところ
無重力実験でタンパク質
きぼうを使った生命科学の実験に繋がる印象
となると経済成長戦略は10年を見越した計画
ISSの延長問題とも関連してくると思うが
このタンパク質実験を盛り込むということは
2015年以降も日本はきぼうを使って生命科学を
やっていくという理解でいいのか

A 泉政務官
無重力環境の利用についての資料
今回初めて提示してもらったが
今日は詳細はあまり触れてない

いままでの有識者での流れでは
ISSにあまり前のめりになってはいけない
その中でこの無重力環境の利用というものが出てきた
それは僕もじつは聞きたいところだったが時間がなくて聞けなかった

資料の位置付けはもう1回聞いてみないと分からない

Q 読売新聞
確認だが月探査に関して
これまで基本計画を前提としていたが
そこも見直すのか
月ではないとする可能性もあるか

A 泉政務官
基本計画では3つの目標を設定している
文面だけいうと
国の総力を挙げて様々な月の可能性を検証していくことになっているが
じつはその後の文章を見ると
検討しても必ず実施するような書き方にもなっていない

一方で純粋な意味で検討してもらったら
その上で実施するしないは判断していい

私が座長に言ったのは
国の総力を挙げて検討するということなら
本当に検討環境がみなさんに与えられてましたかと
私から問いかけた

いまの有識者会議がやっているような機動的な会合の開き方や
必要があればコミュニティに意見を聞くとか
それよりもかつての審議会に近い形で議論されている
残り期間はそうないが
本当に必要であれば追加でどんどん入れても構わないと
私から伝えた

今日の議論のあとに
月探査の懇談会の先生方からは
いまの中間報告からはもう少し書きぶり
より伝わりやすい形の改善はできるのではないか

そういうことは積極的にやっていきたい

現段階では懇談会をしてもらったから月ありき、ではない

月の意義というものついては
全ての委員のみなさんが認めている

月の意義はある
しかし金星、水星、火星にも意義はある
意義がある中での比較
優先順位はまた考える段階に来ていると

先行してこれだけ議論してもらったという重みはある
そこは十分に受け止めながら
だからというわけではない

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(目次)

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宇宙ステーション補給機「HTV」
「H-IIB」ロケット
月周回衛星「かぐや」

・探訪 ものづくりの現場
ロケットをつくる
人工衛星をつくる
打ち上げを支える

・直言・提言
三菱重工業相談役 西岡喬氏
東京大学教授、理事(副学長) 松本洋一郎氏
スカパーJSAT宇宙ビジネス推進部長 前田吉徳氏

・独自技術で貢献する中堅・中小企業
川邑研究所
ユー・コーポレーション
北陸電気工業
ニチダイフィルタ

・宇宙産業が歩んだ半世紀
・世界の宇宙産業 新興国も台頭、激化する国際競争
・人工衛星を売れ! 欧米メーカーの牙城に挑む三菱電機とNEC
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今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議 第5回会合

4月6日、「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の第5回会合が開催された。いつものように、会合自体は非公開だが、終了後に泉政務官による記者ブリーフィングが行われた。論評抜きで、取材メモをそのまま添付する(手抜きとも言う)。

4/7追記
提出資料がWEBに公開された。こちらを参照のこと。

ーーーー
泉政務官

今日は16:40から17:40まで第5回の会合を開催した
副大臣だけいなかったがそれ以外は全員出席

資料として5-1と5-2
体制について今日は主に話をした

大臣からは
山崎さんがシャトルで飛び立った
みなさんと喜びを分かち合った

私からは
有識者のみなさんが専門家100名以上を東大に集めて4/2~3に議論
そのときのお礼を申し上げた

それから先生方から資料を使った説明があり
欧州は民需が非常に活発
欧州型の産業構造、市場構造を生み出すべきではないかという
意見があった

テーマ別に宇宙をどう活用できるのか示して
政策課題を解決する視点から
プログラムを策定していくのが大事

これまでは開発研究に重きを置かれていたので
利用について基本法、計画、戦略本部ができたわけだが
いまだエンジンとしては機能するに至っていない状況
早急にそういう体制を作るべきではないかという話

例えば農水省は
様々な農地の調査などに
いろいろと宇宙が使えるという話がある
実地で調べるよりも
衛星を使った方がコストを安くできる
そういったものが徐々に進み始めているが
それぞれの施策を衛星を使ってやればどう変わるのかということを
各省とも構想したことがないのではないか

国交省でも徐々に進んでいるが
取り組みはまだまだ

例としては
ドイツのアウトバーン
トラックの上に通信機が付いていて
それによって自動課金している
そういった取り組みなどは日本はもっと参考にすべき
それがあればETCでゲートがなくてもいい

いろんな施策を検討して実施するにしても
頭脳というかエンジンというか、企画立案部門がしっかりとないといけない

例えば
ガリレオは5名が中核の人材でリーダーシップ
GMESはは2名くらいが意志決定をしている
そういうものを参考にして
あまり大人数で議論ばかりしていても仕方がない

その他諸々いろんな話がでたが
全体を見渡しながら
ポートフォリオ、バランス
そういったものを考えながら、

ここでは研究のために投資、あるいは新規技術のために投資し
ここでは多少損をしてもこちらではしっかりと利用を促進して稼ぐんだと
全体戦略を考えて、そのときに日本政府全体の宇宙政策を実証していく
そういうことが今求められている
そういう人材を育てないといけない

議論は一致している

現在、宇宙基本計画は
年間5,000億円くらいの規模をベースに策定されている
現在政府が出しているのはいま3,000億
まだまだ民間の需要が足りない

政府が5,000億円を出して最初の呼び水にしていくのもさることながら
一方ではできる限り民間の裾野が広がるような投資をして
政府が全部出すのが前提ではなく
民間が利用しやすいような
土壌を作り出すことが大事だと

そういった体制論について今日は話をして
資料5-1にあるように
宇宙庁への権限の一元化が銘打たれているわけで
そういう方向で進めたいというのが有識者の意見だった


質疑応答

Q 日経新聞
その案は有識者会議で
コンセンサスは得ているのか

A 泉政務官
有識者会議のみなさんはよく連携しているので
一致して議論を進めてきていると理解していい

Q 東京新聞
今日の会議では
JAXAの所管問題や組織のありかたについては
出たのか

A 泉政務官
JAXAの中の組織をどうするかについては
今日は出なかった

基本的にはJAXAのこれまでの研究開発を
否定したり削減したりして何かをしようという発想ではなくて、
その成果をいまの時代で
例えば静止衛星では
世界中には260機あって
そのうち日本で打ち上げられたのは2機というか1.5機というか
そのくらいの割合しかない

やはり利用
この部分にもう少し重点をおかないといけないが
現在のJAXAの組織に営業部門を付けても
そこはこれまで研究開発一本できた経緯があるので
何かしら別の部門を作って
これまでの研究成果を活用していく体制が必要じゃないか
そういう意味で宇宙庁というものが出ている

Q 宇宙庁までの移行のイメージは出てきたのか

A 何年に法案を出して、何年までにどうのこうのと
そういう話まで今日はしていない

現在の戦略本部でできることもあるとは思うが
要は今の戦略本部をもっと強化しないといけないし
権限も持って
政府全体の宇宙予算3,000億円
その2/3がJAXAの研究開発に使われているが
その全体戦略を含めて
しっかりと方針を出して
その中に研究開発を位置付けられるという
順序をしっかり整理すべきじゃないか
という方向で進んでいる

Q 読売新聞
来週原案がまとめられるが
その中に宇宙庁や組織論など
すべて盛り込まれるのか

A 泉政務官
今ひとつは公務員の世界のいろんな制約がある
新しい組織を作る場合
定員や局の数の問題がある

これは有識者の構想として
こういった推進体制があればいいなという話だが
実務的にはそれ以外、役所が考えなければいけない部分もある

そのままの提言で出てくるか
それともそういったことを調整した上で現実的なものが出てくるか
まだ煮詰まってない

Q 来週出てくるのは新成長戦略に向けての提言だが
そこにも組織論が入ってくる?

A いろんな新成長戦略に向けての具体的な施策があって
それを今後円滑に推進していくためには
体制の一元化が大事ですよという書き方になっている
順番としては、体制が先に来るわけではないが
いろんな新成長戦略を考えるとこういう体制が必要だろうと提言の中に入る

Q 不明
新成長戦略 2020年まで
という文言があったが
体制に関しては2020年までに、という観点からは
何か記述は入らないのか

A 泉政務官
2020年の時点でのあるべき姿をいま書いているかなぁと
そのプロセスを全く書いていないわけではないが
現時点で宇宙庁を何年までに作るとか
そういうところまでは書いていない

Q 毎日新聞
民間との共同体制をどう作るのか
宇宙庁は役所のイメージなのか

A 泉政務官
議論の中のブレインストーミング的なものでは
新しい株式会社を作るようなイメージかなと
半官半民というと評判は良くないかもしれないが

要はそれくらいの営業感覚を持って
日本の宇宙資源を売り出していくという体制が
必要じゃないかという話はあった

Q 読売新聞
年間5,000億円という数字が出たが
いま国の予算が3,000億円
残り2,000億円は民間に負担をということか

A 泉政務官
いや、負担をしてもらいたいということではない
3,000億円も使い方によってはもっと民需を高めて
同じ100億円でもそこから500億円の成果を出すものもあれば
100億円が100億円として消化される研究もある
そこは予算の使いようと思っている

有識者の意識としては
同じ予算でももっと民需に結びつくものであるべきだし
民間側が積極的に自ら宇宙市場を作っていけるような、
それを後押しするような施策をやれば、
全て政府が出すことありきではない環境ができるのではないか

Q 朝日新聞
今日は大臣からは体制について何か意見や感想は出たか

A 泉政務官
宇宙庁かどうかは別にして
いまから日本が世界に向かって宇宙産業を前面に押し出していく
何らかの体制は必要だと言っていた

Q NHK
JAXAは文科省の所管
文科大臣との調整はないまま出すのか

A 泉政務官
文科大臣の会見ではそういった質問があって
有識者会議で議論されていることについては
有識者会議で議論していることだろうという話があった

今のところ有識者会議は
提言を宇宙担当大臣にするもの

有識者のみなさんが事前に文科省とどこまで調整をするか
必ずしも必須ではないと思う

Q あくまでも提言の段階ということか

A 現段階ではそうだ
しかし有識者の会合には常に大臣が参加しているので
提言だからということではなくて
それなりに提言に重みはある

月探査ナショナルミーティング

4月3日に開催された「月探査ナショナルミーティング」を取材してきた。

公式WEBサイト
https://www.boshu-jaxa.jp/tsukitansaNM/

このイベントが”ナショナルミーティング”という名にふさわしかったかどうか。答えはノーだ。一応、媒体の取材で行っていたのだが、「記事にしない」ということで、抗議の意志を示したいと思う。結局、何のために開催したイベントだったのか。

民主党政権になってから発足した「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」では、いま、本当に月でいいのか、という議論まで出ている。自公時代から続く「月探査に関する懇談会」側としては、月探査にはこういう意義がありますよ、ということを全力でアピールすべきだし、そういう説得力のある話が聞きたかったのだが、驚くほど危機感は希薄。熱意も最後まで感じられなかった。

当日のプログラムは以下の通り。

13:00 第1部講演

13:05~13:20 日本の月探査の現状(JAXA・加藤學教授)
13:20~13:50 米国の宇宙探査と日本への期待(NASA ジャスティン・ティルマン駐日代表)
13:50~14:00 「月探査に関する懇談会」における月探査シナリオ(月探査に関する懇談会・白井克彦座長)

14:00~14:20 休憩

14:20~16:45 第2部討論「日本らしい月探査への夢と希望を皆で語ろう」
パネリスト:
前原宇宙開発担当大臣、JAXA・若田宇宙飛行士
白井克彦、井上博允、古城佳子、長谷川義幸、山根一眞
学生パネリスト5名

16:45~16:55 休憩

16:55~17:30 第3部対談「月探査への期待」
若田宇宙飛行士、山根一眞、前国立天文台長・海部宣男

第1部は、まぁいい。基礎知識があまりない人も会場にはいるだろうから、現状の説明は必要だ。「月探査に関する懇談会」についての白井座長の説明については、いろいろと思うところがあるのだが、それは後述したい。

問題は第2部。「ナショナルミーティング」というからには、この「討論」がメインになるべきだ。時間も2時間25分と長く確保しており、(この手のイベントでありがちな、まず各パネリストがそれぞれ10分くらいでプレゼンして、最後の議論の時間がほとんどありませんでした…ということにならなければ)十分議論になるだろう。前原大臣の出席も意味として大きい。担当大臣がどう考えているのか、議論を通して知りたい。

が、しかし。

「なんじゃこりゃ?」とまず思ったのは、ひな壇の配置。前列に座ったパネリストの後ろに、50人くらいいそうな学生達。この人数で討論するのか? それに、「月探査に関する懇談会」の構成員5名はいいとして、一般からのパネリストが学生のみというのはどういうことだ?

最初に、学生パネリストからのショートプレゼンがあった。面白い意見も少しあったのだが、全体として見れば、若者らしい青臭さがあり、優等生的な答弁といった印象。そりゃそうだ。学生がこんな場に出てきて、批判的なことはなかなか言えるものではない。学生を集めたのは、「将来の月探査を担うのは次世代の若者だから」という理由らしいが、単に、扱いやすいような人選をしたのでは、と思えてしまう。

念のため補足しておくと、5名の学生パネリストは、みな真面目に考えて、参加していた。問題なのは、むしろ大人の側だ。「討論」といいながら、「すごいねー」「しっかりしてるねー」的な反応でべた褒めするばかりで、はなから対等に話し合おうという雰囲気は感じられなかった。一体、何のために集めたのか。

そして最大のガッカリ事項は前原大臣。1時間も滞在しておらず、ひな壇の学生とのやりとりが少しあっただけで、会場との意見交換は全くないままだった。これで国民との対話を果たしたと言えるのか。

発言内容も、あまりにもお粗末。せっかくの国民との対話の場だ。ケネディばり、とまでは行かなくても、「~年までに~をやる!」と宣言くらいして欲しかったのだが、「国民の意見を聞いて決めたい」などの姿勢に終始。挙げ句の果てに、「情報収集衛星はもっと必要」などと言い出す始末だ。彼は、「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」で先生方からちゃんとした意見を聞いているはずだが、一体何を勉強してきたのか。もともと、タカ派の政治家なわけで、情報収集衛星が大好きなことは分かっているが、このイベントでわざわざ言うべきことだろうか。

もう1つ。他国が月に人間を送ったときに、日本人がそこに行けなかったら、「誇りや自尊心が失われると思う」というようなことを言っていたが、本気で言っているのだろうか。これは個人的な感覚なので、人に押しつけるつもりはないのだが、私はもう40年も前に人間が行った月に再び誰かが行ったところで、あまりワクワクしない。それよりも未踏の地だ。火星に行くためには大きなギャップがあるが、地球近傍小惑星なら、現実的な予算・スケジュールで実現できるという検討もある。イトカワみたいな小さな星に、人間が立っていたら、もっとワクワクしないか?

加えて言うならば、月探査は、誇りや自尊心などでやるべきことではない。第2部のタイトルにあるような、夢や希望でやるものでもない。これは現実の話として議論していることだ。科学的な意義や、あるいは将来の利用を考えた上で、戦略的にやるべきこと。第2部は、タイトルからしてボケている。いまだに夢だ希望だと言い出しているようでは、建設的な議論ができるわけがない。

前原大臣が退席後は、もうグダグダ。ひな壇の後ろの学生に話を振ったり、たまに会場から意見を聞いたり、1時間以上も、生ぬるい時間が過ぎた。第3部が押し気味だったので、むしろそっちに時間を配分した方が良かったのでは。

話が前後したが、第1部の白井座長の話について、思ったことを少し。私はこの講演中、日本がなぜ有人の月探査を目指すのかについて、白井座長がどう説明するのか、注意深く聞いていたのだが、結論から言うと、満足のいく内容ではなかった。月探査をやるということ。これはいい。科学的な意義は分かる。では、なぜ有人なのか。無人機による探査だけでは駄目なのか。一番大事なのはそこなのだが、明確な説明がない。

私としては、もし本当に「月を経由しなければどこにも行けない」というのであれば、どんどんやって欲しい。私は人類が外へ進出すること自体には大賛成なのだ。しかし実際には、様々な選択肢が存在する。最初が月の有人探査でいいのか。順番の差はあっても、いずれ将来には、月面を利用するようになるだろうが、いま議論しているのは、この10年、20年の話だ。宇宙予算が限られる中で、まずは最大の効果が得られる場所に投資する必要がある。

日本は独自の有人輸送手段を持っておらず、このまま月を目指すのであれば、他国との協力が必須となる。私が懸念しているのは、膨大な経費をかけながら、キーとなる技術は結局他国に握られたまま、という事態だ。とりあえず日本人を月面に送ることはできても、それで日本のプレゼンスが向上するのか。同じだけの予算を使うのであれば、もしかしたら独自の有人ロケット・宇宙船が開発できたのではないか。もしかしたら、小惑星にも行けたのではないか。

もともと、日本が月の有人探査を言い出したのは、ブッシュ前大統領のコンステレーション計画が前提としてあったはずだ。しかしオバマ政権になり、それはキャンセルされた。影響は決して小さくないはずだが、「月探査に関する懇談会」はいまのところ、当初の慣性だけで動いているように見える。米国なしでどうやって行くのか、明確なビジョンが見えてこない。

白井座長からは、月探査のロードマップについて、2015年頃、2020年頃、2025年頃と、段階的に探査機を送るというプランの説明があった。この計画自体は良いと思うのだが、「2015年頃」となると、こんなのんびり議論ばかりしていて、果たして間に合うのだろうか、という気がしないでもない。本当ならば、「かぐや」後継機くらい、もう予算を付けてさっさと開発を始めていないとおかしいのだが。

まぁ、「月探査に関する懇談会」も、当初は2足歩行ロボットの是非について紛糾するという馬鹿げた事態になっていたわけで、今回の説明において、イラストやCGにヒューマノイドが全く出てこなかったのはまだ良かった(上半身だけヒューマノイドの”ガンタンク型”はあったが)。ここにきて、ようやく本来の議論に戻れたということかもしれない。井上委員は相変わらず、ヒューマノイドを支持しているようだけれど。

イベントの最後、前方のスクリーンに大画面で「かぐや」からのハイビジョン映像が映し出され、「ふるさと」の唄が流れる。「いいイベントだった」と感動して帰ってもらおう、という意図が見え見えの演出を、私は冷め切った思いで見ていた。とんだ茶番。これで、「国民からの意見を聞いた」とでも言うつもりだろうか。

この意味のないイベントで、1つ光るものがあったとすれば、それはやはり若田宇宙飛行士の存在だろう。彼は、このイベントのために、前日に来日し、米国にとんぼ返りするという。疲れもあるだろうに、終始笑顔で対応し、自分の役割を果たしていた。それだけに、この内容はあんまりだろう、という思いがある。

イベント終了後、控え室にて、若田宇宙飛行士の囲み取材があった。以下、私の質問への返答のみ抜粋して掲載する。

Q 月に行くにしてもどこに行くにしても、まず地球低軌道に出る能力がなければ話にならない。そういうこともあって、若田さんは「日本も独自の有人輸送手段を持つべきだ」と言っているのだと思うが、気になったのは前原大臣の反応。以前、若田さんと会談したときは、もっと前向きな発言をしていたように思うが、今日は情報収集衛星を力説していたばかりで、ずいぶんと後退したような印象を受けた。若田さんはどう感じたか。

A 大臣からは、日本がやらなければならないミッションは何か、しっかりと見つめ直す必要があるという話があった。情報収集衛星の重要性についても仰っていた。そのために、日本はロケットを持っているんだと。そういう意味では、ロケットの信頼性を高めていくことは、人工衛星を打ち上げることのみならず、長期的に見れば、それが有人宇宙機に使えるような信頼性の高さに繋がっていくと思う。大臣がミッションを明確に捉えているということで、それは有人にも繋がっていくんじゃないかと、そういう風な印象は持った。

Q 今回、後ろ向きになったというようには捉えなかった?

A ええ。前回の会談は、大臣になられた直後だった。それからの間、本当に宇宙のことをしっかりと勉強されて、世界における宇宙開発の現状を捉えた上でのご発言だったという感じを持っている。

Q 個人的には、「日本も独自の有人ロケットを持つ」と宣言くらいして欲しかったのだが。

A そうですね。ただ、やはり宇宙開発担当大臣が自ら、こういうナショナルミーティングという機会に参加して、しかも学生の皆さんとこんな長い時間お話をしてくださったケースというのは、なかなかまれなケースだと思う。前原大臣のほか、泉政務官もいらっしゃってくれたが、政治の分野でも、月探査に関して強く関心を持って、取り組んでくれているという印象を持った。

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議 第4回会合

3月30日、「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の第4回会合が開催され、同日、泉政務官による記者ブリーフィングが行われた。以下にその内容をまとめる。

ーーーーーーーー
泉政務官

今日は第4回の会合を開催した。
大変失礼ながら、私自身は別件で到着が遅れてしまった。
前段の部分の議論は聞けていないが、大体その後の説明を聞いて、
今日は特に新経済成長戦略の進め方というところにほとんど議論を使い、
そして今後のタイムテーブルの確認したということだ。
主にその2点について議論した。

新経済成長戦略の進め方については、
宇宙政策を成長戦略にのせていくときに、
各省それぞれから案が国家戦略の側に届いているという現状がある。
一方で、宇宙戦略本部があるということを踏まえれば、
やはり本部の中で調整しながら宇宙政策を一本にまとめて、
国家戦略のほうにお出しするのが全体の整合性から見ても
よろしいのではないかという指摘が有識者会議から出されて、
基本的に我々政務三役も同じ思いである。

各省からそれぞれ宇宙政策に関する新成長戦略のペーパーが出されているわけだが、
我々はいまそれを集約している。
それを我々自身でよく研究させてもらって、ここはひとつ
有識者会議の皆様にある種の旗振り役になってもらって、
広範な宇宙の専門家、
とくに基本計画にもとづくそれぞれの分野の専門家のかたに知恵を借りたい。
100人くらいの宇宙の専門家、利用・開発それぞれの専門家に集まってもらって、
タスクフォース会合を4/2~3に開催したい。

これは政府そのものの会合というよりは、
有識者会議の有識者のみなさんが新成長戦略に向けての宇宙政策をみたときに、
さらに整合性のとれた、より戦略性のあるものに、
大きく仕上げていくための取り組みであり、
自主的に開いて頂く形を考えている。
場所は東大の本郷キャンパスで行いたいということ。
これは政府の会合ではなく、あくまで有識者の皆さんの自主的な会合。
我々としてもぜひ取り組んでもらって、最終的に良いものを
有識者の先生方でまとめてもらう一助にしてもらいたい。
その動きについては了承した。

その会合を経て、おそらく何らかのペーパーが上がってくると思うので、
それを有識者会議の中で議論させてもらい、最終的には国家戦略のほうに
提出させていただく。

今後の有識者会議のスケジュールについては、
4/6 日本の宇宙開発体制について、何かしらの案を示してもらいながら議論
4/13 成長戦略についての提言の案が出てくる時期、それについて議論
今後のあるべき宇宙開発体制については引き続き議論
4/20 最終的な有識者会議の提言書について議論、検討

ーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
タスクフォースの役割について
各省からの案をここで議論してまとめるのか

100人の専門家は大人数だが誰がどう選んだのか
もしくはもう決まっているのか

A 泉政務官
現在すべての方のお名前を出す状況ではないが
JAXAのかたもたくさんいる
あとは企業、各省庁の担当者にも声をかけている
実務的、専門的な話をしてもらうので、
有識者の先生方に人選は任されている

役割については
各省庁の方にも来てもらうので、
最終的には一本にまとめたい

Q 新しい提案が出されるというわけではないのか
すでに上がってきているということか

A すでに上がってきているものを
どうまとめるかという理解だ

Q 読売新聞
タスクフォースについて
松井座長の提出資料を見ると、
位置づけについて
中長期的が有識者、
短期的がタスクフォース会合とある
そういった役割分担か

A 泉政務官
そうなる

Q NHK
資料4-4 今後の議題について
4/6の宇宙開発体制案
有識者の先生が案を示して
それをたたき台に議論するのか

A 泉政務官
そういうことをイメージしている
もちろん宇宙庁という考え方や
いまの戦略本部でいかに政策立案を実施していくか
いまはいろんな意見が併存している状況
先生方から案を提示してもらう

Q 何か結論を出すのか

A 多分4/20の最終的な提言の中には
そういうものが入る
政策を実現する体制案などについて提言がなされるのでは

Q 東京新聞
今後の戦略本部の開催予定について
各省庁による会合の開催予定について
教えて欲しい

A 事務局
まだ決まっていない

Q 最終的な提言が決まった後に
戦略本部の会合が開かれて
総理も出席する流れか

A 泉政務官
このゴールを持ってして開くというところまで
まだ我々も決定していないが
いずれかの時期に本部会合は持ちたいと考えている
ただそう頻繁には持てないので、次の本部会合に
どこまでの荷物を載せていくのか考えたい

3/31追記
松浦さんのWEBサイトにも記事が掲載された。私の方はいつもながら単なる”取材メモ”なので記事と呼べるものではないのだが、松浦さんの方にはきっちり考察も書かれているのでそちらを参照するといいだろう。また、有識者会議の秋山先生のWEBサイトには、さっそくそれを受けて、返答が書かれている。そう、いま必要なのはこのスピード感なのだよな。

金星探査機「あかつき」報道公開フォトレポート(その2)

続いては、同時に公開された小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」について。「相乗り」の衛星ではあるが、「機械」として見れば、じつはこっちの方が面白い。

概要については、JAXAのWEBサイトでも見て欲しいが、要は太陽光を受けて進む”宇宙ヨット”なわけだ。JAXAのは、薄膜太陽電池も貼り付けてあって、ついでに電力も得られるのが特徴。燃料と電力の問題を一気に解決できる素敵な技術である。

「ソーラー電力セイル」は、せっかくの大面積を活かして、発電能力も持たせたものになる 主要諸元。「あかつき」と一緒に金星に向かった後は人工惑星となる
ミニマムサクセスとフルサクセスの定義。展開に成功するだけでも世界初となるが、せっかくなら加速まで狙いたい セイルの構造。展開時は一辺14mの正方形となる。一部は太陽電池と液晶デバイスになっており、機能を持たせてある
展開する様子のCG。最初はこのようにセイルは本体に巻かれた状態になっている まずは1次展開。先端の重り(0.5kg×4個)を使って、遠心力で十文字に引っ張る
セイルを拘束していたバーを倒して、2次展開を開始 展開後しばらくすると、徐々に安定する
本体の4方向にカメラが搭載されており、展開の様子をモニターする しかし上方からも見たいところ。そのために、分離するカメラも搭載されている
分離カメラからの映像。このような映像が届けば、展開は成功だ 展示されていた「IKAROS」の1/20模型。割と新しいもののように見える
これが「IKAROS」のフライトモデル。セイルは畳まれて胴体にグルグル巻きにされている 上から見たところ。太陽電池が取り付けられている。今回は試験機であるため、セイルで発電した電力は利用しないとのこと
左上の四角い箱が先端マス(重り)。そこからヒモが延びていて、これがセイルを引っ張る。90°間隔でこれが4つ取り付けられている この黒いバーでセイルを拘束している。これも90°間隔で4つあり、右側にスライドしていって、セイルを少しずつ伸ばしていく
展開の様子を確認するために、周囲には90°間隔で4カ所にカメラが取り付けられている 上から眺めるために、分離させるカメラ。こちらは2台が搭載される
太陽電池の面を良く見ると、小さな穴が開いている。おそらく、分離カメラはここから出る セイルは遠心力で展開する。IKAROS本体にスピンをかけるために、ここにスラスタが搭載されている。2つ見えるのは冗長のため

また同日、たまたま試験をしていた水星磁気圏探査機「MMO」の熱構造モデルも公開された。こちらは水星探査ミッション「BepiColombo」として、ESAの水星表面探査機「MPO」とともに水星に向かう。

金星探査機「あかつき」報道公開フォトレポート(その1)

2010年3月12日、JAXA相模原キャンパスにおいて、金星探査機「あかつき」の報道公開が行われた。「あかつき」は今年5月18日の打ち上げが予定されており、搬出前に見ることができるのはこれが最後。前回の公開時には、一部のセンサーや太陽電池パドルなどが搭載されていなかったが、今回は、ほぼフライト時と同様の構成である。

前回のプレス公開については、以下の記事を参照。今回のプレス公開も、すでに各誌で報じられているので、そちらを見てもらいたい。ここでは、フォトレポートという形で、写真を中心に紹介してみたい。

JAXA、金星探査機「あかつき」をプレス公開
~“スーパーローテーション”現象の謎の解明に挑む
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20091201_332700.html

JAXA相模原キャンパス。見学も可能だ 必見はM-Vロケットの実機展示
あかつきの概要 主要諸元
搭載するセンサー 射場でのスケジュール
打ち上げ後の運用計画 公開された「あかつき」。製造はNECが担当
初めてセラミックスラスタを採用。従来の金属製よりも耐熱性に優れるメリットがあるほか、コストダウンにも繋がっている(前述の記事参照)。推力は500N こちらの面は放熱面になっており、銀色の「OSR」(Optical Solar Reflector)と呼ばれる部分で太陽の光を反射するようになっている。右側に飛び出ている2つはスターセンサー
姿勢制御用のスラスタ。下向きのノズルが推力23N、横向きの小さなものが推力1Nとのこと 右側にも同じものが搭載されている
上側には、横向きのスラスタはない 右側も同じ。反対面も同じ構成だ
主要なセンサーは、手前の辺に並ぶ。左側の突起物はローゲインアンテナになる 反対側からの写真
これはミディアムゲインアンテナ。可動するそうだ 上方にも同じものが搭載されている
太陽電池パドルが畳まれているので、その下にあるハイゲインアンテナは隠されている。前回の公開では見ることができた 右側が「あかつき」。左側は、相乗りする「イカロス」(IKAROS)

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議 第2回会合

「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の第2回会合が開催された。
以下は会議後に開かれた記者会見の内容。取材メモをそのまま添付する。

(正式版を掲載しました。速報版との大きな差はありません)

出席者:泉政務官

今日は第2回会合
前原大臣は30分ほどで国会のために退席した

今日の話し合いは新成長戦略に対して
宇宙から何らかの提案をしていくことになるので
そのための議論ということと

月探査についても
各先生からご意見をもらった

また米国の計画についての意見も頂いた

あるいはJAXAの位置づけ、体制についても
ご意見をいただいた

今日は主にそういう点について話し合いをした

意見交換ということで
基本的に何かを決めたということはないが
いくつか話をすると

3/11に宇宙機関長会議がある
基本的にISSの運用の延長については
JAXAとしてもそれを求めてきた流れがある
基本的には今回の米国の方針は
批判をしたり中断を求めたりするものではないが
まだ米国側の具体的な考え方がそう示されていない状況

日本としてはあまり踏み込んで支援を表明したり
具体的な在り方を明言したりすることは
現段階ではしないほうがいいのではないかという
意見が多かった

今後のISSについての米国の考えを注視しながら
もう少し今後の協力のあり方について検討していく姿勢が望ましい

月について
前回の懇談会

その中での基本方針
レジュメでも示されていたが
やはり月での2足歩行のロボット
現時点で目標にする状況にはないという意見が複数あった

月をどう利用活用するのか
もっと明確にすべきだし
本当に月なのかも
場合によっては考えるべき
という話もあった

いずれにしても月であるならば
国民に理解してもらえる理由を明確にしないと

そして体制については
今後宇宙行政の一元化に
取り組んでいかないといけないが

JAXAの中のISASの存在については
いろんな案が提唱されているが
とにかく必要なのは科学をしっかり守っていく
日本の科学の優位性を生かしていく

という意味で、
ボトムアップ、自由な発想、独自性というものが
特に大学と連携している位置付けのISASというものについて、
その役割が衰えることがあってはいけない

体制として
まだ頭の体操のレベルだが
JAXAと同一組織で引き続きやるのがいいのか
それとも分離独立もあり得るのではないか

しかしその場合でも
予算と許される研究の枠が確保されなければ
ただ単に組織を切り離しても仕方ない
一体的に保証されるなかでしかできないので
今後そういうことも検討しないといけない

新成長戦略については
基本計画にもとづいてまずは総花的に記述はするだろうが
一方で2020年までに何を具体化するのか、何を実現できるのかを
より明確に書いた方がいいのではないかと

一般的に、例えば民需の割合を増やすとか
衛星打ち上げの受注をするとかだーっと書いていくが
とはいえ、そうであるならば
より具体的に現実性をもった記述にするべきではないか
という指摘もあった

さらっとした説明になるが
そういったことが今日の議論の中ではあった

前原大臣からは冒頭の挨拶で
「今日はまだ収束するわけではない
思いっきりいろんなことを言ってもらって
議論を拡散していく段階であると考えている」
という話があった

そして30分で退席
議論の途中での大臣の発言はなかった

ーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
ISSの延長について出た意見
延長そのものに対して意見を留保なのか
延長は前提でどのような協力をということについての留保か

A 泉政務官
延長は前提だと思う
日本の乗り方の度合いには様々あろうということ
離脱するということではないが
全面的協力なのかというと
まだそういう状況ではない
先走ってはいけないという状況

Q 資料には撤退すべきという話もあるようだが
秋山先生の資料

A 秋山先生はそういう意見だった
そうでない意見もあった

山川先生の資料の中には
5P
その中のG
参画はするけれども
積極的に財政負担を、という感じではない書き方

度合いの違いはあっても、
前のめりになってはいけないというところは
共通していた

Q 東京新聞
宇宙行政の一元化
どういうスケジュール感なのか

A 泉政務官
今日の資料でいうと
山川、秋山先生は宇宙庁の創設と言っている

全体計画をしっかり構築できる体制は当然できるべき

政権交代以前から基本的にイメージはそう変わっていないが
すいません、まだあまり進んでませんという状況で
まだ一元化は正直言うとめどは立っていない

Q 委員からはスピード感を持ってやるべきという意見か

A スピード感という発言はなかったが
描かれている絵姿は大体一緒だろうし
やろうと思えばそんなに時間がかかるものではない

Q 実現には難しい側面もあると思うが

A 現時点ではそう
ただそこはある種、政治の決定に大きく委ねられているところ
我々がまだその状況に至っていないということなんだと思う

Q 産経新聞
体制について
これまで戦略本部でのWGが中間報告を出している
それをベースに話しているのか
それと結論はいつまでに出すのか

A 泉政務官
ここまで率直に言うと事務局はドキドキするかもしれないが
今それをベースに話し合いをしているという状況ではない
時期についても設定されていない

Q するとWGとの有識者会議の関係は

A いまは併存
有識者会議は前原大臣の直属組織
戦略本部の中で位置づけられているものではない

常設的にはWGがあるが
今のところWGとしてはいくつかの案を出してもらっていて
その時点での役割はすでに果たした

政治に決定がゆだねられている状況だと
自分ではそういう認識しているが
今のところスケジュールは決まっていない

Q その2つの流れの収斂は専門調査会になるのか

A 有識者会議の場合は
専門調査会にも本部にも上がっていくものではない
あくまでも大臣に対して1つの結論を出していくことになる

Q 読売新聞
ISSについて確認したい
撤退ではないが前のめりはどうかという話
日本政府の方針を拘束するような性質のものか
それとも先生方が言っただけで
機関長会議でJAXAがどう主張するかについて
拘束力はないのか

A 泉政務官
少なくとも宇宙担当の政務三役として言えば
機関長としてのJAXAの理事長がどう発言するか
まだ明確に説明を受けていない

米国であれだけの計画の変更があったことを踏まえて発言するのであれば
当然事前に我々がチェックすべきものと考えている

JAXAがどう発言するのか事前に説明をもらって

現時点での認識としては
今日の有識者からの指摘
それなりに同意できるものだと考えている

政務の側としても、あまり前のめりになるべきではないという見解

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議

「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の第1回会合が開催された。

会合自体は非公開だったのだが、終了後に記者ブリーフィングが行われたので、そちらに出席してきた。

以下はその内容。取材メモをそのまま添付する。

ーーーーーーーーーー
出席者:泉内閣府大臣政務官

今日の3時半から5時まで
有識者会議の初会合を行った
本日付で官房長官決裁ということで
前原大臣のもとで開催することが決定された

座長が松井先生
副座長が中須賀先生

プラス政務三役
今日は中須賀先生は欠席

冒頭に前原大臣から挨拶があって
戦略を作っていきたいという話があった

資料1~3があるが
資料を見たかたちの議論ではない
まずは全体の意見交換というかたちで行われた

それぞれから意見があった

これまでの宇宙開発戦略専門調査会との関係について
有識者会議は特に3~4月と集中して開催する

有識者会議の中で結論というか提言的なものができたら
これを調査会のほうにわたすことになる

有識者会議は
まさに国の方で新成長戦略がつくられるなかで
そのなかにも宇宙政策が盛り込まれるように
そういった提言を行っていこうと話がもたれた

宇宙基本計画は昨年6月に出されたわけだが
開発利用計画
いますぐに何か変更がきまったわけではないが
特に選択と集中というか
より戦略的に再構成をして考えていく必要がある

計画の見直しという言葉ではなくて
計画の中でどこをより強く進めるのかということで
今日は意見交換

それぞれの先生から話があった

例えばどこを目指すのか
地球・月の戦略を重点的にやるのか
それとも深宇宙を目指すのか

そういうことは今後議論が必要だろうと

あるいは国としてどこまでやるのか
どういうところを民需にお願いするのか

いままでの国の宇宙開発というものについて
本当にユーザーサイドの考え方に立ってきただろうか

ユーザーサイドが宇宙に魅力を感じ
そして宇宙に対し何らかの構想を持ち
ユーザーサイドからアプローチして
開発に至ることが少なかったとの指摘もあった

ユーザーコミュニティを育てていくことも重要だろうと
そういう中で教育も重要であるという話も今日の議論の中であった

原則非公開ということにしている
まさに政務三役も含めて
自由闊達な議論をしていくということで非公開にしたい

今後については
3/9が次回 1.5時間ずつ行う

3/16、30、4/6、13、20
原則的には火曜日に行う

次回も今回同様に自由闊達に議論しようと

ーーーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
短期間で結論を出すというのは
新成長戦略に盛り込むことを意図したのか
別の狙いが?

A 泉政務官
新成長戦略ということがあって
3月~4月に集中的に

それ以外の事情はない

開発利用計画を作られてきた経緯があるので
開発利用計画を前提にしながら
その中でよりスピードアップできるものや
重点的に力を入れるものを決める

そういうことはそう長く議論するものでもない

Q 東京新聞
資料には「長期的な視点で」と書いてあったが
そうすると20年30年先を見据えた長期的な方針というよりは
いまの基本計画の中に盛り込まれた中で
どこに力を入れるかを決めるのが中心になるのか

A 泉政務官
一方ではそもそもの大方針を闊達に議論する場

基本計画をベースに重点を議論するのはそれはそれ

一方では、日本の宇宙政策はどうあるべきかということも
この有識者会議の中では議論する

例えば有人について
議論をしないわけではない
計画に縛られたものをやるだけではない

Q H20に宇宙開発委員会で
長期的な計画が出ていたが
それとの関係は

A 泉政務官
議論でも出てきたが
これまでの日本の宇宙の体制というのは
いろんな研究者の研究を持続させるために総花的にやってきた

宇宙関連産業がそれほど広くないこともあって
あちらの会社もこちらの会社もと
そういう意味では
いままでのいまままでの計画、長期的な戦略はあったが
そういうものを踏まえながら
場合によっては選択すべきところは選択する
それを議論できる場も必要であろうと

これまでの行政サイド
あるいは業界サイドでは
なかなかできない議論

一例で言うとGXの件
自主的にはなかなか切りにくい
ここは政治が意志決定をしていかなくてはいけない

今回の有識者会議は意志決定するにしても
しっかりと有識者と意識の共有や
知識の積み重ねをさせて頂く中で
総合的な判断をしていくような場としたい

Q 読売新聞
日本の宇宙政策がどうあるべきかについては
専門調査会でずいぶん検討してきた
そこでまとまったものに不備があるのか?
それとこの人選はどういう基準か
大学研究者が多いが

A 泉政務官
人選については
造詣の深い方を我々なりに選んだ
網羅すると専門会とどう違うのか

網羅するものはいくつも作れるが
我々の政権の中でぜひ意見をいただきたいという人を選んだ
明確な基準はないが

一方でこの方々を中心に据えながら
ヒアリングでほかの先生にも来てもらう

事業者にも来てもらう予定

専門調査会で出てきたものが
かなり数が多い
しかし日本の宇宙にかける総予算はそう多くない中で
すべてをおしなべて進めるのが本当にいいのかと
政治の側から見たら計画は計画としながらも
その中でより具体化する力配分は考えないといけない

構想としてもう少し研究を続けるものもあれば
具体化をしていかないといけないものもある

アメリカの今回の宇宙政策にあわせた、
基本的にはアメリカにすぐ影響されるものではないが、
情勢の変化を踏まえたときどきの対処が必要

Q 日経新聞
アメリカの政策
ISSは2020年まで延長
コンステレーション計画の打ち切り
それに議論は

A 泉政務官
今日の議論の中では
アメリカの話題はそんなに出なかった

アメリカについては
月に対するアプローチが変わったというくらいの話は出た

今日はそれに対してこうしていこうという結論はなかった

Q 今後のアメリカの方針についてはこの会合では議論はしないのか

A 泉政務官
アメリカの方針は我々が変えられるものではない

基本的にアメリカの現状を踏まえながら
日本の強みをどこで出していくかという議論にはなる

ISSでの役割もあるし

今後の宇宙開発は国際協力なしには行っていけないので
我が国の強みの部分
我が国がなくてはならないというものを
いかに作っていくかは
今後大事な議論になる

Q 日経新聞
日程について
4/20に提言なりをまとめるのか

A 泉政務官
基本的にはそうなる

1回くらいずれ込むのか
4/20までに議論してその後にまとめたものを作るのか
という話もなくはないが
基本的には4/13までに原案を作って4/20に了承するようなスケジュール

Q 読売新聞
今日の資料を見ると衛星市場とかロケット市場のデータ
最終的には宇宙産業をどうすすめるのかというところに
重点を置くように見えるが議論の重点は
長期的な戦略に重点を置いて議論するのか
あくまで産業の振興に重点を置いて提言をまとめるのか

A 泉政務官
今日は資料を見て議論はしなかった
なので出た資料とはほとんど関係がない
全体的な話をした

産業や利用という言葉
今までの使われ方の議論だけでは足りない

本当の意味でユーザーサイドに立っていたのかといえば
それは国民全体を巻き込むということも含めて
足らなかったという共通認識はできていたと思う

利用と言えばすぐいくつかの会社、産業界ではなく
真の意味での国民参加ということは
今回議論されるのではないか

ホリエモン・トークライブ

新宿ロフトプラスワンのイベント「ホリエモン・トークライブSESSION 6 堀江貴文&松浦晋也&笹本祐一&あさりよしとおの宇宙はそんなに遠くない!」を見てきた。

“ホリエモン”こと堀江貴文氏は、今年になってから各メディアのインタビューにおいて、宇宙開発をやっていることをさかんにアピールしていた。その中で、「僕らが」と表現していたのがすごく気になっていた。一体誰とやっているんだ?

で、今日、それが判明。なんと協力者は身内に。私も宇宙作家クラブのメンバーなんだが、全然知らなかった。ずーっと、こんな楽しそうなことを、内緒でやっていたのね。

正式なプレス発表でも何でもないが、結果として、これがホリエモンの宇宙プロジェクトのお披露目となった。

せっかくなので内容をそのまま以下に紹介したい。なぜか録音を禁止されていたので、メモの正確さは多少落ちるが、それを踏まえた上で、参考程度にどうぞ。

堀江
生まれる前にアポロが月に
いま37歳
当然ながら太陽系の外に行っていると
当たり前ながら思っていた

起業して
ミールが売りに出ていた
20億円くらいだった
頑張れば買えるかと思った
しかし年間の維持費が同じくらいかかる

あと3年待ってくれと思ったが
待ってくれずに南太平洋上に落ちた

あのころから宇宙開発はおかしなことになっていると思った

スペースアドベンチャーズ
2002年
同じことを考えているやつがいると思った

2004年に社長に会った
そいつに会ったら
日本人がお金を払って行っただろう、
あれを見てやったんだと言った
TBSの秋山さんのこと

松浦
TBSのトータルは50億円
ロシア宇宙庁には15億円くらい
今は30億円

堀江
そのあとロケットエンジンの燃焼試験
スペースX
2005年くらいに会っているが
彼はすごいなと
エンジンを作っている
俺も作らなきゃと思った

そのころにこの3人に会った

笹本
一番最初に会ったのはまだライブドアにいたころ

有人でフジという計画があった
あれは有志で計画したもの

あさり
既存のH-IIロケットで上げられないかという検討会

松浦
こういう報告書にまとまっている
これができたんであちこちまわったが芳しくなかった

笹本
カネがないと言われた
じゃあカネがあればいいのかと思っていろいろ人を探した

堀江
僕もあちこちで宇宙開発したいと言ってきて
コネもできていて
ロシアのカプセルを買ったり

日本でも誰かやっていないかと思っていたら
ガイナックスから紹介された

初めて会ったのが2004年

ガイナックスとは
オネアミスの2を作りたいと話をしていた
大ファンで何十回も見ている

地球で言ったらガガーリンの話
現代の話にしたい
民間で行くような

ジョイントで実際にロケットを飛ばそうと
それでマッチングされた

笹本
民間でやるんなら
最初はロシアから買ってくるのがよろしい
大学の先生に手紙を書いてもらうところから始めようと

打上げにはエンジンは最低4台必要
試験1台
本番1台
予備が1台
あと何だっけ

続けるにはダース単位が必要

ロシアは
そのあとアメリカへの売り込みに成功
アトラスとか
段々向こうが強気になってきた

堀江
エンジンの値段が高騰してきた

社長が言っていたのは
うちは12ミリオンで買えると

そしたらみるみるうちに値上げ

笹本
エンジンを買うにしても作るにしても
エンジンを知らないと交渉もできないと
で、作ることになったんでしたっけ?

堀江
それもあるが
商用で使えるモノは事実上ロシアしかない
なので値段が高騰している
これは作らないとまずいよねと

作らないと結局高く買わされる
ばからしい

世の中の人が知らないこと
ロケットが高いのは
ロケットが特殊だからではなくて独占しているからだ
市場原理にのっとっているだけ

たくさん作れば安くなるはず

そんなこんなでエンジンを作ろうと2005年に言っていた
そしたら僕が捕まっちゃった

拘置所のなかで設計図を見ていた
本物の設計図が某チーフデザイナーから差し入れられて
手書きのヤツが

検察庁の検事に宇宙の話をしていた
4週間くらい取り調べ
そのうち2週間はロケットの話をしていた

こいつはハッタリでなくて本当に考えていると思っただろう
ほとんど事件の話はせず

それを見ながら
あとは宇宙関連の本を差し入れてもらって
世界のロケットに詳しくなった

ソ連系がものすごく多い

そう考えると
ロシアの宇宙技術に関する独占は深刻な状況

松浦
ソ連は冷戦時代に徹底して開発

笹本
米国はシャトルまで

松浦
ガガーリンが第1世代
第2世代はプロトン 2段燃焼で150気圧くらい
プロトンはいまだにたまに失敗している

第3世代 エネルギアのエンジン 250気圧くらい

米国でいうと
第1世代
第2世代 シャトルくらい そこで終わった

堀江
いまは先祖返り

笹本
アレスIの打上げ見ました?

不格好で大笑いした
本気かと

堀江
なんであんな形に?

笹本
80過ぎのおじいちゃんから話を聞いていたとか

松浦
結構ありますよ
引退した技術者から聞いたと

それくら米国は技術が途切れている

堀江
エンジンの開発をするとそれがいかに重要か分かる

あさり
テキストにないものがある

堀江
ボール盤を使うときに軍手を使っちゃだめなんて知らない
書いてないし

松浦
次のエンジン デルタ4
性能は落としてコストはそれ以上に落とす
技術的に先に進んでない

堀江
ということでエンジンをつくることに

都内某所で

笹本
SF作家と漫画家が
相談に行くと

堀江
最初どこに頼んだらいいのか分からなくて迷っていた

あさり
工場は飛び込みの依頼はあまりメリットがない
ロケットの部品という明細が着いたときに
受けるべきかどうか
グレーだったら受けないのが普通
ずっと断られていたときに

堀江
インターネットのNCネットワークで検索した
1994年くらいに
受発注するサイトを作った
頭の片隅に残っていた
誰が使うんだろうと思っていたら自分が使うハメに

調べて
何件か回った

笹本
数百人規模のところは話すら聞いてくれなかった
数十人規模のところは少し

あさり
ロケットの部品を注文しにいったのが
SF作家と漫画家だった
趣味でロケットエンジンを作りたいと言ったら
ああそうかとすんなり

笹本
燃料漏れは怖いので精度は欲しい
高級な技術を持っている町工場へ

この写真
3つ手前にあるもの
インジェクタープレート
燃料はエタノール

堀江
燃料の検討から始まった
エタノールなら万一ばらまいても平気

笹本
毒性もない
買うのも簡単
薬局で買える
実際この前買った

無水アルコールは高かった
何が問題かというと
水を混ぜるとお酒になる
半分くらい酒税がかかる

工業用アルコールは不純物がまぜてある
酒にならないので酒税がかからない

笹本
近所のドラッグストアで反ダースくらい買ってきた

次のスライド

あさり
フライトモデルは考えていないので絶対に上がらないもの
厚くて重い
これが2006年の秋

笹本
写真はWEBに公開しないでね

堀江さんが拘置所で見ていた設計図を元に

パイプを切って
東急ハンズでも売ってないので

ジョイント

堀江
これは大事

笹本
斜めになっているのにパイプを
締め付けトルクで圧着されて密閉される

そう簡単に漏れない配管系ができる

松浦
重要なのは探せばすぐに見つかるパーツ

笹本
ベニヤを使っているテストベッド
家内制手工業的な

タミヤのモーターも

堀江
実際に燃焼するまで2年かかった

この写真は
2007年正月の絵

笹本
水流し試験

あさり
メーターはヤフオクで
窒素ボンベも簡単に

笹本
流量試験
風呂場で

第2期
うちのクルマで機材を積んで移動

この写真
穴をやすりで 大変
しかしロケットだと思うとすごく楽しい
家に戻って仕事すると落差

あさり
しかし俺の家にはあれが1年居座って
別に秘密にしてなかったが
人に聞かれればロケットのエンジンだ、と

堀江
これに3カ月くらいかかった
見ても分からないだろうけど

あさり
エタノールが入らない
水と若干粘性が違う
斜めに切るという

堀江
液体酸素が一滴も入らない
すぐ蒸発して押し返す

笹本
液体酸素を常温のパイプに入れると
片っ端から蒸発する

堀江
圧力をかけて入れるかという話になった

あさり
とにかく狭い
入れるんだったらタンクを冷却しないと

2個穴があるんだから両方使う
1個から入れてガスはもう1個から逃がす
その方法を見つけるまで3カ月

笹本
誰も教えてくれないし

堀江
そういうことをやりつつ治具ができる

あさり
シャトルの燃料注入を見ていてすごいないと
たった3時間で
すごいという意味がこれをやって変わった

堀江
これは熱電対
温度計であり水位計でもある

基板も自作
3人で分担

あさり
白い箱がコンピュータ
赤いのが緊急停止ボタン

堀江
これがカプラ
よく壊れる

笹本
これが電気系

あさり
これだけ物々しくても
バルブを開ける/閉めるしかしてない

そして自動制御で水流し試験

堀江
ぶつかって霧状にして

この写真は液酸が入っている

あさり
このときの問題
あそこで沸騰してガスになっている
この段階では出てない

堀江
液酸が大変

あさり
このあと断熱に至る

堀江
短いからいいだろうと思っていたら
重要だった

今はグラスウールじゃない
すごい断熱材

松浦
ウレタンフォーム

あさり
空気を閉じ込める

笹本
北海道は平気で水道管が凍る
冬にはロールで売り出される

堀江
断熱を完璧にすると
インジェクタのところまで液体のままで来た

笹本
このあと熱い映像に

堀江
このカメラがいい

あさり
カシオのEX-F1が笑っちゃうほどいい
600フレームで撮った

堀江
燃焼がめちゃめちゃよく見える

ビデオ
今はもっと良く燃えているが
これはかなり初期

あさり
いろいろ条件をかえて
こうじゃないと安定しないというバンドは分かってきた

堀江
600フレーム
昔はこれがなくて良く実験できたなと

あさり
デジタルなので即応性がいい
昔は現像するまで分からなかった

使ってみてビックリした

堀江
このカメラ
我々が一番有益に使っているのでは

あさり
ヨドバシでも12万円した
いまは7万円くらいで

松浦
そういうわけでロケットエンジンを作る人はEX-F1を購入すること

堀江
液酸
湿気の多いところでやると
水蒸気が凍って詰まる
結石みたいに
乾燥が大変だった
そのノウハウも

あさり
布団乾燥機を使ったり

堀江
それを全部手作りで

あさり
環境を整える方が大変

笹本
自動車の点火プラグを使った
意外と壊れない

堀江
カローラの
どこでも入手できる

あさり
安いのが重要

ーーーー休憩

堀江
日本の某所で粛々とやっている

松浦さんが忙しくてなかなか来る時間がない
そして来たときは大体実験がうまくいかない

ビデオの続き

笹本
では一番新しいのを

いまチャンバーなし

このあとチャンバーつき

キレイ

堀江
カメラだと迫力がないが
実際に聞くと半端ない

あさり
離れた場所で聞いていたが
すごい

とりあえずこの実験場はもうダメだねと

堀江
近所迷惑になる
近くても数100mは離れているが

笹本
これだとドンという感じ

あさり
離れるとパーンという感じ

松浦
上に逃がす方法はある

堀江
チャンバー付けていきなりうまくいくとは思っていなかった

うまくいったとき
僕とあさりさんだけだった

去年の夏

笹本
8/23らしい

堀江
今はさらに進化している
見せられないのが残念だが

笹本
今はちゃんと設備が整ったところでやっている

堀江
このまえ燃焼試験を
1日に10回近くやった
1秒くらいの短いのも入れて

さっきのは5秒の試験だが
いろいろ1秒も

笹本
ハイスピードカメラがあるので1秒でも分かる
燃料も食わない

パラメータは圧力を変えている

堀江
実験場には苦労した

笹本
行きやすくて
周りに迷惑がかからないところ

関東周辺を探して
まずダメだろうと

堀江
すごいところも検討した

質問コーナー

Q 今回公表したのはなぜ

A あさり
別に秘密にはしてなかった
1年間うちの台所にあった

Q 燃料はなぜエタノール

A 買いやすいから

Q どうやって圧力

A 堀江
ヘリウムになって大変になった

笹本
分子が小さいので漏れる

Q 松浦さんも関わっているか

A 松浦
関わっている
この件については完全にジャーナリストを捨てている

Q 北朝鮮のレベルはどのくらい?

A 笹本
残念ながら我々よりは進んでいる

あさり
われわれは後ろからガス圧で
なるべくローコストで軌道までがテーマ

堀江
ミスを減らすのが重要

Q 何億円も開発資金は出せるのか?

A 堀江
出すも何もそんなにかかってない

笹本
なつのロケットが目標

あさり
小学生が3段式ロケットを作って人工衛星を上げるマンガ
数百万~1000万円でいかないかと

堀江
1,000万円未満でやりたい

笹本
最初はみんなでカネを出してやろうと
1人あたり100万円くらいかなと

Q 目標はやはり有人ロケットか

A 堀江
目標は有人

笹本
目標の1つであって将来的には宇宙征服を
有人飛行だけだったら30億円払って行けばいいでしょ

堀江
笹本さんは30億円も持ってないでしょ
それに1回行ったら終わりじゃない

笹本
世の中を変えたいと思っている

堀江
今までの世界で
人間を安く打上げようと考えて作られたロケットはない

結論としては
僕らが作っている格安なエンジンで上げられるようにしようと

笹本
今のロケットがF1だとすると我々が作ろうとしているのはスーパーカブ

松浦
この考え方はシャトルの頃からあったが
周辺技術がなかなかなかった
今になればできるかなと

堀江
当分この事業はお金にならない
10~20年スパンでお金を続けられないといけない
道楽だからと言えるくらいでないと

参加したいと思った人は自分で工作したりして
スキルをためて欲しい

松浦
作ってみたいと思った人は
今のレベルだったらクルマ1台分以下
10人集まれば安く
ただし知識は必要

堀江
切磋琢磨して競争して
ある意味では協力したり

みんなで宇宙に興味あるんですと
集まって話をすることはあっても
なかなか作ることはないが
僕らは一線を越えた

一線を越える人がどんどん出てきて欲しい
「ロケット実験祭り」もできるようになればいい

あさり
ロケットを持ち寄って組みあわせるのもいいかもしれない

堀江
コラボできる仕組みも作れるといい
今度ロケットまつりにも呼んでください

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