はやぶさウィークリーブリーフィング第11回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月9日、はやぶさカプセルのキュレーション作業について、定例のブリーフィングを開催した。説明者は、向井利典・JAXA技術参与と、上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。

以下はいつものように取材メモ。

ーーーーーーーーーここから
向井

前回も説明したが
新しいヘラを使って採取した微粒子について
電子顕微鏡で観察して
粒子の同定とマッピングを継続している

前回は800個だったが
この2週間で増えて1500個になった

こういった微粒子の初期分析には
大半がミクロンオーダーなので
光学顕微鏡では見えないので
取り扱いに特殊な技術が必要

ナノテクのメーカーや専門家など英知を結集して
準備しているところ

今後どう作業していくか
分析に時間がかかっているが
いくつかオプションがある

現在は
B室の開封とサンプル採集を優先することにして
現在その準備をしている

まだそういう状況が現時点での状況

ーーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 読売
1500個というのは地球のものは除いた数字か

A 向井
明らかに人工的なアルミとかではないもの
地球外かどうかはまだなんともいえない

Q これは最初のヘラについていたものか

A 最初のヘラのまだ片面だけ

Q 毎日
B室 今後の段取りは
1500個の扱いはどうなるのか

A 向井
1500個の扱いは
ヘラに付いた状態なので
次の分析にはまず動かさないといけない

ピックアップの準備をやっている
光学顕微鏡では見えないので
電子顕微鏡を見ながら操作できるマニピュレータを準備している

いずれは初期分析に回るがいつかは現時点ではなんとも

A室をしらみつぶしに調べてからB室に行くのも考えられるが
いまの状況だと何年かかるかわからないので
現在はB室の準備をしている

段取りを決めて

開けるといっても
B室が下にあって蓋がある

ひっくり返さないといけない

A室の中にまだ残っていたらどうなるんだとか
いろいろあるのでその準備をしている

B室の開封
ネジを取ればいいというものではなくて

いままでリハーサルはしてきたが
そこは慎重にやりたい

手順は一応検討したものがある

Q 時期の目処は?

A 今月いっぱいには開くと思う

いままでの作業と並行作業になる
人も限られるので完全にパラレルにはならないが

今月20日か21日に点検のために停電がある
いま中にサンプルがあるので止まるのは困る
環境の整備
シャットダウンの仕方とか
再立ち上げの方法とかも
鋭意検討している

その前後の時間
あと連休もある
時間的に

できるだけ早く
間違いなくやりたい

Q 読売
確認だが片面が終わって1500個なのか
もう片面がまるまる残っていると

A まだひっくり返さないといけない

Q B室が今月中ということだが

A そういう予定だ

Q B室を開けてから
もう1回A室をヘラでやることは

A 向井
(かかってきた電話に出る)

A 上野
ヘラはA室は中断してB室に行く

Q 今の段階でA室を中断するのは
B室の方が有望だという理由か

A 向井
それよりもいまはヘラで分析
どう取り扱うか確定しないと
目処がないと
たくさんヘラで捕まえても
処置の仕方に困ることになる

その目処がついてから
次のステップに行きたい

たくさん粒子があることは分かったが
初期分析にどう回すか
目処がないと
次の作業に移るのは危険だという判断

B室はまだ開けてないし
たくさんあるかもしれないしないかもしれない

それよりも全体を見渡した方が

最後またA室に戻ることもあり得る

Q B室を開けて
ヘラを使うかどうかはわからない

A ヘラの作業はは慎重にしないといけない

A 上野
ヘラの作業自身は
回収作業がそれなりに大変なのが分かってきている
数も多いので

今後どういう方法がいいか並行して考えながら

初期分析に入る時点で
全体の様子が分からないと目処が立てられない

あまり極端にスケジュールが遅れるのも望ましくない
B室への準備に向かっているところ

Q 媒体不明
A室のヘラの観察も今後も平行して続ける
作業が倍になるが人員の関係からどうか

A 向井
人員は限られる

どんどこどんどこやって間違いがないように
次どうするかは一回開けて見てから考えたい
また裏面も続けるかどうかも

いまはB室を優先
A室にばかり集中するのは

Q NHK
ヘラから回収したあとの作業
小さい粒子の取り扱いが大変で
取り扱えない可能性も出てきた?

A 向井
現状では取り扱えない
マニピュレータもない

Q 新たな設備を追加すれば
できるようになるのか

A その準備をしているところ

電子顕微鏡を見ながら操作できるマニピュレータの技術を
持っているメーカーがいるのでそこと相談しながら
いま作っている

できるとは思うが初めてのことなので

Q B室を開けるまでの手順は

A 最初にやるのは

ひっくりかえしたときに
A室からこぼれないように蓋をして

残りがないように

ネジをロックしているワイヤーがあって…

A 上野
当初から何度かA室を扱って

最初は自由落下でまず調べていて
その後作業していてひっくり返してどうなるか

もともとの蓋を閉めるのでは扱いにくいので
確認できる方法で作業しないといけない

ネジがゆるまないようにワイヤー止めがあるが
それを順番通りにほどかないといけない

A 向井
B室の構造はA室に比べると複雑
それを順番に取っていく

ネジを外すのはこすれる部分が出る
そういうものが影響を出さないように

どんどん人工のものを落としかねない

自由落下はしていなかったような…
最初A室をあけても何もなかったので

A 上野
細かいパウダーのようなものなら落ちてこない
かなり大きなものでないと転がり落ちないだろう

A 向井
一見して大きなものがなかったので
最初は自由落下しなかったような

従来の方法で採取したシャーレもあるので
ちゃんと順番に保管していかないと

サンプルをなくさないように
慎重にやっている

Q 東京新聞
ヘラについた粒子のピックアップについて
ピックアップのあとどうやって保管するのか

A 上野
現在検討中

大きなものは中空の石英の中に封入する予定だったが
小さいものでそれをやると見つからなくなる

配布を前提にするなら何らかの固定が必要
そのあとの分析にあわせて方法を考えないと

一種類の方法で全部をやるのは無理かも
いま検討中

Q ピックアップするには
容器もできないとということか

A 専用の受け皿が必要になる

分析の担当とも相談をしていて
将来の分析に困らないように
材質も含め検討中

Q 赤旗
A室 のこったものに蓋
そこにかなりの部分が残るのか

A 向井
いつかは分析する

A 上野
B室のあとにA室に戻ることはあり得るが
そのまま現状保管することになる

Q そのことで分析上のデメリットは?

A ベストな方法に達しているかどうか分からない
窒素雰囲気の環境に置いておいた方がいいだろうということで

Q 共同通信
B室 開けて見ないとわからないが
最大でどのくらいのものが見つかりそうか
もっとも楽観的なもので見通しは

A 向井
誰も知らないから難しい

期待としては
長時間いたし

でも時間が長いからたくさんあるとは限らない
上がり方とか

弾は出なかったし
表面のレゴリスのサイズ分布にもよる

0.1mmくらいあればいいなとは思うが

Q 最初にCTで1mm以上がなかった
それ以下ということか

A そういう意味ではない
コンタミは2~3mmのものはあった
あの素性はまだ分かっていない

あれがどこから来たかにもよる
いかにもねぇという気はするが即断は避けたい

Q 読売
B室は開けて光学で見るところまでは行く

A 上野
光学顕微鏡で見ることができるサイズは
最初のマニピュレータで取り出す作業を行う

Q ヘラを使うかどうかが検討次第と

A 向井
もともとの予定では
目で見てたくさんありそうなら
自由落下でコンコンと回収
逆さにして落ちてくるものを拾う

あとマニピュレータとか

大きさに応じて
どこかにフローチャートが出ていなかったかな

こういう状況だったこういうフローチャートがある

Q 初期分析
開始の時期の目安は

A 今日の時点ではなんともいえないが
できれば1月になんとかできないものかと

マニピュレータで1つ1つピックアップしたものが60個くらいある
そのうちの何個かは明らかに人工的だが
そういうものもあるので

あまり先延ばしにするのはどうかと思うが
B室を開けてみての判断になる

ーーーー相模原

Q 青木
1500個で大体取り終わった感じか

A 向井
1回目のヘラで1500個
あちこちこすったわけではない

最初のヘラに付いていた粒子
岩石質と思われるものが1,500個

Q 最大の大きさは

A 大半がミクロンオーダー
10ミクロンはいってない

Q B室の状況が公開されるのは来年になってからか

A A室では試行錯誤しながらだったので
A室よりは早くできると思う

Q やり方は同じような手順か

A 開ける手順が全然違う
上下関係が違うし

Q 採取の仕方も変わるか

A ヘラで取るのは最後の手段
中を見ての判断

はやぶさ、そうまでして君は~生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
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小惑星「はやぶさ」の秘密
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【宣伝】書籍「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業 Vol.2」が発売

私も執筆に加わった書籍「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業 Vol.2」がまもなく発売される。発売日は11月8日(月)の予定で、Amazon.co.jpではすでに予約を受け付けている。

宇宙をつかう くらしが変わる (日本の宇宙産業)
宇宙航空研究開発機構産業連携センター
日経BPコンサルティング

(目次)

・宇宙利用ビジネス最前線

・特集1 「きぼう」が育む日本の新ビジネス

・特集2 ビジネスを革新する地球観測衛星

・特集3 ニュービジネスを創生したGPS衛星

・特別インタビュー 人気漫画『宇宙兄弟』の作者 小山宙哉氏

・特集4 超小型の人工衛星が新たな市場を切り開く

・特集5 地上に舞い降りた宇宙技術

・直言・提言

・主な宇宙利用・機器関連企業一覧

・特別付録 ドキュメント はやぶさ

「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1」に続く第2弾。Vol.1では主にロケットや衛星などのハードウェア技術に注目したが、今度のVol.2では「宇宙利用」というものにフォーカスした。国際宇宙ステーション(ISS)での実験成果やリモートセンシングの応用分野などはもちろん、今後の市場拡大が期待される超小型衛星なども取り上げた。

正直、宇宙利用というテーマは、Vol.1の衛星・ロケットに比べればどうしても見た目は地味だ。「きぼう」での実験にしても、これまでにどんな成果が得られているのかということは、メディアもあまり興味がないのか、詳しく伝えられることは少ない。しかし、画期的な抗インフルエンザ新薬の開発が進んでいるなど、大きな成果も出始めている。

今回、私は担当ページの取材のために、34件ものインタビューを行い、現場の研究者や技術者に話を聞いた。彼らの熱意も誌面から伝わればと思う。

本書の特徴の1つは巻末の「宇宙利用・機器関連企業一覧」だと思うが、これはVol.1の5ページを再掲した上で、Vol.2に関連した企業の分を2ページ追加した。これから宇宙業界への就職を考えている学生などには参考になるだろう。また特別付録「ドキュメント はやぶさ」の最後には、はやぶさ関連企業の一覧も掲載した。こちらも注目だろう。

価格は1,000円。ぜひ手にとってもらえれば幸いだ。

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Vol.1もあわせてどうぞ。

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はやぶさウィークリーブリーフィング第10回(速報版)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月25日、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。

さあ、ついにこのブリーフィングも10回目だ。すでに回数に意味はなくなってきているので、タイトルにわざわざ入れなくても良いのだが、区別のために一応残しておく。ちなみに来月は、9(火)と29(月)に開催される予定となっている。

今回の出席者は向井利典・JAXA技術参与。いつものように取材メモをそのまま添付する。

ーーーーーーここから
向井

前回電子顕微鏡で直接観察した
現在は採取した微粒子の同定・マッピングを継続

先週
岩石質と判断された微粒子 数百個 800程度

電子顕微鏡でしか見えない微粒子なので
初期分析のための取り扱い
これまで話したように
ナノテク関連の技術者
専門家の英知を結集して検討している
その準備をしている

ーーーーーー
質疑応答

Q 朝日
800個は前よりずいぶん増えたが

A 一部の写真の中にはマークしてないものもあったが
チェックして数はどんどん増える

ルーチン化してきたので
1日100個くらい増える

Q ヘラでなでては電子顕微鏡
何回くらい終わったのか

A 今までやったのは1個だけ
同じ場所を何度かこすっている
何度こすったかは憶えてないが
ヘラは1個

現在 ヘラ 最初なので
ついているものの素性を調べてから次に
いまはついているものを丹念に調べている

以前1週間と言ったが
いまの感じだととても1週間では終わらない
網羅的に調べるには相当時間がかかる

ヘラのついた状態だと分解能を良くできない
いくらルーチン化しても3週間はかかる

Q 3週間というのは1つのヘラという意味か

A その通り
とてつもない時間がかかるので
次にどうするのかは検討中
再度ヘラを使うのか
おおよその素性が分かればB室にいくか
別の場所にいくか

Q A室は何割くらい終わったか

A 2割くらい
前回話したように
回転棟の半分をやっただけ
まだ横のカベもある
3割は終わってない

Q なでた場所は前回の1回から増えてない

A 新たになでることはやっていない

Q 共同通信
以前の話では10月にもB室
遅れそうか

A A室の別の場所をこする作業をするのか
それとも
岩石室以外に
マニピュレータで採取したものは
もう少し大きい
それを電子顕微鏡で見てからB室に行くか

それは判断がいる
NASA側の研究者も含めて次ぎどうするか相談しているが
少なくとも10月中ということはなくなった

Q いつくらいに

A いつまでにということはない
競争相手もいないので

ただ関心も高いので何年も先に引きずるわけにもいかない
いつとは言えないが
今のままのペースだとA室だけで何年もかかる
それはできない

こするという作業は壊している可能性もある
こする場所とこすらない場所を残す
後で調べるために
全ての場所をこすることは考えていない

Q 媒体不明
初期分析は当初は8月とか9月
現時点でも12月以降
このスケジュールはそのままか

A 12月以前ということはないので
12月以降で間違いないw

Q 12月以降というと
12月にも始まるという印象を受けるが

A いまのままではなんとも言えないが
難しいかなという感じ

Q 毎日
粒子の素性
どんな作業をやっているのか

A 電子顕微鏡の写真を見せたが
粒子らしきものが見える
傷なのかどうか紛らわしいものも

1つ1つ成分分析をしている

Q 外さないで?

A 電子顕微鏡でしか見えない粒子なので外せない
初期分析のためには移動しないといけないので
その準備

見ながら操作できるマニピュレータが必要

Q 面白い知見は?

A いろんな岩石があった
人工的なものも混じっている アルミの粉とか
マニピュレータで取ったものはまだ調べてない

Q A室をもう1回か
それともB室か
その判断ポイントは

A それも含めていま検討中

Q NHK
1つめのヘラ
微粒子は800より増えるか

A まだ全体を見ていない
まだ半分も見ていない

Q 素性は
蛍光X線を見るとか?

A そう
帯電の問題とかあるので
電子ビームのエネルギーを低くしている
何ミクロンくらいのものしか見れてない
それでもそのくらいの数

Q 読売
前回 ざっとみたら微粒子が100個くらい
それが800個に増えたのは
解像度を上げたのか

A 同定したのが100個
全部見たわけでない

Q 見ていない部分があって
それで増えているということか

A そう
見たけどアルミだとか
見てないものとか

写真にはマークのついてないものもあった

Q 成分分析
火山灰に比べてどうとか
そこまで見ているのか

A 見ているのもあるかもしれないが
全部ではない

Q 宇宙のものかどうかはともかく
事前に用意したサンプルと比べて
可能性は判断できるのか

A 答えにくい質問
人工的なものもあるし
地球のものもあるし
たまたま調べたのは地球のごく一部
初期分析しないと結論は出せない

Q 読売
マニピュレータ
電子顕微鏡で見る
いまのヘラが終わった後で電子顕微鏡でみて
それからB室にいくかどうか判断するのか

A その予定
いままでマニピュレータで60個くらい
全部見る必要はないと思う
電子顕微鏡で見るということは電子ビームをあてるということ
変質する可能性がある
素性が同じようなら次に行くかということも含めて
現在検討中

先のことはまだ
いま半分も終わってない

一通り見て

心配しているのは
ヘラでこすって人工的なものを出してないか
その確認の上で進まないと
今後に影響がでないように

Q 60個の中に岩石質のものはいくつあるか

A 分からない
でも目が慣れてきた

最初のものにはアルミが多かった
怪しいと思って調べたらやはりアルミ

見るとなると慎重にならないと

Q 媒体不明
岩石質が

A 岩石質が800
アルミやテフロンは除いている

Q どういう物質が含まれているのか

A 定性的な状態なので
具体的な話をすると間違えるといけないので
今日は言えない

元素は何種類かある

Q もっと詳しく
マグネシウムがこれだけとか

A 使っているビームが弱い
鉄があっても見にくい
いまの段階ではあるともないとも言えない

マグネシウムは一部検出されているとか
そういうのはある
しかし定量性はないので
こういうものがあったとは言えない

Q 読売
定量的なものはいいが
なにがあったか

A 定量性がないので言えない

ーーーーーー
囲み(向井氏)

12月に初期分析にまわすのは厳しいと
個人的には思っている

定量性は難しい
初期分析で分かるもの

岩石質というのは
シリコンがあるから分かる

微粒子の数
次回は800よりも増える
操作も慣れてきたので
1日あたりの数が増えてきて

むしろ素性が重要だろう
それはなかなか確認できない

初期分析しないと素性が分からない
いまのペースでいくと

B室を開けるか
A室を続けるか
侃々諤々の議論

B室を開けたときに
A室の微粒子が入る可能性はあるだろう
多少隙間があるので
逆にいま見ている微粒子はB室からきたものかもしれない
A室B室というのは今は意味がない

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はやぶさウィークリーブリーフィング第9回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月6日(水)、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。もともとの予定では、来週12日に開催する予定だったのだが、これがまず7日に日程変更(説明者の都合だったらしい)。ところが6日、読売新聞が掲載した記事で大騒ぎとなったために、急遽、同日の夕方に再変更したものだ。

ちなみに、ドタバタの原因となった読売の記事はこちら。

——————————————-
「はやぶさ」に微粒子、地球外物質の可能性

 6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の試料容器から、地球外物質の可能性がある微粒子数十個が見つかったことが、5日わかった。

 宇宙航空研究開発機構が電子顕微鏡で調べたところ、大きさ0・001ミリ・メートル前後の粒子の中に、これまでに容器内から見つかっている地球のちりやアルミ粉などとは、成分の特徴が異なるものがあったという。

 はやぶさは小惑星イトカワに着陸した際、試料採取装置がうまく作動しなかった。これまで0・01ミリ・メートル程度まで見える光学顕微鏡で分析してきたが、試料容器内に地球外物質とみられるものは発見できなかった。そこで、特殊なヘラを使って微粒子を集め、電子顕微鏡で粒子の形状と成分などを確かめる作業を続けていた。
——————————————-

私はこの日、別件で相模原キャンパスにいたのだが、お知らせに気が付かず、町田まで帰りかけたところで、急遽戻って来た。なので、主会場(JAXA東京事務所)の様子は分からないのだが、マイコミの小林記者によると、テレビ局が5社もカメラを出してきていて、記者席も満員御礼だったとか。

会見の出席者は、上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。以下に、会見の取材メモをそのまま添付する。発言をそのまま書き起こしているので、文章にするとちょっと読みにくいのだが、書き直すのも面倒なので我慢していただきたい。

ーーーーーーーーーー
前回お話したときに
電子顕微鏡で観察すると伝えていた

それが予定通り行うことができて
一部
今日はできるだけ正確にお伝えしたい

現在まで行ったことは
先週後半から電子顕微鏡での観察
新しいヘラを使って
サンプルキャッチャーA室の側面を
サンプルの回収を行って
ヘラのまま電子顕微鏡に持って行って観察をしている状態

その作業が現在進行中

先週末から今週頭にかけて行った状況で
1回のヘラの作業である程度
まとまった粒子が
光学顕微鏡では見えないサイズの粒子がヘラに付着している
ことが確認されている

前回のときに
ヘラがどんなものかということで
質問が出ていたので
後ほど画像が提供されると思うが
これがまさにサンプルキャッチャーの中を
ぬぐい取るような形で側面からサンプルを回収するために作った
新しいテフロンのヘラ

このままでは扱えない状態
左の端に部品がついていて
ロッドの部分につけて
それを中に突っ込んで側面をこすり取る

下についているのが見えにくいがスケールが

全体の大きさとしては
ヘラの先の長さが6mm 幅が3mm強
サンプルキャッチャー内でこれを使って作業を行っている

現在電子顕微鏡のデータには解析をしているところ
一部電子顕微鏡の画像が間に合うなら出したいと思っていたが
個々問い合わせいただいた方に画像を提供できるように
頑張ると伝えたところもあるかもしれないが
今日ギリギリ間に合わない状況

画像については次回の定例会までだと
ちょっと長すぎるので一両日中には画像を準備して
適用できるように考えている

今日の試験ではまだ出せる状況まで行かなかった
明日明後日には皆さんに提供できる
説明とともに準備しているところ

(10/8追記)電子顕微鏡の画像が公開された

オリジナルの画像

JAXAによる説明

作業自身は淡々と続いているというのが現在の状況

大筋ではこういうところ

ーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
電子顕微鏡で見てどんなことが言えるのか

A 電子顕微鏡のいいところは
光学顕微鏡では見えなかったサイズのものまで確認できること

光学顕微鏡だと10ミクロンくらいまでしか見えないが
電子顕微鏡だと1ミクロン以下のものまで確認できているので
そういう意味では非常に数がいままでに比べると
ヘラの上にたくさん付着していることが確認できている

数の上ではだいたい今回採取した範囲で概ね100個くらいの粒子が見えている
正確な数は現在確認中だが
おおまかにいうと100個くらいが1つのヘラの上で確認できている

Q それを見てどうだった
イトカワのものかどうか

A 現在、形状は確認できているが
小さい粒子になると形状はほとんど粒状のものになってしまうので
形状だけでどういうものかを断定するような情報までは得られていない

最終的には可能な限りの粒子を初期分析の結果を見て判断せざるを得ない
という風に我々は考えている

Q 媒体不明
ヘラですくったのはヘラ1個分?

A ヘラ1個分の作業がいま終わりつつあるところ

Q ヘラは新しいものを使ってどんどんすくっていくのか

A 1個とってそれを電子顕微鏡で
結構時間がかかる
ヘラは小さいが一度に見える範囲はさらに狭い
順番になめていくのに結構時間がかかる
それを現在なめている状態

Q それで何回くらいなめるのか
A室をフォローするのに

A ぬぐいとった範囲は全体の
大ざっぱに言うと1/10くらい

そういう意味では10回くらいで
はける部分とはけない部分はあるが
10回くらいで終わるだろうと

できれば将来よい方法が見つかるかもしれないので
全部の部分をこの方法で採取することはしない
ある程度の範囲をこれでやって
どこかはそのままの状態で将来に備えて保持する

そう言う意味では10回は多分やらない

Q 電子顕微鏡で見ると形状がほとんど粒状
電子線を当てると元素のおおまかな組成が見えるし
そこが初期分析にまわすかどうか線引きになる

元素の組成で見て初期分析にまわすに値すると判断できるのは
今回の100のうちのどのくらいか

A そこまできちんとはけてないのが現状
確かに大まかには
正確に計ることはできないが
ここについているものが
ここの中から出てきたアルミの粉とか人工的なものかどうかという
荒っぽい分解はこれからできると思う

ただ現時点ではなんとも言えないし
多分見えてくるものも元素構成だけのレベルでいうと
地上のものじゃないというのはなかなか難しいだろうなと思う
それだけでは

地上でわりとありふれたもので
ほとんどの宇宙のダストも構成されているはず

明らかにこれは混入物じゃないかどうか
例えば金属片とかじゃないよということくらいは分かると思うが
そこから先に踏み込めるかというとなかなかそれは難しい

そこに入っている成分は分かるが
それがどういう結晶構造になっているかが分からない
これだけでは

同位体比もこれだけでは全く分からない
それが初期分析で分かるまではなんとも
判断できる形にはならない

Q 初期分析にどのくらいまわすか
まだ今の段階では言いにくいという話
明らかに金属片だと分かるようなものか
明らかに地球だとか
分析する価値がないもの
ヘラ1回で1/10
全体はやらないと

700個とか800個は初期分析で回すことになるのか

A 現時点では分析にまわさないと分からない
分からない粒子は回さざるを得ない

ただ1つ問題なのは
今回見ている粒子
ほとんどが光学顕微鏡では見えないサイズ
分析自身はこのサイズでもできることになっているが
実際にはヘラの上から
どうやって分離して初期分析のチームに渡すか

これからの課題として残っている

光学顕微鏡で見えないものをどうやって受け渡すか

Q 日経新聞
電子顕微鏡 1マイクロとかを確認した
イトカワの粒子の存在価値
1マイクロ以下とかのサイズになっても
イトカワ由来のものが発見されると
太陽系の起源の解明に役立つ?

A 多分数ミクロンくらいあれば
同位体比の計測まではできるはず

そうするとまず地球由来かどうかそこで確認したい

どこまでいけるか分からないが
それらの粒子ができた環境温度などの記録が残っているような
同位体比が見えれば非常に面白いと思う

どこまでできるかはこれからの作業

Q NHK
これまで光学顕微鏡で見つかっていた数十粒
それとは特徴が多少異なるものが電子顕微鏡で見つかったという話が出ているが
どう特徴が異なるのか

A 特徴が異なるということは我々からは言っていない
いままでは光学顕微鏡で見ただけの判断で
顕微鏡で見た場合でも
我々の置かれた状況を正直に言うと
顕微鏡写真の外観だけで判断するのは非常に難しい
現実的には

これが本当に地球由来なのか地球外由来なのか
画像だけで判断するのが難しいというのが
今回ヘラにのった電子顕微鏡でいま観測を続けていて感じていること

今までも明らかに地球由来じゃないか
大半がそうじゃないかと思われるような見方もあったが
どうも見た目だけで判断するのは非常に難しいなというのが
正直な我々の感想

そう言う意味では
これからきちんとした分析を早く結果が出てくるのを期待する

Q 外観で難しいのであれば
何らかの他の情報があって
今までの微粒子とちょっと違うような気がすると
言っていると思うがそれは何か

A 明らかに金属片みたいなものは
なんとなく見た目で分かる

そういう見た目で明確に違うよというのが
もはや判断できない世界に入ってきているので
そうなると地球由来も地球外由来とも
これだけでは判別つかない領域のものを扱っている

Q 日経サイエンス
初期分析にかかるのは従来通り12月か

A 現在A室のヘラを使った作業をやっている
全部はやらない予定だが
大体やってみて
先週末から初めて
1回ヘラをやって
顕微鏡で走査するのに1週間近いサイクルがかかる

4~5回やると今から1月くらいこの作業をやらないと
目処が立たない

それが終わるとうまくいけば
今月末からB室に行きたいと思っている

B室がある程度様子が見えた時点で
初期分析は当初から15%くらいと言っていたので
全体の15%はこれくらいと推定して
それができた時点で初期分析にまわす

Q スプリング8で見ようというのは12月以降?

A それぞれ初期分析のチームが
共同研究のような形で確保されているので
スプリング8の稼働時間を確認してない

全部をスプリング8でするというわけではなくて
いろんな解析の形が用意されている
その1つがスプリング8を使った分析ということ

Q 毎日新聞
100粒みつかったうち
明らかに金属片とか地球由来のほこりとかはどのくらい

A 全部がスキャンできているわけではない
100というのも端からみた感じで100くらいだねと見えてきた
全体が分かるのはもう1日くらいかかる
そのうちのいくつかというのは難しい
もう数日欲しいところ

Q 共同通信
100個が見えているという話だが

A 分解能が悪い画像で
あらっぽく見るとそのくらいが見えるということ
1個1個数えたわけではない

Q 今回の1ヘラ分を全部見たのか

A 大きくは見ている

Q 100というのは今回の1ヘラ分のことか

A その通り

Q 写真は撮っている?

A 撮ってはいるが解析中
いま処理中まさに

Q 明後日の名古屋に間に合わせるつもり?

A 間に合わせたい
それにあわせて皆さんに提供したい

Q 写真には解析が必要なのか

A いろいろ調整しないと見やすい状態にならない

Q 100見えたというと見えているわけだから
そのまま出していただければこちらとしてもありがたい

A 調整段階で大まかに見たもので
あと1~2日あれば皆さんにお見せできると思うが
今日は間に合わない

Q 100粒というのは数えられるような状況の画があるということ?

A あまりきちんと見えていないが
部分的には見えているものがある

Q ニッポン放送
今回の状況は地球外物質のものが見つかる可能性として
可能性がこれまでよりも高まったのか
正直言って喜んでいい話なのか
喜ぶのはまだ早いという話なのか

A それは難しい
我々としては可能性をどうこういう根拠がまだ得られていない
まだ何とも言えない
小さい粒子が非常にたくさんあることが見えてきた
そういう意味でチャンスは若干広がったという気はする

Q 産経新聞
現在までにみつかった微粒子は全部で何個?

A 今まで光学顕微鏡を使って
マニピュレータの針で採取したのが大体60弱くらいあった
それに加えて
前回のヘラにも微粒子が載っているだろうが
光学顕微鏡で見える範囲のものは拾って
もし電子顕微鏡で見えるのがあれば見えるだろうが

確認された量としては前回の60弱に加えて
今回のまだ正確な数が言える状態じゃないが
100くらい増えた

Q 160個くらいか

A 確認されたものとしてはそのくらい

Q 大きさは1~10マイクロか

A 今回も光学顕微鏡で見える粒子が数個あった
それは先に拾っている
その後電子顕微鏡に持って行った

Q 160個の分布としては

A 小さいものの方がもちろん数としては大きい

1ミクロン以下のものがかなりたくさん含まれている

Q 大きいものは10ミクロン

A そのくらい

Q すでに初期分析にまわす候補の微粒子はあったか?

A まだじつはどれをとはまだ決めていないそこまで

Q 媒体不明
15%を初期分析に回すというのは
A室が終わった段階でその中から15%まわすのか

A 全体で15%というのが最初の約束だった
B室の数の予想が付いたときに15%の数量はこのくらいと決めて
厳密に15である必要はないが

Q サンプルの回収はA室B室が全部終わってから初期分析?

A 全部を終わらせる必要はない
B室で入っている量が推定できた時点で初期分析にまわせる地点

Q ヘラで全体の1/10をやってざっと100個
これは予想にくらべてどうなのか
多いのか少ないのか

A どのくらいA室に入っているか予想が付かないところがあった
びっくりする量ではないとは思うが
どういう状況下わからない状況でスタートしているので
こんなものかなという感想

もしかしたらB室はもうちょっと入っていればいいと期待はしている

Q 媒体未定
100個+60弱 これについては地球のものと断定できないものも
含まれているのか

A 感想としては
現在のところ明確にはじけるものはそう多くないという気がしている

可能性があるものはなるべく初期分析にまわす

Q 一定の割合で初期分析に回す候補は含まれる?

A 必ずあるだろう

Q NHK
同位体比がわかれば温度が分かるのはなぜ
スプリング8以外ではどんな計測装置があるのか

A 予定しているものは幅広い範囲に及んでいる
1つには全体の個々の粒子の構造が分からない
粒子をスライスして透過型の電子顕微鏡で見てやると
それぞれの粒子の中でどんな結晶が作られているか

構造が見えるとどんな環境で作られたかというのが
結晶構造からある程度見えてくる

太陽系の星雲がどのくらいの温度でできたか
一部の同位体以上が起きると予想されている
例えば酸素の同位体異常が見えると
どんな温度環境でチリが少ないかを予想できる

一部の分析は破壊的な分析になる
一部をスライスして蒸発させてガス成分を調べることも計画

そしてスプリング8を使った同位体分析というのも計画には含まれている

Q ニュートンプレス
B室に入るのはすると1カ月くらい?

A そう

Q そこでも光学顕微鏡+電子顕微鏡の観察を行う?

A まず一番最初は大きな粒子がないか
光学観察から入る
もし大きな粒子がたくさんあればマニピュレータで
回収を始めると思う

それがもしなかったら、A室みたいに多くないとなると
ヘラによる作業に早めに移るかもしれない

もしB室の方がA室とちょっと様子が違ってものがあると
いう場合には可能な限りは披露という形をとる

Q 電子顕微鏡での走査
当初から予定されていたもの?

A 電子顕微鏡にヘラを持って行くというのは
オリジナルでは予定していなかった

当初は拾えるものを拾って作業を進めていく予定だったが
比較的小さな粒子を扱わないといけないとなったので
今回ようなことになっている

Q どれを初期分析にまわすか
かさとやりかたとか決めていくんだろうが
多様な分析をやるにはどういうサンプルがどのくらい
取れたかによってどういう順番で何をやっていこうかと

分析チームの方で段取ることになっている

その後の話し合いは
内容的にはB室を見てあらましが分かってからか

A その時点で全体の戦略をそこで集まってもらって議論する予定
B室の様子が分かる前にはなかなか議論はしにくいが

Q 課題といっていたが
マニピュレータで取って石英の入れ物に入れて分析にまわす
これはある程度の大きさを年頭に置いたもの

今回ヘラから移すのもはばかられるような小さなものなので
ヘラにのせたまま電子顕微鏡
これを運ぶとなるとパッケージするのかという議論もあると思うが
そのあたりはどちらが決めるのか

初期分析チームが優先か?

A お互い希望は聞くが最終的にはこちらが最終判断
電子顕微鏡が走査できるような方法がないか検討中

いずれにしても非常に小さいものをガラスに封入すると
それを受け取った人はどこにあるのか絶対に分からない

この方法では実際に受け渡しができない
何かに固定した状態で渡さざるを得ない
そうしないと失われてしまう

Q 媒体不明
電子顕微鏡で見るときは窒素雰囲気か

A 若干圧力を下げた状態で測定している

Q 粒をヘラでとるときは

A 汚染が起こった場合
確認できるように
我々は限られた材料しか扱わない
確認するとすぐにわかるはず

Q 初期分析
ある程度見込みのあるものが欲しい
なんだか良く分からないものをもらっても困る
しかし明らかに除外できるものが予想外に多い

初期分析を引き受ける先生の希望とJAXAに温度差があるのでは
何を線引きに初期分析にまわすかどうか

A 難しいが
ある程度の数はどうせ渡せると思う
それからどういう形で優先度をつけて
分析してもらうかというのは
そちらでも判断がつく部分があるだろう

ある程度の数はそれぞれに行くのでは

Q フジテレビ
スプリング8にまわして
どのくらいで結果が出るのか

A スプリング8の運転時間が
どれくらいの時間アサインされているのか私も確認していないが
もし何か分かるものがあれば比較的それほど時間はかからないのでは

年単位かかることは絶対にない
何カ月のオーダーである程度目処がでるのではと期待している

ーーーーーーーーーーー
囲みでの上野氏の発言(byマイコミ小林記者←いつもありがとう)

地球外なのかどうかは今のところ判別つかないというのが正直なところ。最初の時、金属片っぽいのが大きいのがあったので、それが先入観になっていたのはある。今は、それが金属片以外のものに関しては、どっちかの判断は付かない状況。初期分析に回す前に、組成比較とかできないので、なおさら。

火山灰とか、砂漠の元素とかはJAXAで比較してから初期分析に出したいが、全部にやろうと思うと膨大な時間がかかるので、初期分析に出すタイミングが遅くなるので、そこまではするかどうかは怪しい。

電子顕微鏡のスペクトラムについては今データをまとめているところ。中の粒子がどう並んでいるかはスライスしてみないとわからない。断定できない粒子が増えたというところ。ただし、大きいものとかも分析はしていない。

量が増えたということで、地球外物質の可能性が増えたといえる。それ以外の理由で、そういうことはない。ここまで来ると、組成は地球の内外で大して変わらない。構造とかを調べてみないとなんともいえない。

12月から初期分析をスタートした場合でも、少しでも早く結果を公表したいとは思っているが、なんともいえないのが正直なところ。100個のうち、明らかに地球のもの、という判断にももうちょっと時間がかかる。今週中とかは無理だと思う。

ーーーーーーーーーーー以上

前述の読売の記事、「すわイトカワの微粒子を発見か?」と思ってしまいそうな書き方だが、良く注意して読んでみると、「地球外物質の『可能性がある』微粒子」と書いてあるように、まだ何も断定はできていない。

地球のものと断定できない限りは、地球外物質の可能性があるのは当たり前。また電子顕微鏡を使えば、これまで光学顕微鏡で見えていなかった粒子が多数見つかるのも当たり前だ。サイズも1桁違うんだから、特徴だって違うだろう。この記事は、当たり前のことを書いているにすぎない。結局は、初期分析にまわさない限り、何も断定はできないのだ。これは今まで何度も説明されていること。

それにしても、と思うのだ。書き方でうまく逃げてはいるが、メディアには何よりも、分かりやすく伝える使命があるはずだ(しかも「成分の特徴が異なるものがあった」という部分は完全に誤報だ)。そういう書き方をしておいて、「アンタが勝手に誤解したんでしょ」という態度はどうなのよ。読売新聞、というか、これを書いた記者には深く反省してもらいたい。

はやぶさウィークリーブリーフィング第8回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月27日、「はやぶさ」カプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。私は某所でやっていたインタビューが長引いてしまい、出席することができなかったのだが、マイコミジャーナルの小林記者が取材していたので、今回もそのままメモをもらって掲載する。

出席者は向井利典・JAXA技術参与。

ーーーーーーーここから

大きな変化はない。継続してマニピュレータで試料の回収をしている。

前回準備中と言っていた新たに作ったヘラを使って回収を試みた。
光学顕微鏡とかマニピュレータでは回収が難しいミクロンサイズの試料を直接電子顕微鏡で観察するために作ったもの。

今は、その前に光学顕微鏡で状況のチェックをしているところ。

それから継続して、極微粒子をどう扱うかを専門家、ナノテク関連のエンジニアなども交えて検討している。

だいたいこんな感じ。新しいところでいえば、試料を新しいヘラで回収を行ったということかな。

ーーーーーーー
質疑応答

Q 媒体不明
新しいヘラを使って電子顕微鏡で見てる?

A 見てない。電子顕微鏡の前に光学顕微鏡を使って、形などを確認。場合によっては(光学顕微鏡で見れる程度の)大きなものとかもあるのが確認されている。

Q 今やっている方法はうまく行っている

A かなりの数を回収できている。光学顕微鏡で確認しただけだが、大きなものもあった。

Q その中でこれはと思うものは

A それは言いたいが、なかなかね

Q 毎日新聞
ヘラの作業はすべて終わった?

A まだごく一部。前に見せたが、キャッチャの円筒形のアルミの台の半分をすくった程度。

Q 回転台の奥のほうなどは

A まだまだ。ヘラですくうのも難しいかも。

Q ヘラは何個くらい用意しているのか

A 数は知らないが沢山作っている。ヘラに何が付いているか、今の技術で見えない微粒子があったら大変なので、ヘラは保存するようにしている。

Q 東京新聞
今後の予定。B室には

A なんとも言えない。A室をヘラですくって試してみたくらいなので、次にいくためには、ヘラですくったのを電子顕微鏡で見て、状況を判断してから。一回やるのに一週間程度はかかるので、ルーチンになれば早くなるかもしれないが、10月の半ばくらいになると思う。想定外のことが起きれば、より遅くなる。

Q 共同通信
ヘラごと初期分析に回る可能性は

A それはない。電子顕微鏡で見た場合、微粒子が存在したら、それを扱うためには電子顕微鏡で見ながら行わないといけない。

Q 今の段階でイトカワ由来と断定するのは難しい?

A 断定はできないけど、初期分析に回す価値のあるものについては、ピックアップして回す。初期分析に回すためには大気汚染を避けないといけない。特殊な石英の台などにおいて持っていくしかない。電子顕微鏡の中で、そうしたやり方を決めないといけない。そこら辺のやり方も検討している。

Q ヘラ全体を顕微鏡で見て、これは、というものをピックアップして初期分析に回す?

A 直接観測する意味は、これまで回収したものの大半がどうも人工的っぽいということで、これを一個一個ピックアップするのは時間の無駄ということで、対処法として考えられたもの。

Q 媒体不明
ヘラを何回すくえばB室に到達する?

A 何回かは難しい。同じ場所でも複数こすってる。そのこすり方が良いかどうかは分からないが、ヘラの両面でもこすっている。何回か行っているということは、同じ場所に重なっている場合もある。それらを電子顕微鏡で見て、次のアクションを決めようと。まだごく一部しかとっていない状況なので、何週間かはかかる

Q 何をもってB室に移るのか

A グッドクエスチョン。難しい問題だが、一応、ヘラですくえる範囲をなめたら、B室かな。それでA室すべてをカバーできたとは思わない。その後、分解作業も待っているので、そこで何か見つかるかもしれない。

Q 媒体不明
A室で使用したヘラの電子顕微鏡へ投入するタイミングは。次回あたりに、そうした話は出るのか

A そうなると思う。そうならないと、10月中旬にB室にいけないだろう。私だけの判断ではできないが、今週中にはやるんじゃないかと。光学顕微鏡で一通り見て電子顕微鏡に行くんじゃないかな。

毎日新聞
Q これまで回収できた粒の数

A 今日時点の正確な数字は把握していないが50数個。経緯を振り返ると、最初にマニピュレータで2個、その後、ヘラで20数個。これはマニピュレータで移動できるものはすべて移動した。その後も、マニピュレータで一個一個移動させているのが、30個程度。で、合計50個程度。次は数百個にならないとニュースにならないかもしれない。

ーーーーーーーーーー
以降、囲みでの話し

Q ヘラの種類は

A 2種類。5mm×1cm。円筒部をこすれるものと、平坦部をこするもの。

Q ヘラのイメージは

A 次回までに何か用意するよう伝えておきます。

Q 初期分析の段取りは

A どこかになかったかな。大きさとか数によって変わってくる。結局トータルの量で、例えば有機分析なんかは、有機溶媒に浸して溶けてきたものをクロマトグラフで分析。数が少ないと、蒸発させてガス化させてしまうので、粒子を駄目にしてしまう。中性子を使った分析も放射化してしまうので、次に使えない。

Q 次回までに、電子顕微鏡で見た後に、初期分析に回したという話はでるのか

A それはない。B室に沢山あれば、話は別だが。

Q 五月雨式ではなく、A、Bと見て、ある程度数が揃って初期分析に回す?

A もともと15%と言っていたのは、その数を国際的に公表して、公募を行う予定。スターダストの例を見ても、何回かの募集がある。初期分析は、こういった面白そうなものがあるということを示すためのカタログ作り。もしかしたら、それで終わってしまうかもしれないけど。

Q 15%の根拠

A NASAとのMOU(覚書)の中に入っていたような気がする。NASAには別に10%を回すんだったかな。あの頃は宇宙科学研究所とNASAの間だったかな。宇宙科学研究所は国立の研究所だった。JAXAになると多少簡単になるかな。

Q MOUで15%ということは、地球上物質でも15%に含まれるのか?

A できるだけ、そうしたものは省きたい。初期分析でイトカワ起源のものがなかったら、公募で募集しても応募がこないでしょう。相模原の電子顕微鏡は恐らく、世界的に見てもクリーン。コンタミ防止の手法とか色々やってる。聞いた話で、スターダストで電子顕微鏡にかけると、表面が汚染されていて、次の作業に支障が出たらしい。スターダストもまだかなりの作業が残っている。そういうこともあって、我々も新調して、今回と同じような条件とかもっと厳しい条件などで検査して、有機分析する方に回してみて、問題ないという回答も得ているので、明らかに地球起源の人工のものを、除くためには、電子顕微鏡で見て作業しないと。

Q 今のところ、ヘラで取り尽くせている?

A どうだろう。見たところ、表面はつるつるしているが、光学顕微鏡で見ると凸凹していて、傷が沢山ある。マニピュレータだと、それを動かしに行って、動くようなら粒子で動かなければ傷だと判断していた。

Q 次回にはB室に移るタイミングが分かってる

A なんとも言えないが、私としても目処をつけて欲しいなというのはある。

Q シャーレの上の粒子でいらないものを選別するのか

A いらないかどうかは分からない。ただ、回収するときに削れた金属の粉なども沢山あると思う。電子顕微鏡で見ると、主要元素は分かる。以前話しているが、一部試してみたこともある。アルミは除外すると思うが、逆に初期分析に回すものは、一個一個ピックアップしてアルミではないことを確認していないといけないよね。

Q ヘラそのものを電子顕微鏡で見てる

A 見てる。だからといって、地球外かどうかの断定は難しい

Q 必ずしも地球のものとは言えないものが見つかったといえるのか

A 誘導尋問だな(笑)。宇宙で捕らえたといって、どこでかとなったら、イトカワ以外にはないわけで。そういった意味ではかなり神経質にやっている。

Q 初期分析に回る候補は

A 地球のものかもしれないし、地球外のものかもしれない。そこの断定は非常に難しい。初期分析してみるまで分からないわけだし。

Q 金属の粉かどうかの判定は

A 電子顕微鏡で見てみないと分からない。

Q 回収した微粒子を電子顕微鏡で見るのを優先することはできないのか

A 何を優先させるか。電子顕微鏡で作業をしていると、回収はできない。パラレルに出来ない。

Q 初期分析にすべて回すのか

A 数十ミクロンのサイズのものもあるが、それは回さない。それを回すと、国際公募に回すのがなくなる。NASAも元々何gという想定だったが、10μmのもので、1ngという重量。今の状況だと、15%とかの比率は無視して、実行部隊で決めて良いという話になっていて、はやぶさのジョイントサイエンスチーム内で、色々な人が混ざって話すことになる。

Q 次回、電子顕微鏡では見るけど、初期分析に回るということはない?

A ない。初期分析は12月を予定している。B室も見てみないことにはなんともいえない。全部は見なくても良いけど、おおよその量の把握ができないと、次の話にいけない。

小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡
的川 泰宣
PHP研究所

小惑星探査機 はやぶさの大冒険
山根 一眞
マガジンハウス

はやぶさウィークリーブリーフィング第7回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月14日(火)、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内のサンプル採集作業について説明するブリーフィングの第7回を開催した。出席者は向井利典・JAXA技術参与で、上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長も相模原から中継で参加した。

これまで原則毎週だったこのブリーフィングだが、今回からは隔週で開催。それでも新しいネタはそれほど多くはないのだが、今回も取材メモをそのまま貼り付ける。

ーーーーーーーーーここから
向井

前回も話したが
引き続きサンプルキャッチャーA室から
マニピュレータを使って試料をピックアップする作業を継続している

なので数は若干増えている

一方ごく小さい微粒子
光学顕微鏡やマニピュレータで扱いが難しいものについては
専門家の意見やナノテクのメーカー技術者とも相談しながら

彼らの知恵を借りて検討してきたが
ヘラに付着した状態で電子顕微鏡で直接見る方法について
前回まで「検討している」と話してきたが
だいたいやり方を決めて作業の準備をしているところ

そういう状況
今月中には準備ができて、やるところまでいくかなと

ーーーーーーーーーー
質疑応答

Q 読売新聞
電子顕微鏡で見る準備
具体的にどんな準備ができたのか

A 向井
電子顕微鏡
従来使っていた形状と違うヘラ
小さいのを作り終わった
それを洗浄している

ヘラの材質はテフロンだが
テフロンに電子ビームを当てると
チャージアップ(帯電)して
粒子がどっか飛んでいくとか
そういうことがないように
ビームの強さ等のパラメータが
ほぼ決まったと

実際にはエンジニアリングモデルを使って試験をしているが
同じことが本番でできるかどうか最初は慎重にやらないといけない

いま洗浄してヘラで回収することを始める前の段階に来ている
準備が完了したわけではない

Q B室はいつ開けられそうか

A 現在マニピュレータで光学顕微鏡で見える粒子の
回収を行っている

それが終わってから
ヘラですべてこすれるわけでもないので
そういった作業をこれからやっていくので
全てうまくいけば10月中旬くらいにB室の方に

A室をだいぶやってきたので
一通り目処が立てばB室に

Q 毎日新聞
電子顕微鏡の視野はどのくらい

A ヘラの大きさは5mm×10mm
厚みが1~2mm

Q どのくらいの作業日数がかかるのか

A ヘラを電子顕微鏡で見て
余計なものがついてないことも確認
その前に洗浄も

慎重にやるので1週間くらいかかるかもしれない
3~5日というところか
慣れれば早くなるかも

Q 電子顕微鏡でどのくらいのものまで見えるのか

A 分解能は知らないがナノメータークラスのはず

A 上野
10ナノくらいだと思う

Q 大塚
確認だが5×10mmのヘラというのは
電子顕微鏡で見るために作っているものか

A そう

Q 以前のはどのくらいの大きさ?

A もっと大きかった
何cmもあった

Q 材質は金属も検討していたと思うが、
結局テフロンになったのか

A なかなか金属は難しい
まだ可能性を捨てたわけではないが
作ったものはテフロン

アルミとは言ってもジュラルミンになる
不純物の管理まで整理しないといけないし

テフロンはもともと使おうと思っていたので

ただテフロンの場合の問題は帯電
普通はエネルギーを15kVまで加速するが
これを数kVまで落とす
そして時間も短く

それで影響がゼロということはないが
影響が少なくするようにしようと

Q 読売新聞
見た感じでイトカワのものっぽいものは
まだ見つかっていないか

A それはなかなか難しい
イトカワのものかどうか判断は
初期分析が終わってからでないと結論は出せない

明らかに人工的なものは除くが
最終的には同位体分析もしないといけない
それはキュレーション施設ではむり

断定するのは初期分析の結果が出てから
いまは感じだけで言えない

Q 電子顕微鏡にまわすものをスクリーニング
その結果で見ていこうというものがでてきているか

A 地球のものと思われるものを試しに電子顕微鏡で見たことはある
それはやはり地球のものだなと
金属粉のようなもの
一応確認してみた

それ以外のものはまだ電子顕微鏡にかけてはいない

初期分析は15%

Q 時事通信
小さい粒子を電子顕微鏡で見ると反応して
ダメージを負うことは

A 可能性はもちろんゼロではない
ただ光学顕微鏡で見えないものは
電子顕微鏡で見つけるしかない
問題はそのあとの取り扱いをどうするか

問題があったとしても電子顕微鏡で見ながら
作業するしかない

ナノテク関連の専門家・メーカーと
それについては検討中

Q 大きさの限界は、ボーダーはあるか

A いまの技術ではある
0.1ミクロン以下のものがあっても
現状ではなかなか大変

そういう状態でもヘラについたまま
しばらく保管する

何年か後にはナノテクが進んで
分析できるようになる可能性があるので

Q フリーランス青木
新しいヘラを使って効率は上がるのか

A 上げるためにやっている
回収の効率は上がるはず

一度ヘラについたものをマニピュレータで回収
それはすごく大変
直接電子顕微鏡で見れればすごく効率が上がるはず

最終的には粒子を1つ1つを扱うので
そういう意味ではいつまでも大変だが

Q 全部回収できなくてもB室にいって大丈夫?

A A室が終わったという判断は
何をもって終わったとするか
ヘラでこすって回収する作業が終わったという判断

そのあと残ってないかというと
残っている可能性は十分あるがきりがない

最後はヘラで一通りなでる
光学顕微鏡では判断できないものも
一応回収を試みる

はやぶさウィークリーブリーフィング第6回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月30日(月)、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内のサンプル採集作業について説明するブリーフィングの第6回を開催した。出席者は向井利典・JAXA技術参与。

なお、ウィークリーブリーフィングの予定は当初、今回までであったが、回収作業の長期化に伴い、引き続き開催されることになった。9~10月のスケジュールは以下の通り。大きな動きがあれば、これとは別に開催されることもある。

・9/14(火)
・9/27(月)
・10/12(火)
・10/25(月)

今回の取材メモを以下に添付する。

ーーーーーーーーーーーー
動きは特にない

これまで継続してヘラについた微粒子を
マニピュレータで回収する作業を続行中

サンプルキャッチャーからマニピュレータで
直接回収する作業を行っている

これも継続だが
光学顕微鏡でマニピュレータで回収が難しい微粒子
ヘラに付着した状態で電子顕微鏡で観察できないか

ヘラの形状や電子顕微鏡のパラメータを現在検討中

NASAも含めて経験のないことをやっているので
時間がかかっているが
NASAや大学も含めて英知を結集して作業をやっていこうと

状況としては以上

ーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
一週間での進展は何が

A ほとんどの作業は継続してやっているもの
進展というと、回収した粒子が増えたくらい

検討しているヘラの形状もおおよそ決めた
現在作る準備をしているところ

少しずつは進展している

Q ヘラの形は 具体的に

A いままでのヘラは大きい
数mmの小さなヘラを作ってと

それだと届かなかったところにも届く

作るにはメーカーさんに頼まないといけない

Q 毎日新聞
B室を見る予定は

A A室が一通り終わってから

いまの作業
ヘラで回収は1回やると1週間 それを何回か
1カ月かかる

B室に行くのは10月半ばと想定している

マニピュレータでの回収はうまくいって1時間
1日に1個か2個
下手するとそう言う状況

ヘラは何十個のオーダーで取れるが
それを調べるとやはり時間がかかる

はやぶさウィークリーブリーフィング第5回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月23日(月)、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内のサンプル採集作業について説明するブリーフィングの第5回を開催した。お盆があったので、ブリーフィングの開催は2週間ぶり。

出席者は上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。今回も記事化の予定はないのだが、取材メモをそのまま以下に添付する。

ーーーーーーー
ブリーフィングは1週間飛んだが
作業はその間も続いていた

前回説明したように
ペース自身は人が減ったので
この2週間はゆっくり進んだ

前回の説明からの大きな変化というのは
作業自体に変化はないが

報道発表のタイミングを今回改訂した

初期分析の開始を9月以降としていたが
もう少し時間がかかりそう
12月以降に改めた

これについて説明したい

前回話したように
現在はサンプルキャッチャー内の試料

当初マニピュレータを使って取り出す
その後ヘラを使った採取を行った

内壁にヘラをこすりつけて取り出す
ヘラ表面の微粒子をマニピュレータでシャーレに
移す作業を続けていた

この作業に並行していくつかの準備
その1つは

ヘラの上に乗っている粒子をシャーレへ
作業は引き続き行われているが
光学顕微鏡で見えるものしか拾えない
原理的には光学顕微鏡で見えないものも
乗っているはず

ヘラ自体を電子顕微鏡にもっていって
どのくらいの粒子がついているのか調べたい

この準備をしていた
そろそろ見る準備ができてきて
いま調整段階まで来ている

光学顕微鏡で見える物を拾ってあとに残った細かい粒子を
どうやって扱っていけるかを検討する段階になった
それが現在までの状況

光学顕微鏡で見えないような粒子はどうもついているようだが
しかし光学顕微鏡で見えないものをどうやって扱うか
試行錯誤を始めようとしているところ

もう1つは
中を再度観察する

今回は模型を持ってきた
内部はかなり入り組んだ構造をしている

上から顕微鏡でみて隅々まで見えるかというと
じつは回り込んだ場所が何カ所かあって
残念ながら普通に考えると見られない

マニピュレータの針が真っ直ぐ届かない場所もある
それは隅の部分

隅の部分は入り口に近い
入り口から粒子が入ってくると
ほかの場所よりも確率的に高いと思われる部分
そこに残念ながらアクセスできてない

顕微鏡でのぞき込めるようにに工夫
なんとかマニピュレータで作業できないかと
新しい針を用意できないかと

その辺を一通りきちんと進めてから
未開封のB室に移りたい

アクセスするための道具作りを進めているので
B室に行くのはもう少し時間がかかりそう

初期分析については
全体のサンプルを見て
その総量に応じて何パーセントをまわす

A室B室の総量が見えてから初期分析にまわす
最初から国内外と約束しているので
B室の様子がある程度把握できてから初期分析

A室の時間がかかるのと
B室を始めるのが遅れるので
初期分析の開始を「12月以降」に改めた

キュレーション作業の進行状況は以上

ーーーーーーーーー
質疑応答

Q 朝日新聞
電子顕微鏡でざっとは見たのか

A あまりきちんと個々の粒子は見ていないが
乗っているようだというのは確認しつつある

Q 大きさはどのくらいか

A まだ調整ができていないので大きさがどうこうは非常に難しい

電子顕微鏡の解像度は高い
光学顕微鏡に比べると1000倍小さくても見える

粒子の構造が見えるかというと
まだそこまでいっていない

大きさは
1ミクロン以下の粒子

光学は数ミクロンが限界

Q 真っ直ぐアクセスできない場所

A のぞき込むためのステージの準備している
真っ直ぐのぞき込めないので

順番に端から見るための準備をしている

Q 歯医者で使うような先が曲がったものなのか

A 曲がっているものを作りたいが
石英ガラスの中に電極が通っている特殊なもの
作るのが非常に難しい
電極が通ってないと静電気をコントロールできないので
通った状態で曲げないといけない
試作に苦労している

Q それがまだできていない?

A 製作中
いまメンバーが努力して調整しているところ

Q いつまでに?

A いつとは言えない
針の製作は1週間オーダーで進むと思う

Q 光学顕微鏡で見ながらアクセスするのか

A 見ながらになる
顕微鏡とマニピュレータの場所の取り合いになる
いままでの道具だとぶつかる
その辺の工夫も必要

Q 光学顕微鏡では鏡みたいのものを使うか

A そういうものを準備したい

1週間とか10日で準備したい
8月中には進めたい

Q NHK
前回のブリーフィングで説明
シャーレの粒子は
もう電子顕微鏡で見たのか

A まだきちんと見ていない
試験を始めているところ

とりあえず最初は光学顕微鏡で見て
地球物質らしいものから試験的に
電子顕微鏡で像が得られるように調整している
まだ本格的に始めたとは言えない

Q 見ているものがある?

A 見ているものはある
形がどうこう見えるようにするには
ビーム強度などを調整しないといけない
そこまでは行っていない

Q 粒子の由来 見当はついているのか

A 解析できるまでは行っていない
多分地球のものだろうという感じではある

Q どうすれば確定できるのか

A 結晶が綺麗に見えるとか
組成が分かるくらいまで顕微鏡の調整をしないと

そんなに時間がかからないで見えるようになるのでは

Q いくつ見ているのか

A いかにもハズレというものを数粒見ただけ

Q 日経新聞
初期分析といまの電子顕微鏡の分析の違いは?

A 初期分析でないと同位体組成とかは分からない
最終的な結論は分析にまわってから

Q 電子顕微鏡で見るのは簡易診断ということで
確定診断ではない?

A 電子顕微鏡は分かる情報は限定的
形と一部の組成は分かるが情報としては限られている
きちんとした組成分析や同位体の測定は
初期分析にまわさないと分からない

本当に地球外なのか地球物質か
最終的に判断できるのは初期分析でないと

Q 初期分析はX線を当てるとか?

A メンバーによってできることできないことがある
いくつかのチームでそれぞれの手法で

Q どんな手法

A 例えばX線をあてて
同位体の比率
中の設備ではできないが外部で

ハズレでなくてそれっぽいものを
初期分析に回したい

Q 東京新聞
12月以降になった理由は端的に言うと
当初の想定よりも大きな粒子がなかったということか

A それが一番大きい
ある程度扱いやすい粒子が入っていれば
その時点でわりと早めに全体を見て
初期分析に回すことができるが

いまのところ細かくて扱いが大変なものしか
A室について時間がかかっている

Q B室も同様の傾向と推測しているか

A B室はやってみないと分からないが
期待としてはA室よりも大きなものが入っていると期待している

Q 作業のやり方を確立しておく必要があると

A B室に行った場合でも
小さなものも取り出してカタログ化をする

いずれにしてもやらないといけない作業

Q B室の時期の目処は

A なんとか
時期の特定は難しい
12月までには行けるといいなと

Q 読売新聞
電子顕微鏡で見ている
シャーレ いかにもハズレなもの

A 比較的分かりやすそうなものでとりあえず始めた

その中にどのくらい地球外のものがあるのか
いまのところ分からない

Q ヘラの上
地球のものと違うものはあるか

A 今のところそこまでいけてない
大きなものから順番にやっている
段々と見えなくなって
ざっとどのくらいあるのか調べたい

光学顕微鏡で見えないものを
このあとどうやって扱うか
いま思案しているところ

Q 毎日新聞
初期分析の開始 3カ月後ろに
これは余裕があるのか

A 今までのペースを見てこれくらいならという感じ
B室を開けてみて大きな粒子がたくさん入っていて
初期分析が早くなる可能性がないわけではない

Q 初期分析でも同じ理由で分析に時間がかかるのか
イトカワ由来かの判別は

A B室にどれくらい入っているかにもよる
光学顕微鏡で見えるくらいのサイズなら
ある程度の分析はできるはず

問題は精度がどのくらいになるか それは量次第
こればかりは予測できない

初期分析に移ったらなるべくはやく伝えたい

Q 時期は

A まだ読めない
分析するのに
共同利用と装置を借りることもある
その場合スケジューリングの対応も関わってくる
現時点でもう少し近づかないとなんとも言えない

Q 共同通信
初期分析で考えていたものの中で
これはできないと判断されたものはあるか
例えば有機物の分析とか

A ほとんどの分析はこのくらいのサイズでもいまは頑張れる範囲
当初予定していたのは一通りやると思う

Q 時事通信
サンプル採取から1カ月
微粒子は光学顕微鏡で何個くらい

A 正確に言うのは難しい
ヘラの回収で数十個と言っていたが
最終的にどのくらいまで行くか分からない

A室に関しては
光学顕微鏡では100以下ではないか

期待の大きな部分がいまは見にくい状況
これからどうなるか

Q 朝日新聞
電子顕微鏡だとどこまでも調べられる
確かに準備が必要なのは分かるが
そこまでしてB室を開けない理由は

A 隙間の部分というのは
B室に移ったときに中を解体する作業に入る
そこらへんで底の方の粒子も失われないように
一通りチェックした方がいい

完全に粒子を拾うのはムリだが
失わないように確認してからB室に移行したい

Q 日経サイエンス
いまさらながらの質問だが
B室は先にできなかったのか

A 取り外しの順序からすると
A室からになっていた
そういう組立をしてしまっていた

Q 最初に工夫していたらB室からもできたのか

A そういう考え方もあるとは思うが…

Q へこんでいるところはまだ
ヘラでもなでていないのか

A 見えない部分になっているので難しい

Q B室も同じような構造?

A 大体同じ
A室の方が若干アクセスしにくい部分が多い
わずかな差だが

Q B室に行くときに隙間から落ちることも?

A 隙間はあるので可能性はゼロではないが
実際には静電気でくっついているので
簡単には動かない

隙間に落ち込んでいるものは注意が必要

Q アメリカのスターダスト
何か使えるものはないのか

A スターダストは中空ではなくて
ジェルの中に収まっている
それをお菓子を切り分けるようにスライスして

向こうは
物質を取り出すという経験をしていない

Q 入れ物の中から出すのは日本が世界で初めて?

A 向こうは高速で飛んできたダストを捕まえる
こちらは地上のチリを巻き上げて回収

方式が全然違う
対象が違うので

Q ヘラを1回やってから別のヘラでもう1回やれば
濃縮されるのでは

A 粒子が破壊される可能性もあるので慎重にやっている

Q NHK
ヘラの件で確認
電子顕微鏡で見る準備が整いつつある
検討されていたヘラの材質は固まったのか
それを使ったのか

A いまやっているのは当初のヘラの上で
非常に扱いにくい状態だ

今後は電子顕微鏡で見るためのヘラで

いろんな材質のヘラで
模擬的に試験をしている
大体そろそろ結論は出ると思う

Q 東京新聞
A室の確認
曲がった針で回収を試みる
その後ヘラを作ってこすると

A 両方することになる

Q それで終わり?

A 大体見て
小さいものは残っていると思うが
概ねいいと思った時点でB室に行くと思う

Q 電子顕微鏡で見る作業と
B室の回収を平行?

A 平行してやることになると思う

Q ニッポン放送
中が入り組んだ構造
それは想定外のことか

A 扱いやすい粒子が多ければそこまで
凝ったことはしなかったかもしれない

やはり粒子が小さいということが
かなり本質的

Q 心情では大変?

A 粒子のピックアップも時間がかかる
どこまで頑張るかというのは
バランスが難しいとつくづく思う
本当にギリギリまで行くとキリがない世界

やり直しができないので
なるべく丁寧に作業している

Q 赤旗新聞
粒子とは別のガスの方の分析の予定は

A 分析のスケジュールは見えていない

Q 不明
ガスは初期分析後か
それとも先行して

A 先行してできると思う

広報
相模原にプレスは?

来ていない
これにて終了

ーーーーーーーー
ぶら下がり

Q 不明
カプセル内のどこにあったのかという
位置情報に意味はあるのか

A 位置情報自体に意味はない
それは偶然そこにいるだけ

Q だったらバラしてコンコンと
しちゃえばいいのでは
(容器を逆さまにして粒子を落とす)

A じつはコンコンはやってるんですw
もちろん一番最初にやっている

ただ粒子が小さいと静電気が強いので
コンコンでは落ちない

Q B室も開けたらやっぱりコンコンとやるのか

A 最初にやると思う

Q 大塚
サンプル回収
内壁の面積で
いままで手つかずの割合は

A 面積からすると半分以上は見ていると思うが
肝心なところが見えていない

Q 不明
地球物質っぽいというのはどうして分かったのか

A メンバーの人間は隕石とかを一通り見たことがある
そういうものに似たものかどうか
見た目だけの判断

ホコリっぽいかなというものが
今のところ多い

Q ありそうだという感触は

A 今のところ何とも言えない
A室はタッチダウンの時間が短い
本命はB室と我々も思っている

Q 大塚
2回目のタッチダウンは弾丸が出なかったと
推測されていたが、この結果から見ると
それは確定と考えて良いか

A この感じからすると
ほとんどそうだろうと思う

Q マイコミ
サンプルキャッチャーの構造
いま考えるとこの形じゃなかった方が良かったんじゃあ…

A もうちょっと扱いやすい形だったら…

でもこんな固体微粒子を持って帰るのは初めてだったので
一度はやってみないと次どうしようというところに行けない

Q 大塚
次(はやぶさ2)では改良したい?

A 次はやはりもう少し取り出しやすい形に改良したい

コンコンで出てくるような大きな粒子だったら
この形でも何の問題もなかったのだが

でも大きな粒子があっても小さな粒子まで
最終的には扱いたくなると思うので
小さな粒子もきちんと使える形に工夫が必要

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次回のブリーフィングは8月30日(月)に開催される予定。当初、初期分析の開始は「9月以降」とされていたため、じつはこれ以降のブリーフィングが予定されていなかったのだが、遅れることが確定になったために、JAXAは今後も定期的に開催していく方向で検討中だ。ただ毎週やってもネタがないため、隔週での開催が有力。決まり次第またお伝えしたい。

はやぶさウィークリーブリーフィング第4回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月9日(月)、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内のサンプル採集作業について説明するブリーフィングの第4回を開催した。今回も私はサボったのだが、またマイコミジャーナルの小林記者が取材メモをまわしてくれたので、ここで掲載させてもらう。

出席者は上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長。向井利典・JAXA技術参与は相模原からの中継参加だった。

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これまでやっていた作業。サンプルキャッチャーから取り出した粒子の回収を今週も続けている。

内容に関しては、(先週の)水曜から金曜まで開催した月・惑星シンポジウムの金曜のセッションでも報告。先々週と引き続き、サンプルキャッチャーからとりだしたヘラから粒子を回収している話。

今後、サンプルキャッチャーのサンプル回収を進めるべく、顕微鏡ですみずみまで見られないかの準備を開始。あわせて回収方法の効率向上を模索。先週も報告したが、ヘラで回収したサンプルを直接電子顕微鏡で観察できないかとか、マニピュレータで拾い出す作業を加速できないかとか、条件を変えて模索している状況。

今週一週間ではこんなくらいで、なかなか報告することがない。

質疑応答

Q 進歩している部分は?

A 採取している粒子の数が増えているが、大きな進歩はない。黙々と作業を進めている。

Q 残りの粒の数と回収方法の進歩

A 現在使っているヘラはそのまま電子顕微鏡に持っていけない。現在の構成から違うものにして直接持っていけないか、などを検討しているが、みなの最終合意に達していない。材料を用意して、そこに模擬的な粒子を置いてみて、うまく行くか調べているが、最終的にこれでいこうというところまで落ち着いていない。

現在のヘラではキャッチャーの中すべてを見るのが難しいので、どうやったら全部見れるかを考えているところ

Q 粒の数は

A 見えている範囲で残っているのは数十個オーダーであるだろうが、はっきりとした数は難しい

Q ヘラで採取する作業はある段階からしてない?

A 現在は新しいヘラで試す模擬試験をしている。材料を変えたところ、どんな影響がでるか、せっかく擦り取った材料が落ちないか、とかそういったのを確認している

Q 今週はどういう作業を予定しているのか

A 今週は全体として休みはとらないが、人数が減ってしまうので、作業の体制を維持するのと、最低限の作業だけになると思う。

Q 顕微鏡で新しい面を見ている?

A サンプルキャッチャーが複雑な形状をしているため、顕微鏡の動作範囲には限りがあり、簡単には見れない。それでうまく見れるように調整を進めている。

これから見ようとセットアップを進めている状況。

Q それで見えるようになる面とは?

A 下の隅のいわゆる組み立てのつなぎ部分まで追いかけたいなと思っている。比較的平らな部分は見やすいが、角の部分まで見たいと思っている。要は下の方が狭くなって見づらくなっている。

Q すでに見ている面は

A 上と下の平らな面は比較的良く見える。それ以外は見えない。おおむね見ているが、顕微鏡の分解能で見ているかといわれると違う。

Q 下の方からは微粒子は出てきていない?

A 向井
光の当て方とかなんとかで違ってくるので、今まで見えてきていたところも、きっちりと見直そうと。

Q B室の方を開ける見通しは?

A 完全にこちらのサンプルが終わっていないので、その作業状況を見ながらになります。

Q 顕微鏡で粒子を観察したときに、宇宙物質かどうかの感触は

A上野
普通の光学顕微鏡で見れるぎりぎりのレベル。詳しい情報は別の方法で調べるしかない。光学顕微鏡だと形が確認できないレベルなので。

A 向井
いつからやるかは決まってないが、そろそろ電子顕微鏡の準備も始まりました。

A 上野
それに補足しますが、これまで回収した粒子にそろそろ電子顕微鏡で識別したいという準備は進めています。

Q いつとは決めていないとのことだが、その見通しは

A 向井
決めてないものをいつと聞かれても難しい。まずは多分地球物質だろうな、というものを使って、今まで何度も言ってますが、電子顕微鏡を当てると変質する可能性もあるので、除外できるものからやろうと。いつからは分からないが、近いうちにやって、あきらかにコレ地球物質だね、っていう確認をしようと。

以上で終了

JAXA広報
次回23日は向井先生が出張で1日連絡できないとのことで、後ほど調整させてもらいます、とのこと

Q 23日までは電子顕微鏡で見ない?

A 向井
それは分かりません。

A 上野
今週はないでしょうが、来週絶対無いとは言い切れません。

A 向井
別に大きなことが発見されれば発表はしますよ。23日は今週来週のレポートということですね。

Q 23日までにB室に行くことは?

A 多分ないですね

Q 8月中にB室に行くことは?

A ないとは言えない。そろそろ行きたい。初めはA室全部と思っていたが、きりがないのでB室にも行かないと、と思い始めた。

Q 先週までに20数粒動かしたと言っていた

A 頑張れば頑張るほど、小さい粒子が出てくる

Q B室を開けて、様子が違っていれば期待ができるわけですよね

A B室には我々も期待はしています。こっちのほうが確率高いわけですから。B室の方が大きな粒子が入っている可能性もあるわけです。

Q もしそちらに大きなものが見つかればそちらに集中する?

A そうなるでしょう。構造的にA室から行きやすいというのと、回収技術の成熟を進めるという意味も含めてA室からやった

Q 色々な技術が出てきますよね

A ヘラとかにしても、新しい材料とかを作るとなると2~3週間かかるので、そういった作業を進めないといけない

来週の後半までには具体的に作業ができる準備を整えたいなと。8月の終わりにはB室には行きたい。A室と同じなのか、はたまた…

はやぶさウィークリーブリーフィング第3回

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月2日(月)、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内のサンプル採集作業について説明するブリーフィングの第3回を開催した。じつは私は行けなかったのだが、マイコミジャーナルの小林記者が取材メモをまわしてくれたので、許可を得た上、ここで掲載したい。感謝感謝。

予想されていたことだが、今回もほとんどネタはなかったようだ。小林記者によると、この取材メモのあともじつは質疑応答が続いていたのだが、あまりの細かさにメモを取るのをやめたのだとか。

出席者は向井利典・JAXA技術参与。上野宗孝・JAXA/ISASミッション機器系グループ副グループ長は中継参加だったが、ほとんど発言はなかったとのこと。

ーーーーーーーーー以下取材メモ

サンプルキャッチャーの中から微粒子を回収、その後の処置について効率的なことの検討、研究中。

一方でテフロンのヘラで大量の微粒子がついてきた。それをマニピュレータを使って、石英の箱に1個1個移動を行っています。

質疑応答

Q 進展はない?

A 実際の知識は色々増えている。ただ、サンプルキャッチャーについての知見は増えていない。回収について、主に処置のところをいかに効率よくするか、という方法を研究しているが、それが役に立つかどうかははっきりしていない。

Q 先々週の会見で試しているものがあると言っていたが

A 今は、いくつか問題が発生してそのままでは使えないというのが現状。止まっており、別の方法で模索中。やはり、処置。電子顕微鏡をどう活用するかなどは新たな動きが見えてきた感じ。

Q 回収した後の処置は石英のシャーレに移した後に電子顕微鏡などに移すことなどを研究してる?

A マニピュレータでシャーレに移すのが従来の方法だが、それがすごく大変。例えばヘラから直接電子顕微鏡に回せないか、といった方法がないか、とかを検討している。

一個一個やってると、今の状況だと数カ月、下手をすると数年かかることになってくるので、地球物質を早めに見つけ出して、それ以上の解析に回さないといった方法などを何とか探したい。最終的には粒子を1個1個番号つけることには変わりない。それ以前のところでもっと効率化できないか、というのが現状

Q 新たに得られた知見はあるか

A 知見というか、電子ビームを当てるとどうなるか、電子ビームにもeVの強さとか照射時間とかによって、分析にどういった影響があるかとかがポイントになってくる。テフロンに電子ビームが当たるとチャージアップしてぜんぜん撮影できない、エネルギーとか真空状態とか荷電状態とかで得られる情報が変わってくる。そういった状況に対して、どういったパラメータが良いのかが分かってきた。

Q 検討するなかで、科学的に新しい知見が出てくる可能性は?

A サイエンスとして新しいかどうかはわかりません。本体のフライトモデルから分析する上での補助データに過ぎない。

Q 仮に得られたとしたら発表はする?

A そこまでは今は考えていない。いずれにしてもフライトモデルのキャッチャーの選別結果が、どれだけ正しいかの比較データとして用いるためにいまやっている。

Q テフロン以外のヘラを作って使うということでOK?

A それも候補。元々から考えていた方法の枠からはそんなに大きく乖離しているわけではなくて…ヘラっていうのは沢山あった時に使うもので、ヘラに付いても場所によって形を変える。いずれにしてもテフロンを使うことを決めていた。それで電子顕微鏡にかける。テフロンは絶縁物なので、電子ビームを当てると、そこに電荷が留まり、溜まっていく。これがどの程度サンプルに影響を与えるかを調べている。

もし、金属でヘラを作ったら、それはそれで微粒子が取れるかどうかが怪しい。また、使う金属によっては、その後の分析に影響が出かねない。ステンレス、アルミなどについては、その後の分析に影響は出ないので候補になっている。もともと静電気を付加した状態で入れるので、そこで微粒子が付いてくるか、というのが問題になってきそう。

人工的に微粒子を作って取れるかどうかの試験を始めたところ。

以上

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