はやぶさウィークリーブリーフィング第8回
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月27日、「はやぶさ」カプセルのキュレーション作業に関するウィークリーブリーフィングを開催した。私は某所でやっていたインタビューが長引いてしまい、出席することができなかったのだが、マイコミジャーナルの小林記者が取材していたので、今回もそのままメモをもらって掲載する。
出席者は向井利典・JAXA技術参与。
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大きな変化はない。継続してマニピュレータで試料の回収をしている。
前回準備中と言っていた新たに作ったヘラを使って回収を試みた。
光学顕微鏡とかマニピュレータでは回収が難しいミクロンサイズの試料を直接電子顕微鏡で観察するために作ったもの。
今は、その前に光学顕微鏡で状況のチェックをしているところ。
それから継続して、極微粒子をどう扱うかを専門家、ナノテク関連のエンジニアなども交えて検討している。
だいたいこんな感じ。新しいところでいえば、試料を新しいヘラで回収を行ったということかな。
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質疑応答
Q 媒体不明
新しいヘラを使って電子顕微鏡で見てる?
A 見てない。電子顕微鏡の前に光学顕微鏡を使って、形などを確認。場合によっては(光学顕微鏡で見れる程度の)大きなものとかもあるのが確認されている。
Q 今やっている方法はうまく行っている
A かなりの数を回収できている。光学顕微鏡で確認しただけだが、大きなものもあった。
Q その中でこれはと思うものは
A それは言いたいが、なかなかね
Q 毎日新聞
ヘラの作業はすべて終わった?
A まだごく一部。前に見せたが、キャッチャの円筒形のアルミの台の半分をすくった程度。
Q 回転台の奥のほうなどは
A まだまだ。ヘラですくうのも難しいかも。
Q ヘラは何個くらい用意しているのか
A 数は知らないが沢山作っている。ヘラに何が付いているか、今の技術で見えない微粒子があったら大変なので、ヘラは保存するようにしている。
Q 東京新聞
今後の予定。B室には
A なんとも言えない。A室をヘラですくって試してみたくらいなので、次にいくためには、ヘラですくったのを電子顕微鏡で見て、状況を判断してから。一回やるのに一週間程度はかかるので、ルーチンになれば早くなるかもしれないが、10月の半ばくらいになると思う。想定外のことが起きれば、より遅くなる。
Q 共同通信
ヘラごと初期分析に回る可能性は
A それはない。電子顕微鏡で見た場合、微粒子が存在したら、それを扱うためには電子顕微鏡で見ながら行わないといけない。
Q 今の段階でイトカワ由来と断定するのは難しい?
A 断定はできないけど、初期分析に回す価値のあるものについては、ピックアップして回す。初期分析に回すためには大気汚染を避けないといけない。特殊な石英の台などにおいて持っていくしかない。電子顕微鏡の中で、そうしたやり方を決めないといけない。そこら辺のやり方も検討している。
Q ヘラ全体を顕微鏡で見て、これは、というものをピックアップして初期分析に回す?
A 直接観測する意味は、これまで回収したものの大半がどうも人工的っぽいということで、これを一個一個ピックアップするのは時間の無駄ということで、対処法として考えられたもの。
Q 媒体不明
ヘラを何回すくえばB室に到達する?
A 何回かは難しい。同じ場所でも複数こすってる。そのこすり方が良いかどうかは分からないが、ヘラの両面でもこすっている。何回か行っているということは、同じ場所に重なっている場合もある。それらを電子顕微鏡で見て、次のアクションを決めようと。まだごく一部しかとっていない状況なので、何週間かはかかる
Q 何をもってB室に移るのか
A グッドクエスチョン。難しい問題だが、一応、ヘラですくえる範囲をなめたら、B室かな。それでA室すべてをカバーできたとは思わない。その後、分解作業も待っているので、そこで何か見つかるかもしれない。
Q 媒体不明
A室で使用したヘラの電子顕微鏡へ投入するタイミングは。次回あたりに、そうした話は出るのか
A そうなると思う。そうならないと、10月中旬にB室にいけないだろう。私だけの判断ではできないが、今週中にはやるんじゃないかと。光学顕微鏡で一通り見て電子顕微鏡に行くんじゃないかな。
毎日新聞
Q これまで回収できた粒の数
A 今日時点の正確な数字は把握していないが50数個。経緯を振り返ると、最初にマニピュレータで2個、その後、ヘラで20数個。これはマニピュレータで移動できるものはすべて移動した。その後も、マニピュレータで一個一個移動させているのが、30個程度。で、合計50個程度。次は数百個にならないとニュースにならないかもしれない。
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以降、囲みでの話し
Q ヘラの種類は
A 2種類。5mm×1cm。円筒部をこすれるものと、平坦部をこするもの。
Q ヘラのイメージは
A 次回までに何か用意するよう伝えておきます。
Q 初期分析の段取りは
A どこかになかったかな。大きさとか数によって変わってくる。結局トータルの量で、例えば有機分析なんかは、有機溶媒に浸して溶けてきたものをクロマトグラフで分析。数が少ないと、蒸発させてガス化させてしまうので、粒子を駄目にしてしまう。中性子を使った分析も放射化してしまうので、次に使えない。
Q 次回までに、電子顕微鏡で見た後に、初期分析に回したという話はでるのか
A それはない。B室に沢山あれば、話は別だが。
Q 五月雨式ではなく、A、Bと見て、ある程度数が揃って初期分析に回す?
A もともと15%と言っていたのは、その数を国際的に公表して、公募を行う予定。スターダストの例を見ても、何回かの募集がある。初期分析は、こういった面白そうなものがあるということを示すためのカタログ作り。もしかしたら、それで終わってしまうかもしれないけど。
Q 15%の根拠
A NASAとのMOU(覚書)の中に入っていたような気がする。NASAには別に10%を回すんだったかな。あの頃は宇宙科学研究所とNASAの間だったかな。宇宙科学研究所は国立の研究所だった。JAXAになると多少簡単になるかな。
Q MOUで15%ということは、地球上物質でも15%に含まれるのか?
A できるだけ、そうしたものは省きたい。初期分析でイトカワ起源のものがなかったら、公募で募集しても応募がこないでしょう。相模原の電子顕微鏡は恐らく、世界的に見てもクリーン。コンタミ防止の手法とか色々やってる。聞いた話で、スターダストで電子顕微鏡にかけると、表面が汚染されていて、次の作業に支障が出たらしい。スターダストもまだかなりの作業が残っている。そういうこともあって、我々も新調して、今回と同じような条件とかもっと厳しい条件などで検査して、有機分析する方に回してみて、問題ないという回答も得ているので、明らかに地球起源の人工のものを、除くためには、電子顕微鏡で見て作業しないと。
Q 今のところ、ヘラで取り尽くせている?
A どうだろう。見たところ、表面はつるつるしているが、光学顕微鏡で見ると凸凹していて、傷が沢山ある。マニピュレータだと、それを動かしに行って、動くようなら粒子で動かなければ傷だと判断していた。
Q 次回にはB室に移るタイミングが分かってる
A なんとも言えないが、私としても目処をつけて欲しいなというのはある。
Q シャーレの上の粒子でいらないものを選別するのか
A いらないかどうかは分からない。ただ、回収するときに削れた金属の粉なども沢山あると思う。電子顕微鏡で見ると、主要元素は分かる。以前話しているが、一部試してみたこともある。アルミは除外すると思うが、逆に初期分析に回すものは、一個一個ピックアップしてアルミではないことを確認していないといけないよね。
Q ヘラそのものを電子顕微鏡で見てる
A 見てる。だからといって、地球外かどうかの断定は難しい
Q 必ずしも地球のものとは言えないものが見つかったといえるのか
A 誘導尋問だな(笑)。宇宙で捕らえたといって、どこでかとなったら、イトカワ以外にはないわけで。そういった意味ではかなり神経質にやっている。
Q 初期分析に回る候補は
A 地球のものかもしれないし、地球外のものかもしれない。そこの断定は非常に難しい。初期分析してみるまで分からないわけだし。
Q 金属の粉かどうかの判定は
A 電子顕微鏡で見てみないと分からない。
Q 回収した微粒子を電子顕微鏡で見るのを優先することはできないのか
A 何を優先させるか。電子顕微鏡で作業をしていると、回収はできない。パラレルに出来ない。
Q 初期分析にすべて回すのか
A 数十ミクロンのサイズのものもあるが、それは回さない。それを回すと、国際公募に回すのがなくなる。NASAも元々何gという想定だったが、10μmのもので、1ngという重量。今の状況だと、15%とかの比率は無視して、実行部隊で決めて良いという話になっていて、はやぶさのジョイントサイエンスチーム内で、色々な人が混ざって話すことになる。
Q 次回、電子顕微鏡では見るけど、初期分析に回るということはない?
A ない。初期分析は12月を予定している。B室も見てみないことにはなんともいえない。全部は見なくても良いけど、おおよその量の把握ができないと、次の話にいけない。
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