LNGエンジン燃焼試験の設備公開

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月24日、報道向けに「LNG実機型エンジン」の試験設備を公開した。IHI相生事業所にあるもので、報道向けに公開されたのはこれが初めて。この設備を使って、GXロケットの2段目に搭載されるLNGエンジンの燃焼試験が行われている。


説明者は、長尾隆治サブマネージャ(左)と鳥井義弘主任開発員(右)

JAXAはLNG(液化天然ガス)を燃料にしたエンジンの開発を進めている。H-IIAロケットの1段・2段に使われている水素推進系(液体水素+液体酸素)のエンジンに比べると、LNG推進系には以下のような特徴があるとされる。

・蒸発しにくいので、長期間保存が必要な軌道間輸送に向いている
・燃料代が安いので打ち上げコストが下がる
・爆発の危険性が低いのでより安全になる
・高密度なので燃料タンクが小さくなる
・推力が大きいのでロケットの1段やブースタに適用できる
・ただし比推力は劣る(固体よりは上)

しかし、開発は難渋を極めた。当初は「ガス押し式」を採用する予定だったが、複合材の極低温推進薬タンクの開発に失敗、途中で「ブースト・ポンプアブレータ方式」に変更され、スケジュールも遅れた。


「ブースト・ポンプアブレータ方式」のLNGエンジン

今野彰プロジェクトマネージャは、昨年2月5日に開催された宇宙開発委員会の推進部会・GXロケット評価小委員会(第1回)において、「確かに極低温での推進剤でエンジンを開発するというのは、水素、酸素である程度経験しているので、その経験が生かせるのではないかという認識でした。それと、もう一つはシンプルなガス押し式を採用するということで、エンジンとしては比較的容易に開発が可能ではないかという推定をしておりました。ただ、推進系として見た場合、非常に性能を考えた上で、複合材の極低温タンクという開発をやらなければいけないということがございまして、そこでその開発がなかなか技術的に困難だということで、全体的になかなか開発が進まないという状況になってきたという認識でございます」と発言している。

このように苦労を重ねたLNGエンジンであるが、ここにきて順調な仕上がりを見せてきている。今回の実機型エンジンでは、当初、12回の燃焼試験を予定していたが、順調なために2回分を省略。そして、より多くのデータを取るために最後の1回を追加して、合計で11回のテストとなった。すでに9回まで終了しており、9/1に11回目が実施される予定だ。


これが燃焼試験の設備。大きなタンクは、左がLNGで右が液体酸素


エンジン本体はその反対側にある


実機と同じ設計だが、ノズルは付かない


WEBで公開されている動画は、向こうのカメラから撮影したもの


人と並ぶと大きさがわかる


底にはフタがしてあった。燃焼試験時にはここにディフューザが繋がれる


試験の管制室も公開された

今後、ノズルを付けての真空燃焼試験(角田で実施)をクリアする必要はあるものの、技術的には大きなヤマは越えたと言っていいだろう。しかし、あくまで技術的には、だ。GXロケットは、開発予算の超過、完成の遅れ、需要見通しの甘さなど問題が山積みで、開発にGOサインが出るのかどうか、先行きは不透明。これからはむしろ政治的なヤマを越える必要があるだろう。

(8/26追記)
松浦さんの記事がRobot Watchに掲載された。詳しくはそちらを参照して欲しい。
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090826_310897.html

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