テポドン2号についての論点
ようやく北朝鮮から、打上げの映像が公開された。昨夜の報道番組でも特集が組まれていたのだが、見ていて、どうもキャスターの「これは衛星か、ミサイルか」という言い方が気になった。正しくは、「ロケットか、ミサイルか」だろう。
しかし、ロケットかミサイルかについて、こだわることにほとんど意味はない。技術的にはほぼ同じもので、搭載するのが衛星か弾頭かの違いだけだ。現に、ドニエプルなどはICBMを転用したロケットだが、これをミサイルとは言わないだろう。
番組では、ロケットかミサイルかの判断について、先端の形状に注目する専門家のコメントもあったが、これもほとんど意味はない。先端が丸くないと衛星を搭載できないわけではない。日本で初めて衛星を打上げたロケットもこんな形だ。それに今なら、わずか10cm角のキューブサットと呼ばれる小型衛星もある。何かを載せて、周回軌道に向けて打上げれば、成功させるつもりがなくても、「ロケット」と言い張ることができるのだ。
北朝鮮が「衛星打上げのロケットだ」という建前で押し通す以上、推測のみでそれを否定することはできない。感情的に「それはロケットじゃなくて本当はミサイルなんだろう。だからダメだ」ではなくて、「宇宙開発の権利は全ての国にあるが、あんたのところは国連安保理の決議で弾道ミサイル活動の停止が求められているので、たとえロケットであってもダメだ」と建前で返すのが筋だろう。
それに、このように信頼性に欠けるロケットを他国の上空に飛ばすという非常識も容認できることではない。イスラエルなどは、アラブ諸国を避けるために、衛星の打上げには不利な西向きにロケットを飛ばしている。北朝鮮も、やるのならせめて自国の黄海側(西側)から南の洋上に打上げろ、と言いたい。
前述のロケットとミサイルの違いなどについては、現場の記者ならほとんど知っているハズだが、どの局も、TVに出ている人になるとかなり心許ない。「ロケットかミサイルか」「成功か失敗か」を論じるばかりではなく、もっと問題の本質を正しく伝えて欲しいところだ。
今回のような事件があると、これ幸いとばかりに、軍備の強化を訴える人間も出てくる。報道によると、一部政治家からは、敵地攻撃の検討を求める声も出ているという。国民の不安を煽動する動きにも良く注意したいと思う。
最後に、今日のTPS/Jメールで配信されていた的川泰宣氏のコメントを紹介したい。
「北朝鮮の中にも、あのフォン・ブラウンたちのように、将来北朝鮮の力で宇宙探査をしたいと夢見ながら、ロケット開発に従事している人が必ずいると、私は信じています。いつの日にか、そんな人たちとひざを突き合わせて話し合いたいものです」
いつの日か、そうなることを祈りつつ。